
1.はじめに
にぎやかな祝宴のあとのひととき。
《秋》第2楽章は、前楽章の陽気な踊りから一転して、落ち着いた雰囲気の中で「眠り」を描いた楽章です。音楽は静かに、やさしく、そして夢の中へと導くように進んでいきます。
2.夢と余韻の音楽
ソネットによれば、この楽章は「人々が酔いにまかせてまどろむ情景」を描いています。つまり、祝宴のあと、満ち足りた気持ちでうとうとと眠りに落ちていく──そんな状態です。
独奏ヴァイオリンは、静かなアルペジオや歌うような旋律で、聴く人の心をふわりと包み込むような表現を担います。通奏低音は控えめに脈打ち、音楽全体がとても内省的で穏やかな流れになります。
3.️音の"深呼吸"を楽しむ
この楽章は、演奏する側にとっても、激しい動きや派手な技巧があるわけではありません。そのぶん、「音の呼吸」や「間(ま)」をどう取るかが、音楽の質感に大きな影響を与えます。
まるで深呼吸をするように、音を置き、空気を感じながら演奏することが大切な楽章です。聴く人にとっても、日常の喧騒を忘れさせてくれるような、そんなやすらぎの時間となるでしょう。
4.小池彩夏のコメント
収穫の喜びのあとに訪れる穏やかな眠りとその情景を呼吸で表現することを意識しています。ゆっくりとした弓の動きが、深い安らぎとともに心を包み込みます。
音を出す瞬間よりも響きが消えていく余白にこそ温かさが宿るこの静けさこそが秋の深みだと思います。
5.次回予告
次回は《秋》第3楽章──「狩り」をテーマにした非常に生き生きとした音楽をご紹介します。犬が走り、角笛が鳴り、獲物を追いかける様子が音楽で表現されます。どうぞお楽しみに。






