
1.はじめに
いよいよ曲中の季節が、実際の季節に追い付いてきました。
《四季》の「秋」は、収穫の季節です。自然の恵みに感謝し、人々が歌い、踊り、祝い合う──そんなにぎやかな雰囲気が、第1楽章に詰め込まれています。
2.豊穣と酔いの舞曲
この楽章は、舞踏的なリズムに満ちた音楽です。独奏ヴァイオリンと合奏が交互に、時に一緒に踊るように音を重ね、人々の陽気な歓声が聴こえてくるようです。
ソネットには「収穫の後、人々が喜びの歌をうたい、踊り、酒を酌み交わす」という描写があり、実際に中盤には"酔っ払い"の様子を思わせる、ちょっとふらついたような旋律も登場します。
音楽は、陽気でありながらも細やかに書かれていて、バロック時代のユーモアと品のある遊び心が感じられる楽章です。
3.表現の幅が広がる音楽
一見すると明るく楽しいだけの曲に聴こえますが、その中には「弾み」「ゆらぎ」「ふらつき」など、演奏者が意識的に作り出さなければならない細かいニュアンスがたくさんあります。
特に、酔いがまわったような旋律の場面では、テンポ感や重心の置き方によって、演奏の雰囲気が大きく変わってきます。
お祭りのような高揚感と、その中にある微妙なバランス。ヴィヴァルディが描いた"人間の秋"が、そこにはあります。
4.小池彩夏のコメント
この楽章の冒頭を弾くと、豊かな実りを迎えた喜びが音の中に広がっていくのを感じます。軽やかなリズムと舞うような旋律がまるで村人たちの笑顔を描くようです。
私は特にワインに酔いながら陽気に踊るような場面が好きです。弓がはずむたびに、人々の笑い声が聴こえる気がします。
5.次回予告
次回は《秋》第2楽章──祝宴のあとの"静かな眠り"を描いた楽章です。ほろ酔いの余韻の中で、音楽はやさしく静まり、夢のような世界へと入っていきます。






