
HPF2025コレクティブ展に参加する楓月まなみは、多様なマテリアルを用いることで、写真の枠を超え、感覚や記憶を通して芸術表現への問いを投げかけています。
今回取り入れたのは、フランス語の「こする(frotter)」に由来するフロッタージュ技法です。紙を植物や木目などに重ね、その上から鉛筆や木炭で擦ることで、対象の形や質感を転写する表現方法です。偶然に浮かび上がる模様や凹凸は単なる写し取りを超え、新たなイメージを生み出し、観る者の想像力を広げます。
20世紀初頭、シュルレアリストの画家マックス・エルンストはこの技法を積極的に用い、木目や葉脈、布目といった日常のテクスチャーを擦り出すことで、意識を離れたイメージの生成を試みました。これが「オートマティスム(自動記述)」と呼ばれる表現につながっています。
楓月はこの技法を、北海道の大地で育まれた植物に用いることで、自然の生命の痕跡そのものを作品に写し取り、「視る」という行為そのものを問い直します。
観覧者に委ねられた「偶然のイメージ」との出会いは、HPF2025の共通テーマである「視る」への問いかけとも響き合います。視覚情報は無意識に作用し、感覚的な経験=クオリアを呼び起こす。そこに「視る」という行為の本質が立ち現れるのです。




