600年守り継がれた近江の政所茶 日本茶の原風景が残るお茶づくりを次の世代へ 

滋賀県東近江市で600年以上守り継がれている「政所茶」。製茶工場は産地に一つしかなく、老朽化のため2026年の製茶に向けて機械を更新します!小さな機械で産地の味を守る茶工場をリニューアルすることで、このお茶づくりを未来につないでいきたいと思います。

CAMPFIREクラウドファンディングアワード

現在の支援総額

8,184,871

545%

目標金額は1,500,000円

支援者数

652

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2025/08/18に募集を開始し、 652人の支援により 8,184,871円の資金を集め、 2025/09/30に募集を終了しました

600年守り継がれた近江の政所茶 日本茶の原風景が残るお茶づくりを次の世代へ 

CAMPFIREクラウドファンディングアワード

現在の支援総額

8,184,871

545%達成

終了

目標金額1,500,000

支援者数652

このプロジェクトは、2025/08/18に募集を開始し、 652人の支援により 8,184,871円の資金を集め、 2025/09/30に募集を終了しました

滋賀県東近江市で600年以上守り継がれている「政所茶」。製茶工場は産地に一つしかなく、老朽化のため2026年の製茶に向けて機械を更新します!小さな機械で産地の味を守る茶工場をリニューアルすることで、このお茶づくりを未来につないでいきたいと思います。

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茶畑の側の紅葉は見頃を迎えていますが、朝は早くもフロントガラスが凍ることもあり冬の気配を感じている政所です。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。さて、昨日、政所茶生産振興会の役員と有志で11月に発送予定とさせていただいていた方々への返礼品の発送準備をし、本日政所郵便局より発送させていただきました!116名の方のお宛名を書き、改めてたくさんの方に応援をいただいていることを実感しながら、みんなでわいわいと封筒に詰めていきました。また、みなさんからいただいた応援メッセージも全て印刷して読ませていただきました。思いのこもった言葉の数々、本当にありがとうございました。産地のみなさんにも改めて読んでいただける機会を作りたいと思います。返礼品の発送についてですが「政所茶アンバサダーセット」と「テロワールセット(煎茶セット)」「テロワールセット(平番茶セット)」は【定形外郵便】にて、「テロワールセット(全種セット)」のみ【レターパックプラス】にてお送りいたします。定形外郵便はポスト投函でのお届け、レターパックについては対面受け取りとなりますので、ご不在の場合は不在配達通知書がポストに投函され荷物は持ち帰りとなります。今週中にはお手元に届くかと思いますので、お受け取りと中身のご確認をよろしくお願いいたします。万が一今週中にお手元に届かなかった場合はお手数ですがお知らせくださいませ。今回お送りしたお茶は、どれも48年間頑張ってくれた茶工場で作ったお茶になります。みなさんのことを思い浮かべながらお茶をセレクトいたしましたので、政所茶らしさをお楽しみいただければ幸いです。返礼品のネームプレートもこれから制作に入りますのでまたこちらもご報告させていただきますね。風邪が流行る季節、温かいお茶を飲んで健やかにお過ごしください。


