600年守り継がれた近江の政所茶 日本茶の原風景が残るお茶づくりを次の世代へ 

滋賀県東近江市で600年以上守り継がれている「政所茶」。製茶工場は産地に一つしかなく、老朽化のため2026年の製茶に向けて機械を更新します!小さな機械で産地の味を守る茶工場をリニューアルすることで、このお茶づくりを未来につないでいきたいと思います。

CAMPFIREクラウドファンディングアワード

現在の支援総額

8,184,871

545%

目標金額は1,500,000円

支援者数

652

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2025/08/18に募集を開始し、 652人の支援により 8,184,871円の資金を集め、 2025/09/30に募集を終了しました

600年守り継がれた近江の政所茶 日本茶の原風景が残るお茶づくりを次の世代へ 

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8,184,871

545%達成

終了

目標金額1,500,000

支援者数652

このプロジェクトは、2025/08/18に募集を開始し、 652人の支援により 8,184,871円の資金を集め、 2025/09/30に募集を終了しました

滋賀県東近江市で600年以上守り継がれている「政所茶」。製茶工場は産地に一つしかなく、老朽化のため2026年の製茶に向けて機械を更新します!小さな機械で産地の味を守る茶工場をリニューアルすることで、このお茶づくりを未来につないでいきたいと思います。

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 今日は政所茶生産者の一人でもある、滋茶園(しげるちゃえん)合同会社の佐藤滋高さんからのメッセージをご紹介します。


 佐藤さんは、奥永源寺地域の東近江市政所町で、地域の方から茶畑を引き継ぎ政所茶の生産をされています。


 この地域出身でも親戚がいるわけでもなく、政所茶との関わりの始まりは、茶摘みボランティアとして産地を訪れたこと。お茶づくりは全く未経験の現役医師でありながら、茶畑を預かる決断をされた佐藤さんに、政所茶への想いを伺いました。


====ここから====

 2019年に政所の茶畑を突然引き継いだ、佐藤滋高と言います。普段医師として働き、政所には縁もゆかりもない僕が、なぜそこまで魅せられたのか、何を大事に思って日々の作業をサボりがちに続けているのか、時間の許す方はお読みいただけると嬉しいです。


佐藤滋高(さとう しげたか)
2018年5月の茶摘みで奥永源寺地域を訪れ、その後茶畑の年間作業のボランティアとして頻繁に地域に足を運んでいるうちに、地域内で後継者がなく生産が難しくなった茶畑を引き継ぐことに。畑の持ち主である地元出身の生産者と協力して茶畑の管理・政所茶の生産に携わっている。


 政所は室町時代にまでさかのぼることが出来て、江戸時代とさほど変わらない栽培法を残す貴重な産地です。しかし、古い茶畑、茶樹と栽培法が貴重なだけのただ苔むした産地ではありません。僕は今の時代にこそ貴重な産地だと強く思っています。


 現在かつてないスピードで種の絶滅が進んでいます。多様な生物の相互作用によって成り立つ生態系において、一つの種が存在しなくなるだけでもその影響は計り知れません。風が吹けば桶屋的にヒトにも大きな影響が出る可能性があります。絶滅と多様性は密接に関連しています。生物多様性が減少すると、環境の変化に対応する能力が低下し、その結果として種の絶滅リスクがさらに高まります。


 また、エリブリンという薬はご存知でしょうか⁈ 2011年に日本でも承認されている抗がん剤ですが、元になる物質はクロイソカイメンという海洋生物から見つかっています。エリブリンをはじめペニシリン、イベルメクチン、アスピリンなど生物から見つかった薬品をあげれば枚挙にいとまがありません。生物が絶滅するということは有用な知見や発見の可能性の消滅でもあるのです。

 茶工場がなくなることで一つの産地がなくなる、そのような危機に直面している政所についても、同じ事が言えると思います。

 まず、政所茶という失われつつある栽培方法を護る事で、多様性を次世代に遺すことは、変化を続ける世界において、とても価値のあることです。そして、県境にも近い過疎高齢化地域でもある政所が、僕を含めて多くの人を惹きつけ、多様なバックグラウンドを持つ人たちが互いに支えあうことで、茶畑が成り立っていることもまた、価値ある事だと感じています。何故、多様な人が集まり、それを受け入れて、コミュニティを維持できているのか、この事例は活気を失う日本の津々浦々を救うかもしれない智慧を含むと思うからです。


地域の摘み手さんも手伝い手摘みで収穫


 もう少し詳しく書きたいと思います。

 勘違いしている人も多いですが、自然の原理は「弱肉強食」ではありません。であればサーベルタイガーは絶滅しないはずです。彼らは氷河期が終わった気候変動に対応できずに絶滅したと言われています。

 中心原理は自然選択による「適者生存」なのです。哲学者ハーバート・スペンサーの言葉を借りれば『最も強い者が生き残るのではなく、最も変化できる者が生き残る』と言うわけです。

