越後ー小国発。移住者が経営者になる、超没入型田舎宿「縁和」

山間農家の暮らしを丸ごと体験する、超没入型の田舎宿。1日1組限定で、収穫・調理・雪国の生活リズムを通じて「生き方」そのものに触れる高付加価値サービスです。空き家を再生し、移住者が経営者へ成長する持続可能な地域経済モデルを小国から全国へ。

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越後ー小国発。移住者が経営者になる、超没入型田舎宿「縁和」

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山間農家の暮らしを丸ごと体験する、超没入型の田舎宿。1日1組限定で、収穫・調理・雪国の生活リズムを通じて「生き方」そのものに触れる高付加価値サービスです。空き家を再生し、移住者が経営者へ成長する持続可能な地域経済モデルを小国から全国へ。

雪は、音のふちをやわらかく丸めていた。
新潟県長岡市・小国町。三方を山に抱かれたこの盆地は、冬になると世界の輪郭ごと深呼吸をはじめる。二メートルを超える雪が屋根を覆っても、消雪パイプの細い水筋が通りをつなぎ、町はかろうじて息をしている。田んぼは眠り、川は遅く、風は笛のように鳴った。

小国町小国沢集落 冬の田園風景

その朝、古くからの顔役・三郎爺さんは、雪面を杖で軽く叩いた。
「今日は、締まっとる」
冬の終わり、放射冷却で雪が固く凍る「凍み渡り」の日。子どもたちは昔、この凍てついた大地の上をどこまでも走り回ったという。三郎爺さんの視線の先には、小栗山の旧家――今井家。江戸の頃から続く家柄の屋敷だが、いまは人の気配を失って久しい。

外観は堂々としていて、内部は、この地域ならではの雪に耐えるしっかりとした造りだ。なかでも、二階の農作業部屋――蚕部屋――は特別だった。低い天井を支える丸太の梁が幾重にも渡り、陰影の濃い木肌には、長い年月を生きてきた家の記憶が刻まれていた。

(まだ死んじゃいねぇ)
三郎爺さんはそう心の中でつぶやき、ポケットから携帯を取り出した。
「……堀江くんか。ちと見てほしい家があるんだ」
電話の向こうで、短く「わかりました」と返す声がした。

その男──堀江謙仁。移住して間もないのに、不思議と“町の呼吸”を知っている人物だった。雪の降る町で、彼のように外から来た者が根を張ろうとする姿は、珍しいことではない。だが、堀江には、どこか違う静かな熱があった。

この町には、「おぐに未来デザイン研究所(ミラデ)」という小さな集まりがある。2023年10月18日、移住者と地元の有志が集い、町そのものを“設計図”として描き直そうと立ち上がった。

「わくわくドキドキする未来をデザインする」をコンセプトに、地域の調査と研究、実験と創造、そして地域内外へ共感を広げていく。まさに「地域のシンクタンク」そしてプラットフォームとなることを目指してミラデは設立された。その立ち上げの際、中心となり走り回ったのが堀江だった。そしてこのミラデが母体となり、このプロジェクトの主体となる株式会社が生まれる事になる。

雪は静かに降り続き、屋根の稜線を白く太らせていく。遠くの闇の奥で、目に見えない歯車が、確かに音もなく回り始めていた。

「眠る家、呼吸する記憶」 ──長い沈黙を破るように、ひとつの空き家が目を覚ます。

2024年5月18日。
うすく雲のかかった山の向こうから、光が遅れて降りてきた。三郎爺さんに案内され、堀江は小栗山集落の小さな橋を渡った。建物は思いのほか大きい。玄関の下り壁が美しい、落とし板の木目は灰色に枯れている。扉を滑らせて中へ入ると、ふわりと湿り気を含んだ冷気が頬を撫でた。踏みしめる床板は乾いた音を返す。廊下はすっと真っ直ぐだが、どこかで時間が断ち切られているような、不思議な空気が残っていた。(まだこの家は、呼吸している)

三郎爺さんは黙ったまま階段を指す。二階の一室――蚕部屋の引き戸を開けると、空気が変わった。母屋の廊下から一段下がった床、高い天井を渡る丸太梁は、古樹の芯が空へせり出したようにたしかで、暗がりの奥にたゆたう。

外へ出ると、五月の風が一段と強くなっていた。山から降りてくる匂いは草の青さと土のぬくもりを連れている。「どうだね」
三郎爺さんが尋ねる。
「使い方次第です。誰かの“暮らしの核”になれる」
堀江は短く答えた。

三郎爺さんは小さく頷き、「家主は埼玉におってな。今井という人だ」とだけ言った。
堀江はその名を頭の中に刻み込む。
この時はまだ、顔も声も知らない。
ただ、遠く離れた誰かの思いが、この古い家の奥でまだ呼吸している気がした。
風が一筋、廊下を抜けていった。
そこからすべてが、ゆっくりと動き出したのだ。