ご無沙汰がをしております。グッと冷えて秋らしくなってまいりましたが皆様お元気でいらっしゃいますでしょうか。政所茶の産地である奥永源寺地域は木々が色づいてきて、本格的な紅葉シーズンを迎えました。また、茶畑では茶樹が椿に似た小さな白いかわいい花を咲かせてくれています。 さて、皆様から大きなご支援を賜ったクラウドファンディングから1ヶ月半が経ちました。改めて貴重なご支援を本当にありがとうございました。金額はもちろんのこと、全国各地のこれだけ多くの方が思いを寄せてくださり応援いただけているということが、産地にとって大きな大きな励みとなっております。この1ヶ月、振興会では茶工場リニューアル後の運営体制についての議論を行ったり、事業が円滑に進むよう関係各所への要望などを行なって参りました。そして11月10日、無事、茶工場の機械を製造設置してくださる業者が入札にて決定いたしました!実は物価高騰などの原因により1回目の入札は不調に終わり、今回改めて農協によって入札が実施され、国内大手製茶業関連の機械・機器メーカーのカワサキ機工株式会社が受注されたとのことです。おかげさまでこれでいよいよ、茶工場のリニューアルに向けて具体的に動き始めることができます。しかし、昨今の抹茶ブームにより抹茶製造用の機械の注文が殺到しており、国内の数少ない製茶機械メーカーはどこも製造が追い付いていないとのことで、予定しておりました来年3月の納品が間に合わない可能性があるとの情報も入ってきております。また状況が分かり次第、皆様にはこちらの活動報告等を通じてご報告させていただきたいと思います。 返礼品の発送についてですが「政所茶アンバサダーセット」「政所茶テロワールセット」にご支援くださった皆さまへは、11月末の発送に向けて準備を進めておりますので今しばらくお待ちくださいませ。その他のプランの方については来年7月の発送を予定しております。 みなさんとのご縁がクラウドファンディングが終わっても末長く続いていくことを願っております。これから寒さが厳しくなって参りますが、風邪など召されませんようどうぞご自愛くださいませ。最後になりましたが、政所茶のルーツでもあり、綺麗な紅葉で有名な大本山永源寺も今年は特に美しく色づいておりますので、よろしければこの機会に当地とともにぜひお越しください。永源寺の紅葉


クラウドファンディングも残り2日となりました。昨夜にはご支援いただいた方の合計が500名を超えました。全国各地から本当に多くの方に応援をいただいていることに、感謝の思いと、これからも良いお茶をお届けできるようにという思いをあらたにしております。本当にありがとうございます。茶工場を動画でご案内いたしますさて今日は、改めて今回のご支援を活用させていただき改修する、茶工場の中をご紹介したく動画を作成しましたのでご紹介いたします。「政所製茶工場」は集落の中にひっそりと佇んでおり、稼働時期以外は中を覗いていただくことはできず、稼働時期も衛生面や安全面の問題から見学してもらうことは難しい施設です。茶工場というちょっと馴染みのない施設の改修に対しご支援いただいた皆さまに、この動画をご覧いただくことで少しでも内部の雰囲気を感じていただければ幸いです。15分程度の動画になりますので、お時間ある時にぜひご覧ください。( 撮影 株式会社つむぎや )今回は古い機械の並ぶ茶工場ですが、新しい機械に更新できた折りにはまた何かの形で皆さまに中の様子をお届けできるようにと思っておりますので、楽しみしていただければ幸いです。クラウドファンディングも皆さまの応援を力に最後まで頑張ってまいりますので引き続き応援いただければ幸いです。


