
1.はじめに
《冬》第3楽章は、《四季》の締めくくりにふさわしく、再び自然が荒々しく動き出す緊迫感のある音楽です。寒さ、風、氷、そしてそれを越えて生きようとする人間の姿が、音によってドラマチックに描かれます。
2.️氷と風が踊るフィナーレ
この楽章は、速いテンポで始まり、細かい音型の連続が凍てついた世界の緊張感を生み出します。ヴァイオリンの連続音は、地面を覆う氷のきしむ音、風が建物の隙間を通り抜ける音を思わせ、聴く者に冬の厳しさを体感させます。
中間部では、少しテンポが落ち着き、束の間の静けさや、雪の舞う情景が浮かびますが、すぐに再び力強いエネルギーが戻り、音楽は嵐のように駆け抜けていきます。
3.️「冬」の真の姿と、生きる力
この楽章が描くのは、単なる自然現象ではありません。寒さや風の中でも歩みを止めず、生命がそこに存在し続けるという、"生きること"への意志のようなものが込められていると感じられます。
演奏者にとっても、最後の楽章でありながら、体力・集中力・音楽性のすべてが試される場面。「ここで終わる」という意識ではなく、「ここから次の季節が始まる」ような感覚で弾くことが、フィナーレにふさわしいエネルギーを生み出すのかもしれません。
4.小池彩夏のコメント
激しいリズムと鋭い音型の中に、冬の厳しさと生命の力を感じます。雪嵐のような勢いの中でも、音の方向と息の流れを意識し、ただ冷たさを描くのではなく、その奥にある再生の気配を表現したいと思います。
終わりよりも、むしろ始まりを感じさせるそんな希望を音で描けたらと思います。
5.次回予告
ここまで、《四季》の各楽章について、音楽が描く風景や感情、そして演奏する中での気づきをご紹介してきました。開演前に、少しでも曲の背景について理解が深まったのでしたら嬉しいです。
次回は再び大井駿さんの寄稿記事です。通奏低音としてのチェンバロと、その即興演奏との関係についてご紹介いただきます。