「ウッドデッキ上の午後」 ──その会話からすべての物語が動き出した。

キリサワベース2024年5月25日。雲ひとつない五月晴れ。川の音が遠く響く午後、キリサワベースのウッドデッキにテーブルを出した。麦茶の水滴がコップの外側に丸く結び、風が紙ナプキンをめくる。そこに、三郎爺さんに連れられて今井がやって来た。褪せた紺の帽子に、穏やかな表情。握手は短く、まっすぐだ。
「あの空き家、何か利用価値ありますかね?」
今井が開口一番、迷いを隠さずに言う。
「移住希望の人はいます。探せば“誰か”はいるかもしれませんね」
堀江は、正直にそう返した。
本当のところ、この時点では、空き家活用のスキームはまだ霞の向こうにあった。頭の中で形になりかけては消え、指の隙間から砂のように零れていく。
“地域づくりを株式会社でやる”なんて発想は、まだどこにもない。
デッキの向こうで、子どもが自転車のペダルを空回しさせて笑っていた。
風は涼しく、山の影をなでながら、稲の青い匂いを運んできた。
「じゃあ、とりあえずLINEを交換しましょう」
今井がスマホを掲げる。
「はい。進展があったらすぐにご連絡します」
堀江はQRコードを読み取り、緑のトーク画面に最初の短いスタンプが並んだ。

「二つのランドセル」──数字が示したのは、希望ではなく、残された時間だった。

夕暮れのコミュニティセンター。
窓の外には雪解けの田がまだ湿って光っていた。
「人口推測のページ、使ったことある?」
沈黙を破ったのは、富井だった。
手元のノートパソコンを指しながら、落ち着いた声で続ける。
「そこに出生数を入れてみたんだ。……近いうちに、小国は滅ぶって。」
その言葉に、全員の目が一斉に画面へと向いた。入力された数字――“2”。
祐介が眉をひそめて呟く。
「たしかに……去年の出生数、たった二人だもんね。」
会議室の空気は重く、テーブルの上のモニターには人口推移のグラフが映し出されている。なだらかに、しかし確実に下降していく赤い線。
その線を見つめながら、誰も言葉を発せなかった。

それは単なる統計ではなく、静かな絶望の数字だった。
「つまり、単純計算で六年後の小学校入学者は二人。」
堀江が小さく息を吐く。
「六年後の春、校庭に立つのは、たった二つのランドセルだけだ。」
佐伯が腕を組んだまま、低い声で言った。
「残された時間は、もうほとんどないんだな。でも、小国町民は……そこまでの危機感を、まだ感じてない。」
その言葉に、誰も反論できなかった。机の上の紙コップのコーヒーが、少し冷めていた。

(※現在の最新統計データでは出生数は10)

「未来は外からやってくる」──移住、産業、そして“外貨”町を再び動かす三つの歯車。

富井が静かに口を開く。
「移住者なしでは……そもそも存続は不可能ってことね。」
彼の言葉が、ゆっくりと空気を切り裂くように響いた。あらためて、全員が“移住者”という言葉の重さを感じた。

「そういえばさ、」
と祐介が口を挟んだ。
「移住者組のみんなは、こっちに来たとき、最初に何が一番困った?」
「まずは生活基盤。」
と佐伯。

「それをなんとかしたとしても、雪の掘り方もわからなかった。そもそも、どう歩けば転ばないかも知らなかった。」キリサワベース 雪下ろし作業彼は苦笑したが、その目はどこか真剣だった。「じゃあさ、」と堀江が机に両手を置く。「そのへん、もう少しサポートできれば、移住って楽になるんじゃない?」
「そうだね。」
青柳が頷く。
「まず、仕事がなければ、生きていけない。」
「小国に産業をつくらなきゃダメだ。」
学の言葉が、テーブルの上に落ちた。
「そこからはじめなきゃ。」
誰も返さなかった。けれど、その沈黙の中で、何かが確かに動き始めていた。数字の向こうに、まだ描かれていない未来の輪郭――それが、この夜、初めてこの場所に生まれた。