 現在の政所茶の生産者は約60軒。そのうち10軒ほどが地域外から生産に携わっている人たちですが、その流れが生まれたきっかけは、13年前に滋賀県立大学の学生たちが茶畑を借りてお茶づくりを始めたことです。 当時から彼らのことを知る上田洋平さんに、この13年を振り返っていただきました。上田洋平(うえだ ようへい)滋賀県立大学地域共生センター特任講師。2012年9月に大学の授業の一環で東近江市政所町にフィールドワークで訪れ、当時参加していた学生たちが政所茶の栽培を始めることになる。その後、大学の地域活動プログラム「近江楽座」の採択団体となった「滋賀県立大学政所茶レン茶゛ー(チャレンヂャー)」の顧問として、13年に渡り政所茶に関わる学生たちを見守っている。 =====ここから=====学生たちの「ドライバー」として 13年前に結成された滋賀県立大学の学生グループ「政所茶レン茶゛ー」の顧問をしています(じつは名付け親でもあります)。 しかし実際には「運転手」だと目されています。運転するのは二つの「車」。一つは学生たちを送迎するための「自動車」。そしてもう一つが「口車」です。 学生や地域のみなさんをはげまし、あるいはそそのかし、すなわち「口車」にのせて、まちづくりや学びのフィールドへと案内する。「口車の運転手」。この肩書を、わりと気に入っています。 「運転手」としての私の仕事は、学生たちを学びのフィールドに送り届けて、しずかに、そっと見続けること。地域に向けては、なるたけたくさん「ありがとう」を、そしてときどき「ごめんなさい」をお届けすること。業務日誌の一端をご紹介します。政所茶をめぐる「仕合わせ」のはじまり  政所茶レン茶゛ーは2012年9月24日の月曜日に誕生しました。 奥永源寺・政所という地域で、そしてこのクラウドファンディングのページの上で、皆さんとともに目の当たりにしているところの、控えめに言って奇跡の物語は、この日付から始まったのだと思っています。教師からみた贔屓の引き倒しかもしれませんが、少なくとも、今日に続く物語のきっかけ、重要な伏線のひとつではあったと思っています。 さて、私の「口車」は、学生を乗せて、次のようなプロローグで走り出します。 「この風景を守りたい! このお茶畑、私たちが借りていいですか?」 2012年9月24日、月曜日。この日、無鉄砲な、けれども本気の学生たちが、その一言を発していなければ、この物語は始まらなかったかもしれない――。 滋賀県立大学の集中講義、「地域再生システム論」のフィールドワーク。まちあるき。そしてその後の対話のなかで、学生たちは、自分たちでお茶づくりをしてみたいと言いました。 地元の人はおっしゃいました。「今までも、そう言って政所に入ってきた人はいた、でもいつのまにかいなくなる」。 そこで、学生たちとこんなことを話し合いました。 「地域活性化とか大きなことを考えるよりも、“また来ます”と言って別れた、その“また来ます”という小さな約束をとにかく守っていこうじゃないか」。 そして彼らはほんとうにその約束を守り続けた。 もちろん、600年間政所茶を守り、伝えてこられた先人のみなさん、ひろい心で学生やヨソモノ・若者たちを受け容れ、導き、気にかけ、叱咤激励下さった地元のみなさんの存在なしには、彼らの活動は、ここまで続かなかったでしょう。 そうした時間の積み重ねのなかでの、2012年9月24日、月曜日。奥永源寺・政所の方々と、この日初めて訪れた学生たちとの、この日の「居合せ」がなければ、今日のような「仕合せ」の物語はなかっただろうと信じています。 600年、あるいはもっともっとながいこの土地の歴史の、これからの600年につながるその転機に、当事者の一員として「居合わせ」られるのは、本当にうれしいことです。フィールドワークで地元の人から話を聞く学生たち“この一人”から地域は変わる 「“ただ一人”では変えられないが、“この一人”から地域は変わる」。 これは、学生たちのお供をして奥永源寺・政所地域に通い、そこで起きる出来事を見続けるなかで、奥永源寺・政所地域で、学生や地元の方々から教えられたことのひとつです。 まちづくりは“ただ一人”では決して前に進めていくことはできない。一方で、ものごとはいつも必ず“この一人”の人の存在や想い、その行動や言葉から動き出す。 政所においてそれは、ある“この一人”の学生の「この風景を守りたい!」という想い、そしてまたある“この一人”の学生の「私たちが借りていいですか?」という一言でした。 そして、奥永源寺・政所の方々は、それら“この一人”の学生たちの言葉を、存在を、しっかりと受けとめてくださいました。