
持てない量を前提にしたリストは、
かえって行動を止めてしまう可能性があります。
「あかちゃんがいる家庭なら、このくらい備えましょう」
子育て向けの防災情報では、こうした表現をよく目にします。
そこで、実際に書かれている内容をそのまま抜き出し、
こども1人分の非常持出品として縦に並べてみました。
こどもだけで、これです。
① 温めなくてもすぐに食べられるもの
② 高カロリー食
③ 子どもが好きなもの
④ 食べ慣れているもの
⑤ 食べると元気が出るもの
⑥ 飲料水
⑦ 麦茶
⑧ お茶
⑨ 野菜ジュース
⑩ 子どもの好きなお菓子
⑪ 食事用エプロン
⑫ 使い捨て皿
⑬ スプーン
⑭ 紙コップ
⑮ 紙おむつ(10枚以上)
⑯ 防臭袋
⑰ 携帯トイレ
⑱ おしりふき(1パック)
⑲ 除菌シート(1パック)
⑳ ウェットティッシュ(1パック)
㉑ 除菌・消毒グッズ
㉒ 母乳パッド
㉓ 歯みがき用シート
㉔ 赤ちゃん用マスク(2才頃から)
㉕ ブランケット
㉖ ガーゼ
㉗ タオル
㉘ バスタオル
㉙ 着替えセット
㉚ 帽子(あかちゃんの頭を守るもの)
㉛ 絵本
㉜ 折り紙や シールブック、ぬり絵、 音が鳴らないゲーム機など
㉝冷却用シート
㉞ 救急セット(常備薬など)
㉟ 携帯アルミブランケット
㊱ 母子手帳のコピー㊵ 健康保険証のコピー㊶ 医療証のコピー
㊲ 防災カード(子どもの名前・アレルギー情報・連絡先・写真など)
㊳ 抱っこひも
㊴ チャック付きポリ袋
㊵ 携帯用洗濯洗剤
㊶ 洗濯袋
㊷ ワセリン
㊸ 靴
この時点で、一般的なリュック1つには収まりません。
兄弟もいたらどうなるのでしょうか?
さらに
実際の避難では、
・親自身の非常持出品
・季節(冬の防寒、夏の暑さ対策)
・暗闇や階段での移動
・子どもを抱えた状態での行動
これらを同時に考える必要があります。
「リスト通りにそろえること」と
「実際に持って逃げられること」は、別問題です。
防災情報には、たくさんのリストがあふれています。
けれど、災害時に問われるのは「何を持っているか」ではなく、
その状況で自分が動けるかどうかです。
非常持出袋は、すべてを詰め込むための袋ではありません。
暗闇の中、子どもを抱え、階段を下り、周囲を確認しながら移動する。
その現実の中で背負える量には、限界があります。
高齢者や障がい者のご家族がいる世帯も同じです。
防災で求められるのは「全部そろえること」ではなく、
動ける現実の中で、何を持つかを決断できる自分でいること。
迷ったときに立ち止まり、
「これは本当に必要か」
「これは今、持って動けるか」
そう考えられる力こそが、防災力です。
正解のリストを探すよりも、自分の暮らし、自分の家族、自分の体力を基準に、
選び、削り、決めきる。
それが、災害時に行動を止めないための備えだと考えています。
岡部式防災備蓄術 5冊
「防災BOOK」 5冊
補助教材 1冊

どうぞご活用ください。
防災アドバイザー岡部梨恵子