数字の向こうに、まだ描かれていない未来の輪郭――
それが、この夜、初めてこの場所に生まれた。

窓の外では、風が雪をさらい、月明かりの下で白い粒がゆっくりと舞っている。
音はほとんどない。ただ、屋根の雪がわずかに沈む気配と、建物の軋む音が、夜の静けさに溶けていく。冷たい空気の向こうで、町は眠り、時間だけが静かに積もっていった。
「……町の経済そのものを立て直さなきゃ、意味がないわね。」
沈黙を破ったのは、白石だった。その声には、疲れの奥にかすかな熱が宿っていた。
関口がうなずく。
「町の中でお金を回しても、豊かにはならない。同じコップの中で水をかき混ぜてるだけだ。」
「国といっしょだな。」
佐伯が言う。
「外貨を稼がなきゃ、結局、干上がる。つまり――外から人を呼び込むしかない。」
堀江がゆっくり顔を上げる。
「ということは、客は“町外”ってことか。」
「そういうことだ。」
荒井が笑った。
「新潟は昔から商売が下手なんだよ。宣伝もできなけりゃ、すぐ安売りする。」
「マーケティングとブランディングの知識が必要だな。」
佐伯が言葉を継ぐ。
「価値あるものを、まっとうな値段で売れなきゃ、いつまでもジリ貧のままだ。ここで暮らすことが“つらい”ままじゃ、誰も住みたがらない。」小国和紙生産組合

その言葉に、部屋の温度がわずかに上がったような気がした。窓の外は雪明かり。白い闇の中で、言葉だけが静かに輝いていた。「この町を、誰もがうらやむような理想郷にするんだ。」佐伯の低い声が、ストーブの赤い火に混ざって響いた。誰も笑わなかった。誰も否定しなかった。
全員の胸に、同じ映像がぼんやりと浮かんでいた。

「ブランディングは生き方だ」──ポスターでもロゴでもない。“人の生き方”こそがブランドになる。

それからの会議は、ほとんど“勉強会”になった。ブランディングとは何か、なぜそれが必要なのか――全員が真剣にノートを取り、議論を交わしながら、
「移住者が幸福に暮らすための道」
を探り続けた。小国の雪景色、山の暮らし、人の優しさ、そして季節のリズム。
それらをどう言葉にし、どう魅せるか。ときに冗談も飛び交いながら、しまいには
「小国という町そのものをひとつのキャラクターとして描く」なんて話にも及んだ。
「ブランドって、ロゴやポスターのことじゃない。」
堀江が呟く。
「人の生き方そのものがブランドなんだ。」
メンバーそれぞれが自分の得意分野を活かし、農業、文化、建築、デザイン、教育――さまざまな視点が一つに溶け合っていった。

そして、ある夜、堀江はA4のコピー用紙を手に取った。その中央に、大きくこう書いた。

――One Oguni構想
ミラデをハブとして、町内の各組織や住民が連携し、まるで一つの生き物のように連動する町の未来図。小さな町だからこそできる動き。そこに“しっかりとしたビジネスの足場”を築き、「なんとなくの地域活動」ではなく、明確な価値と対価を生む地域経済をつくる。“田舎暮らしを憧れで終わらせない。ちゃんと稼げる、誇れる暮らしにする。”

紙に書かれたその一文が、会議室の空気を変えた。誰かが深く息をついた。外では、雪が静かに降り続いていた。そんな中、地域推進委員の千秋さんが話を持ってきた。
「商工物産館、空き家になっちゃったんだよ。なんとか活用できないもんかね。」

「想いを、仕組みに変える」──理想だけでは届かない場所へ、ビジネスの力で挑む。

町の中央に位置する立派な建物――小国商工物産館。かつては町の商工会が拠点として使い賑わっていたが、過疎化の波に押され、広域組織へと統合されたことで、活動拠点が他町へと移ってしまったのだ。
残された建物だけが、ぽつんと雪の中に立っていた。使い道をめぐって、町の有識者たちが何度も会議を重ねていたが、結論は出ないまま、季節だけが巡っていた。
次の大きな会議に、ミラデも呼ばれたのだった。

「たしかに、町民のための使いみちだった。だが、利用する町民が物理的にいなくなっている。」
その会議の帰り道、堀江は静かに、しかし確信をもって言った。
「継続性を保つためには、やはりビジネスベースで考えなくてはいけないんだ。」
その夜、堀江は、一気にペンを走らせた。机の上のスケッチブックに、「One Oguni構想」と「商工物産館の再生プラン」が、一本の線でつながっていく。

「町を、もう一度“生きている場所”にしよう。」
雪の夜、堀江の部屋に灯る明かりが、静かに未来の輪郭を照らしていた。

翌日。堀江が持ち込んだその計画書を前に、佐伯は息を呑んだ。「これは……すごい。」
佐伯が思わず声を漏らした。ページの隅々まで練り込まれた図と文字は、美しくまとまり、空想の域を越えた“実現可能な構想”になっていた。
それは、oneoguhi構想にあった各組織との連携に、ビジネスとしての人と物、お金の動きまでを組みこんでいた。
柱は五つ――空き家活用、移住促進、起業支援、地域連携、そして暮らしのエネルギー実験。
その中心にすえるのは、商工物産館を拠点とする「株式会社森と暮らす」(モリクラ)。担うのは、ボランティアでは届かない“もう一歩先”の領域だ。
「すぐに動き出そう。」
佐伯の言葉に、堀江が頷いた。しかし、その熱はすぐに不安と衝突した。
「本当にできるのか?」
「自分たちにそこまでの“力”があるのか?」
ミラデの会議で声は交錯し、話し合いは日付をまたいでも続いた。
ストーブの火が弱まり、窓の外では雪が音もなく積もっていく。沈黙ののち、学が口を開いた。
「協力者が必要だ。大きな力をもつ、後ろ盾になってくれる協力者が。」
誰もが同時に、ひとつの名前を思い浮かべた。

