合資会社柴田酒造場・株式会社キテンの柴田佑紀です。
僕らのプロジェクト「愛知岡崎・酒蔵を起点にこれからの里山の可能性を広げる宿をつくりたい」をご支援いただいた皆様、本当にありがとうございました。
そして、本プロジェクトは残り1ヵ月を切りました!
引き続き皆様のご支援をお待ちしております。
さて、リターンの日本酒について、柴田酒造場の日本酒づくりへの想いを記したいと思います。少し小難しく、長いですがお付き合いください。
孝の司 醸造チーム
柴田酒造場はここ数年、チーム一丸となって酒造りを見直してきました。
特に…
・地元の農業と向き合うことや、技術を向上させることを目的に愛知県山間部で栽培される「夢山水(ゆめさんすい)」に品種を搾る
・武器であり、また欠点でもある超軟水「神水(かんずい)」と向き合う
その中でたどり着いたのが、自社米(農薬・化学肥料不使用)の夢山水を低精白(あまり精米をしないこと)で醸す酒造りです。
まず、高齢化が進むこの神水エリアで柴田酒造場は2021年から酒米の栽培を開始しました。通常、農業と酒造業は分業化されており、酒蔵自ら農業をやることは珍しいです。
しかしながら、農村部の酒蔵にとっては、目に見えて耕作放棄地や休耕田が増えておりとても他人事ではありません。そんな中、柴田酒造場も近隣の農家さんから相談を受けて小規模ながら農業に参入しました。
そして、せっかくやるならば、この場所をより良い状態で残していくために、有機栽培に基づく栽培方法でかつ日本酒造りに直結する酒米(夢山水)を栽培することを決めました。
夢山水を栽培する棚田
夢山水の稲穂日本酒造りにおいて、米の表面部分に含まれるタンパクや脂質は雑味に繋がるため精米します。吟醸酒であれば60%以下(40%を糠として取り除く)、大吟醸酒であれば50%以下(半分以上を糠として取り除く)…というように。
すごく大雑把に簡単に言うと、キレイな酒質を目指すほど、精米して雑味を防ぐというのが日本酒造りのセオリーです。
一方、米の表面にはミネラル分も多く含まれており、精米時にタンパクや脂質と共にこのミネラル分も削がれてしまいます。
僕らの一番の武器である超軟水「神水(かんずい)」は、このミネラル分がものすごく少なく口当たりが柔らかいのが特徴ですが、ミネラル分は発酵過程において酵母の必須栄養素になったり、麹の酵素の溶出に必要だったりと非常に大切な役割を担います。
(ミネラル分の指標である水の米国硬度…日本全国平均:60mg/L⇒神水:3.5mg/L)
軟水蔵は一般的にミネラル分を補填するために助剤等を使います。僕らも数年前までそんな酒造りを行っていました。しかし、超軟水を武器としつつ、硬水化してしまう部分に違和感がありました。
そのため助剤の使用をやめ、ピュアな水と向き合い、欠点を技術でカバーすること、そしてお米をあまり精米せずに表面に含まれるミネラル分を酒造りに活かせないかと考えました。
ここで一つ矛盾が生まれます…
雑味を防ぐために精米したい、一方でお米のミネラル分を残すために精米したくない
では、雑味のもとになるタンパクの少ないお米ができればあまり精米する必要もなく問題が解決するのではないか。一般的にたんぱくは、土壌の窒素分から生成され、その窒素分は肥料からなります。
一旦、収量を無視して肥料を減らし、土壌の窒素分を減らし、低たんぱくのお米を目指すことに決めました。自分たちで農業をやるからこそ収量を無視するという選択ができたと思います。
「超軟水という唯一無二の口当たりを活かしつつ、その欠点は米作りや酒造りの技術でカバーすること。」
これが、柴田酒造場が目指す「超軟水から考える米作りと酒造り」の姿かなと考えております。
ここ数年、何度も試作を重ねてやっと形になってきました。
自社米夢山水で醸した日本酒有機に基づく栽培方法のため、米作りにおいて非常に手間がかかるし、低精白のため醸造的にも非常に高度な技術が求められます。
そんな自分たちの想いと技術の詰まった日本酒を皆様にお届けしたいと思います!
お楽しみに!



