なぜ、福島の工場だったのか──Teba form jacketに込めた想いTeba form jacketのプロダクトが動き出したとき、私たちが最初に考えたのは「どこで、誰と、どう作るか」でした。都市的で洗練された佇まいを持ちながら、ビジネスでもデイリーでも日常に自然と溶け込む。そんなテーラードウェアを形にするには、単なる縫製技術だけでなく、思いと対話が必要だと感じていました。そんな中で出会ったのが、福島にある小さな工場でした。福島と聞いて、意外に思われる方もいるかもしれません。けれどこの工場には、長年にわたりテーラードウェアを手がけてきた職人たちがいて、構造的に繊細な縫製を、驚くほど自然体でこなしてしまう技術力があります。何より、私の「毎日着たくなるテーラードウェアを作りたい」という想いに、真摯に耳を傾けてくれたのです。大量生産ではなく、少量多品種。試作と改良を繰り返すプロセスにも、柔軟に対応してくれるその姿勢は、まさに私のものづくりの理想でした。そしてもうひとつ、大切な理由があります。福島という土地に、私たちは敬意を持っています。震災以降、復興とともに歩んできた地域の力強さと誠実さ。その土地で生まれるテーラードウェアには、単なる服以上の意味が宿ると感じました。着ることで、都市と地方、過去と未来、作り手と使い手がつながる。そんなストーリーを、このテーラードウェアに込めたかったのです。Teba form jacketは、ただのプロダクトではありません。それは、価値観の再構築であり、文化の創造でもあります。そしてその第一歩を、福島の工場とともに踏み出せたことを、私は誇りに思っています。