そして、その方々は、年々入れ替わり立ち替わるたくさんの“この一人”の学生たちを決して“ただ一人”に孤立させることなく、向き合い、付き合ってくださった。それは学生たちに対してだけではない。その後につづく、奥永源寺・政所の風土と、政所茶に魅せられた多くの“この一人”の人びとに対しても同様でした。地域の人たちと交流会幸せの循環 昨今、「Well-being(ウェルビーイング)」についてさかんに議論されています。日本におけるウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司先生は、人が幸せを感じるための心理的要因について、次の四つを挙げ、それを「幸せの4因子」と名付けました。すなわち「やってみよう(自己実現と成長)因子」「ありがとう(つながりと感謝)因子」「なんとかなる(前向きと楽観)因子」「ありのままに(独立と自分らしさ)因子」の4つです(前野隆司『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』講談社、2013年)。 これは個人の幸せについて述べたものですが、その考え方は、まちや地域についても当てはまるように思います。思い返せば、奥永源寺・政所地域には、この「幸せの4因子」がありました。 学生たちやヨソモノたちの「やってみよう(やってみたい)」を受けとめて「やらせてみよう」「なんとかなる(いざとなったら責任もってなんとかする)」と応じてくださいました。「ありのまま」の学生の未熟で無知な部分を理解しつつ、しかも決してちやほやせずに、自らも「ありのまま」の気持ちを示して、ときに叱咤し、しばしば激励し、一緒に泣き笑いしてくださいました。そこには自然な「ありがとう」の気持ちが生まれ、育ち、交換されていきました。奥永源寺・政所地域において、このような「幸せの4因子」の循環は現在進行形であり、しかも刻々とスパイラルアップしています。「茶縁」の秘密 このような物語は、どんな地域でも起こるものなのか、それはわかりません。そこにあったのが、毎日世話が必要な一般の野菜ではなく、毎日は通えない学生の行動特性を許容し、しかもとりわけ忍耐強くいてくれる「政所茶」であったことは幸いだったと思っています。 地元の方々は、お茶畑の様子を見れば、その年の学生たちの雰囲気や力量がわかる。ときどき、見ていてちょっと気なることがあれば、「そろそろ草が生えたあるなぁ」と、彼ら自身に、あるいは彼らの「運転手」にそっと耳打ちしてくださる。直接対峙し向きあうだけではない、お茶の木や茶畑を媒介にしたほどよいコミュニケーションが可能であったことも大きいのだろうと思います。同じお茶畑を見ながら、横に並んで(stand by)、お茶畑やお茶を介して、学生たちと地域の方々が経験や気持ちをやりとりする。一方通行(一項関係)ではない、双方向(二項関係)ともまた違う、現在・過去・未来をもつなぐ「三項関係」のコミュニケーション。これもまた「茶縁」の秘密。 地元生産者の方々の存在があり、そのほかいろいろな要因が重なって、学生たちは今日まで通い、そこで学び、育ち、卒業しても、お茶摘み時期には、もう一つのふるさとに里帰りするように、奥永源寺・政所の茶畑に帰ってきます。奥永源寺・政所のお茶と人との出会いから、たくさんの“この一人”の人たちの物語が生まれています。茶摘みの時期には卒業生も畑に集う茶に浮かされて まだまだ、自分たちのお預かりしているお茶畑だけで精いっぱい。地域の皆さんの助けになれればという気持ちはあれど、実際は、お助け頂くことばかりです。けれども今回のクラウドファンディングを通して、地元の皆さんが思う以上に、奥永源寺・政所地域と政所茶、そしてなにより、それを守り伝えてこられた人たちとその暮らしに魅了され、できれば力になりたいという人たちの存在が可視化されました。 これからは、学生たちが、このような、政所茶を愛する人たちとともに、あらたな“この一人”の人々を「口車」に乗せながら、引き続き、政所茶をめぐる幸せの循環のエンジンとして力を発揮してくれたらと思っています。 学生たちのお供をしながら私自身も学生ともども、「シターっと甘い」政所の「茶に浮かされ」て13年目になりました。居眠りの許されない「運転手」にとっては、それは大事なことかと思います。=====ここまで===== ありがとうございました! 始まりのあの日から13年。学生団体・滋賀県立大学政所茶レン茶゛ーは当時の学生たちの想いを引き継いで、今も畑に通い、昔ながらの方法でお茶づくりに取り組んでいます。 現代表のインタビューも併せてご覧ください。    クラウドファンディングも残り1週間を切りました。生産者みんなで最後まで走りきっていきます。最後の応援をどうぞよろしくお願いいたします!


