
釜石地方森林組合の震災からの再生と新たな挑戦を描いた『つなぐ森林業 海のまちの森林組合、復興からその先へ』(PHP研究所)の刊行にあたり、ゆかりのある方々から頂いたメッセージをご紹介しています。
今回は、岐阜県から震災復興支援のために釜石市農林課に派遣され(2016~2018年)、釜石地方森林組合とも懇意にしていただいていた伏見七夫さんです。
「ハイ、岩手」でおなじみの伏見さん、と言えば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。
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よくぞここまで取りまとめられたと、本書の出版に敬服いたしています。
2011年3月11日、未曾有の津波被害を受け、絶望の淵から日常の事業活動が出来るまで復興された様子を、釜石地方森林組合という一事業体の取組みを通じて、分かりやすく語ってくれます。
本書は、発生が予想される南海トラフ巨大地震や、昨今発生が多発している山火事を含めた自然災害の復興の道標になると思います。
本書の第1章は、海のまちの釜石地方森林組合の話ですが、日本の林業の課題と可能性について取りまとめ、第2章は、3月11日に被災した現場で何が起きていたのかを、聞き取りでまとめられました。
決して震災直後では、話すことも許されなかった深層心理が語られているのは、震災から15年たった今だからであり、聞き手が手塚さや香さんだからだと思います。
「今、できることをやっぺし」 。無事だった職員を前に高橋参事が語ったこの一言から、誰も未来は見えないけど、復興への歩みが始まっていきます。
震災前より、東京工業大特任教授米田雅子氏が提唱する、建設トップランナー倶楽部の勉強会に参加していた高橋参事は、異業種との連携を深めてきました。復興道路と名付けられた高規格道路の建設が迅速に進み、山林の伐開で出る材木はバイオマス発電の原料となり、新たな雇用が生まれ、若い職員の加入によって組織に活気が出てきました。
同時期に、イギリスの金融機関であるバークグループの支援を受け、釜石大槌バークレイズ林業スクールを開講し、5年間で100人を超える人材を育成された。国内外のこうした連携は、高橋参事の人柄と手塚さんの粘り強いサポートの賜物であったことでしょう。
こうした組合職員の充実や異業種との連携は、2017年の5月の連休に発生した山火事(焼失面積413ha)でも活かされました。山林所有者の負担なしで植栽が迅速に行われ、被害木は復興のシンボルとして、2019ラグビーワールドカップの釜石鵜住居復興スタジアムのスタンド席などに活用されています。
発生当時、国内最大級の山火事と言われた釜石の山林火災ですが、2025年2月に発生した大船渡大規模林野火災は、焼失面積3,370haと発表され、釜石の8倍の面積となりました。地球温暖化による気温の上昇と乾燥が要因と言われていますが、京都防災研究所の5万件に及ぶ山林火災の原因が、人為的要因が98.8%で、日本では雷などによる自然現象は稀だそうです。幼いころから山林との関りを学び、森と水の循環で私たちの生活が成り立っていることを学ぶことが肝要と感じています。
2026.3.27 伏見七夫
2016年4月から2年間、岐阜県市長会を通じて、災害復興支援で釜石市役所農林課へ派遣。畜産指導に当たる。和山牧場の放射能汚染の除染を目的に草地の更新がされ、その後、放牧した牛が、低マグネシウム血症により死亡する事故が発生。放牧衛生指導により、死亡事故をなくした。