 政所のお茶の特徴のひとつは「実生在来種(みしょうざいらいしゅ)」で、これがまさに適者生存です。種で増える実生の茶樹は一本一本の茶樹がそれぞれ異なる遺伝情報を持ち、個性を持っています。本来暖かい土地の植物である茶の木ですが、かつての政所に寒さや雪に強い性質を持ったタネも偶然産まれたのでしょう。雪深い政所にあって有利な性質を持つその茶樹は他の茶樹より生育が良く、多くの種を残していき、世代を重ね淘汰圧を潜り抜けた茶樹が、いま政所で繁栄している茶樹たちです。時間をかけてそれぞれの風土に適応してきた茶樹たちをお茶の世界では「在来種」と呼びます。在来種はその土地土地に適応したローカルなお茶といえますね。


 翻って、お茶の世界でいま最も適応し繁栄しているのは挿し木により増える「品種茶」でしょう。現在、日本では98%以上が『やぶきた』や『さえみどり』などからなる品種茶です。優れた性質を持ち選抜された茶樹の枝を切って、土に挿して増やすので、基本的に一枚の茶畑の茶樹たちの遺伝情報は単一です。

 挿し木により増える品種茶を、僕はよく車のF1に例えます。最新の栽培技術の粋を凝縮して栽培されるもので、それ自体芸術品のようです。一方の政所茶は籠とか馬車みたいな物でしょうか。実際、江戸時代の文献に書かれている栽培法と現代でもあまり変わらない育て方です。


 では、政所茶は時代遅れのもので、遺したいのは懐古主義からでしょうか。

 前段で書いたとおり適者生存が自然の中心原理です。多様性の価値がここにあります。今の環境が未来永劫続くのであれば、品種茶が最適解かもしれません。しかし、有為転変もまた基本原理です。この世のものは常に変化し、一定の状態を永遠に保つことはありません。いま適応しているものがこの先も繁栄し続ける保証はありません。変化に適応できず、日本の茶業が淘汰される日が来ないように、変化に備えて多様な産地を遺しておく必要はありませんでしょうか?


 僕が茶摘みボランティアで初めて政所を訪れた時に、まず飛び込んできたのは、ポコポコと茶樹が肩を寄せ合う茶畑で、その初めて見る美しい光景にしびれました。その帰りには、茶畑を大事に守ってきた集落の人たちと、お手伝いに集まった人たちの織りなす、これまた美しいコミュニティにやられました。いま僕が引き継いだ茶畑もいろんな背景を持った人たちに、茶畑の作業を助けてもらっています。そして、そんな僕らを集落の人たちは受け入れ、何かと気にかけて優しく見守り、時に見るに見かねて助けてくれています。多様性をもつのは実生在来種の茶樹たちだけではありません。茶畑に集うコミュニティもまたダイバーシティを実現しています。それぞれ異なる得意なことなんかを活かしながら支えたり、ときに支えられたり、心地よいコミュニティもまた本当に価値あるものだと考えます。


2018年5月茶摘みボランティアに初めて参加した時
小雨が降るなか早朝から摘んだのは思い出


 ウェルビーイングな生活のあり方について考える時、政所という存在は示唆に富んでいます。幸福感、自己肯定感、精神的な豊かさ、地域社会とのつながり、社会への貢献など、生きがいを感じられる良質なコミュニティを、どうかたち作って維持していくのか、都市も地方も苦労してませんか。政所にはただお茶産地を守る以上の価値がないでしょうか。


 昔ながらの茶畑を愚直に守る産地には、未来に遺すべきものがまだまだ沢山あります。政所に限らず、日本中、世界中で過去の重要な知見や技術、文化が現在進行形で失われようとしています。ひとたび失われてロストテクノロジーになってしまえば、その復活は困難です。政所のような産地や技術、文化ってやはり無くしてしまっては「もったいない」ではなく、後々「困る」と思うのです。


地域の外からたくさんのボランティアさんが
茶摘みのために集う滋茶園


 この稀有な産地を次世代に遺すために、出来る範囲で結構です、ご支援頂けないでしょうか。それは金銭的なものでも、作業のお手伝いでも、産地に足を運んで茶畑を見てもらうだけでも、お茶を買って飲んで思いを馳せるだけでも構いません。コミュニティに関わっていただく事で、その多様性を一層深めてもらえるととても嬉しいです。


 どうぞよろしくお願いいたします。


滋茶園合同会社 佐藤滋高


=====ここまで=====


 佐藤さん、メッセージありがとうございました。

 明日9月23日(火・祝)に予定しております、『政所茶ファンの集い(マルシェ&生産者交流会)』では、佐藤さんも来られるので、直接お話を聞いてみたい方はぜひ会場にお運びください。

 イベントの詳細はこちらをご確認ください。


 クラウドファンディング期間も残り1週間あまり。引き続き応援をよろしくお願いします!

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