 今日は政所茶生産者の一人でもある、滋茶園(しげるちゃえん)合同会社の佐藤滋高さんからのメッセージをご紹介します。 佐藤さんは、奥永源寺地域の東近江市政所町で、地域の方から茶畑を引き継ぎ政所茶の生産をされています。 この地域出身でも親戚がいるわけでもなく、政所茶との関わりの始まりは、茶摘みボランティアとして産地を訪れたこと。お茶づくりは全く未経験の現役医師でありながら、茶畑を預かる決断をされた佐藤さんに、政所茶への想いを伺いました。====ここから==== 2019年に政所の茶畑を突然引き継いだ、佐藤滋高と言います。普段医師として働き、政所には縁もゆかりもない僕が、なぜそこまで魅せられたのか、何を大事に思って日々の作業をサボりがちに続けているのか、時間の許す方はお読みいただけると嬉しいです。佐藤滋高(さとう しげたか)2018年5月の茶摘みで奥永源寺地域を訪れ、その後茶畑の年間作業のボランティアとして頻繁に地域に足を運んでいるうちに、地域内で後継者がなく生産が難しくなった茶畑を引き継ぐことに。畑の持ち主である地元出身の生産者と協力して茶畑の管理・政所茶の生産に携わっている。 政所は室町時代にまでさかのぼることが出来て、江戸時代とさほど変わらない栽培法を残す貴重な産地です。しかし、古い茶畑、茶樹と栽培法が貴重なだけのただ苔むした産地ではありません。僕は今の時代にこそ貴重な産地だと強く思っています。 現在かつてないスピードで種の絶滅が進んでいます。多様な生物の相互作用によって成り立つ生態系において、一つの種が存在しなくなるだけでもその影響は計り知れません。風が吹けば桶屋的にヒトにも大きな影響が出る可能性があります。絶滅と多様性は密接に関連しています。生物多様性が減少すると、環境の変化に対応する能力が低下し、その結果として種の絶滅リスクがさらに高まります。 また、エリブリンという薬はご存知でしょうか⁈ 2011年に日本でも承認されている抗がん剤ですが、元になる物質はクロイソカイメンという海洋生物から見つかっています。エリブリンをはじめペニシリン、イベルメクチン、アスピリンなど生物から見つかった薬品をあげれば枚挙にいとまがありません。生物が絶滅するということは有用な知見や発見の可能性の消滅でもあるのです。 茶工場がなくなることで一つの産地がなくなる、そのような危機に直面している政所についても、同じ事が言えると思います。 まず、政所茶という失われつつある栽培方法を護る事で、多様性を次世代に遺すことは、変化を続ける世界において、とても価値のあることです。そして、県境にも近い過疎高齢化地域でもある政所が、僕を含めて多くの人を惹きつけ、多様なバックグラウンドを持つ人たちが互いに支えあうことで、茶畑が成り立っていることもまた、価値ある事だと感じています。何故、多様な人が集まり、それを受け入れて、コミュニティを維持できているのか、この事例は活気を失う日本の津々浦々を救うかもしれない智慧を含むと思うからです。地域の摘み手さんも手伝い手摘みで収穫 もう少し詳しく書きたいと思います。 勘違いしている人も多いですが、自然の原理は「弱肉強食」ではありません。であればサーベルタイガーは絶滅しないはずです。彼らは氷河期が終わった気候変動に対応できずに絶滅したと言われています。 中心原理は自然選択による「適者生存」なのです。哲学者ハーバート・スペンサーの言葉を借りれば『最も強い者が生き残るのではなく、最も変化できる者が生き残る』と言うわけです。 政所のお茶の特徴のひとつは「実生在来種(みしょうざいらいしゅ)」で、これがまさに適者生存です。種で増える実生の茶樹は一本一本の茶樹がそれぞれ異なる遺伝情報を持ち、個性を持っています。本来暖かい土地の植物である茶の木ですが、かつての政所に寒さや雪に強い性質を持ったタネも偶然産まれたのでしょう。雪深い政所にあって有利な性質を持つその茶樹は他の茶樹より生育が良く、多くの種を残していき、世代を重ね淘汰圧を潜り抜けた茶樹が、いま政所で繁栄している茶樹たちです。時間をかけてそれぞれの風土に適応してきた茶樹たちをお茶の世界では「在来種」と呼びます。