1.はじめに《秋》第3楽章は、「狩り」をテーマにした非常に生き生きとした音楽です。ヴィヴァルディはこの楽章で、人間と自然のスリリングな関係──犬が走り、角笛が鳴り、獲物が逃げ、追いかける者がそれを追う──その全体像を、音だけで描いています。2.音で描く狩りの風景冒頭からテンポの速い、弾むようなリズムが続きます。これは犬たちが野山を駆け回っている様子だとされており、独奏ヴァイオリンの軽快な音型が、その動きを見事に表現しています。途中には、角笛を模したような合奏の音や、獲物を追い詰める緊迫した場面を思わせるようなフレーズも登場します。音楽全体から感じられるのは「本能」と「興奮」。それでいて、どこか品があり、自然との距離感も保たれている──まさにバロックらしい描写の妙が感じられる楽章です。3.ダイナミズムと精度の両立この楽章は速さとエネルギーが求められる反面、アンサンブルとしての精度も非常に重要です。犬の足音のような音型がそろっていないと、ただ雑然とした演奏に聞こえてしまう危険もあります。特に、独奏と合奏が細かく交代する場面では、音のキャラクターの切り替えや、テンポの"キレ"が鍵となります。「走りすぎず、立ち止まりすぎず」。狩りのようなスピード感と呼吸のコントロールが試される、技術と感性の両立が求められる楽章です。4.小池彩夏のコメント狩りの場面では、弓の動きと呼吸のタイミングを仲間と精密に合わせることが鍵になります。勢いに任せるのではなく、リズムの中に遊び心を保つことで楽しさが生まれます。矢が放たれる瞬間や獲物を追う緊張感を音で描くのは難しいですが、その躍動感を共有できる瞬間が何より楽しいです。5.次回予告次回からは《冬》編に入ります。第1楽章では、寒さに凍える人々、足を滑らせる氷、そして暖炉のぬくもりなど、冬の日常がさまざまに描かれていきます。







