(修復作業前の頭部)
株式会社文化財マネージメントの宮本です。
プロジェクトが終了してからだいぶご無沙汰してしまいましたが、木造地蔵菩薩像の修復作業が始まっています。
修復を担当していただいている「吉備文化財修復所」代表の牧野隆夫さんから、修復作業の解説と画像をいただきましたので、掲載します。
1.梱包・搬出(搬送)
観音堂からお像を運び出しました。
表面の塗膜はパラパラと落ち、頭部などの部材が本体から外れかけています。
これ以上お像を傷めないよう、柔らかな和紙の「薄葉紙(うすようし)」と真綿で作った「紙座布団」で全体を包み保護します。
全体を「さらし」でしっかりと固定して箱に納め、埼玉県の工房まで輸送しました。
(薄葉紙で像を包んでいる)
2.修復前調査記録・写真撮影
実際の修復作業に入る前に、修復前の状態を記録します。
「表面が汚れている」「塗膜が剥がれている」「組み寄せられた部材が外れている」「部材が無くなっている」など項目ごとに確認し、今後の作業内容や手順を決めていきます。
文章だけではなく、お像全体や損傷部分の写真を撮り、細部まで記録に残します。
(修復作業前の全体)
3.欠失部分の試作・検討
今回の修復は、外れた頭部を適正な位置に戻し、外れて無くなってしまった部材を補い、全体のお姿を整えることを目的としています。
まずは全体のかたちを捉えるために、無くなった部材の試作をしました。左手にのせる「宝珠(ほうじゅ)」、お像の背面にある「光背(こうはい)」、台座の下の「框(かまち)」です。
お像にふさわしい形を検討して、今後作業の中で決定していきます。
(欠失部分を厚紙などで制作して検討する)