在来種はその土地土地に適応したローカルなお茶といえますね。 翻って、お茶の世界でいま最も適応し繁栄しているのは挿し木により増える「品種茶」でしょう。現在、日本では98%以上が『やぶきた』や『さえみどり』などからなる品種茶です。優れた性質を持ち選抜された茶樹の枝を切って、土に挿して増やすので、基本的に一枚の茶畑の茶樹たちの遺伝情報は単一です。 挿し木により増える品種茶を、僕はよく車のF1に例えます。最新の栽培技術の粋を凝縮して栽培されるもので、それ自体芸術品のようです。一方の政所茶は籠とか馬車みたいな物でしょうか。実際、江戸時代の文献に書かれている栽培法と現代でもあまり変わらない育て方です。 では、政所茶は時代遅れのもので、遺したいのは懐古主義からでしょうか。 前段で書いたとおり適者生存が自然の中心原理です。多様性の価値がここにあります。今の環境が未来永劫続くのであれば、品種茶が最適解かもしれません。しかし、有為転変もまた基本原理です。この世のものは常に変化し、一定の状態を永遠に保つことはありません。いま適応しているものがこの先も繁栄し続ける保証はありません。変化に適応できず、日本の茶業が淘汰される日が来ないように、変化に備えて多様な産地を遺しておく必要はありませんでしょうか? 僕が茶摘みボランティアで初めて政所を訪れた時に、まず飛び込んできたのは、ポコポコと茶樹が肩を寄せ合う茶畑で、その初めて見る美しい光景にしびれました。その帰りには、茶畑を大事に守ってきた集落の人たちと、お手伝いに集まった人たちの織りなす、これまた美しいコミュニティにやられました。いま僕が引き継いだ茶畑もいろんな背景を持った人たちに、茶畑の作業を助けてもらっています。そして、そんな僕らを集落の人たちは受け入れ、何かと気にかけて優しく見守り、時に見るに見かねて助けてくれています。多様性をもつのは実生在来種の茶樹たちだけではありません。茶畑に集うコミュニティもまたダイバーシティを実現しています。それぞれ異なる得意なことなんかを活かしながら支えたり、ときに支えられたり、心地よいコミュニティもまた本当に価値あるものだと考えます。2018年5月茶摘みボランティアに初めて参加した時小雨が降るなか早朝から摘んだのは思い出  ウェルビーイングな生活のあり方について考える時、政所という存在は示唆に富んでいます。幸福感、自己肯定感、精神的な豊かさ、地域社会とのつながり、社会への貢献など、生きがいを感じられる良質なコミュニティを、どうかたち作って維持していくのか、都市も地方も苦労してませんか。政所にはただお茶産地を守る以上の価値がないでしょうか。 昔ながらの茶畑を愚直に守る産地には、未来に遺すべきものがまだまだ沢山あります。政所に限らず、日本中、世界中で過去の重要な知見や技術、文化が現在進行形で失われようとしています。ひとたび失われてロストテクノロジーになってしまえば、その復活は困難です。政所のような産地や技術、文化ってやはり無くしてしまっては「もったいない」ではなく、後々「困る」と思うのです。地域の外からたくさんのボランティアさんが茶摘みのために集う滋茶園 この稀有な産地を次世代に遺すために、出来る範囲で結構です、ご支援頂けないでしょうか。それは金銭的なものでも、作業のお手伝いでも、産地に足を運んで茶畑を見てもらうだけでも、お茶を買って飲んで思いを馳せるだけでも構いません。コミュニティに関わっていただく事で、その多様性を一層深めてもらえるととても嬉しいです。 どうぞよろしくお願いいたします。滋茶園合同会社 佐藤滋高=====ここまで===== 佐藤さん、メッセージありがとうございました。 明日9月23日(火・祝)に予定しております、『政所茶ファンの集い(マルシェ&生産者交流会)』では、佐藤さんも来られるので、直接お話を聞いてみたい方はぜひ会場にお運びください。 イベントの詳細はこちらをご確認ください。 クラウドファンディング期間も残り1週間あまり。引き続き応援をよろしくお願いします!


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