「山口権三郎の遺志、未来へ」──過去と現在が交わり、町の新たな物語が始まった。

――山口育英奨学会

明治の時代、小国の経済を立て直した偉人・山口権三郎の遺志を継ぎ、今もなお地域に奨学金や助成を続ける公益財団法人。その資産は、町の誇りであり、希望でもあった。ミラデのメンバーであり、育英会の職員でもある荒井が静かに言った。「俺がつなぐよ。」

そして、彼らは雪の舞う日、育英会の門をくぐった。古い石造りの階段を上がり、重たい扉の向こう、事務局長の原事務局長が迎えてくれた。
堀江は緊張を押し殺しながら、One Oguni構想に込めた想いと計画のすべてを語った。
言葉を選ぶことも忘れ、息を切らせながら、それでも真っ直ぐに。
話を聞き終えた原事務局長が、静かに手を組んだ。
「……ここまで、実直に未来を目指したプランは今までになかった。」
そして少し間を置いて続けた。
「来月、理事長がこちらに来られます。ぜひ、直接話をされたほうがいい。」

部屋の空気が、わずかに揺れた。凍てついた季節の中で、一本の細い道が、確かに未来へとつながった瞬間だった。

「価値の境界を越えて」──“売る”でも“壊す”でもない、第三の選択肢。

2024年11月4日。
山の影が早くなる季節、堀江は小栗山の今井宅を再訪した。障子越しの午後は薄く、居間に通されると、そこには今井夫妻のほかにもう一組のご夫妻が座していた。妹さん夫婦だという。湯呑みが四つ、丸盆の上で控えている。
(少し硬い空気だ)
堀江は、胸の奥を整えてから切り出した。

「小国の未来を見据えた活動を、おぐに未来デザイン研究所で進めています。ただ、任意団体では越えられない壁がある。だから――株式会社をつくります。森と暮らす株式会社
言葉は淡々としているが、一語一語に熱が宿る。
「事業のひとつに、空き家の“解体ではない”活用があります。具体的には――解体費用のおよそ半分の金額で、空き家と付随する田畑・山林をまとめて引き取り、こちらで運用します。名義も移し、この地への想いを未来へ残します」

一瞬、部屋の空気が固まった。

「えっ!? 私たちがお金を“払う”の?」驚きは当然だ、廃品回収じゃあるまいし、家は売れるものという感覚は、長い時間で身についた常識だ。だが、中山間地では値がつかないことがある。最後は費用を出して解体、それでようやく“後始末”ということになる。しかも、解体しても土地は残る。草刈り、雪かき、そして税金――管理は続く。「ただでもいいから引き取ってほしい」「お金を払ってでも」そんな声が実際にある。うまく売れたとしても、新しい住人が居着くか、集落と折り合えるかという不安は消えない。
堀江は、その現実をひとつずつ言葉に変えて、短く並べた。今井夫妻は黙って聞いた。妹夫婦も、目だけで互いの考えを確かめ合う。
「内容は理解しました。少し、考えさせてください」
今井の声は、ゆるがない柔らかさを持っていた。

「壊すこと、託すこと」──決断の裏にあるのは、静かな愛情と責任。

2024年12月1日。
冷たい空気の午後、今井夫妻がキリサワベースに現れた。薪ストーブの火が小さく笑う。
「やっぱり、解体するよ」
それは、意外な返事だった。
「そうですか」
堀江は素直に落胆を隠せず、しかし口調は静かだった。
「説得というわけではありません。ただ、どうしてそう決められたのか教えていただけますか」
今井夫人が、ゆっくり目を上げる。
「あそこは私の実家です。近くに親戚も、昔からの知り合いも多くて……やっぱり心配なんです。解体してしまえば、迷惑もかからないだろうと」
堀江は頷いた。
「でも、土地の管理は残ります」
「そう……なんだけどね」
沈黙がテーブルの上に薄く降り積もる。
小栗山 旧今井邸堀江は、視線を逃がさずに言った。「僕らが責任を持って活用し、運営します。いつでも様子を見に来てください。むしろ、運営に関わってほしい」短い間のあと、続ける。「会社の準備もしています。引き取り費用とは別に、“この事業に出資して一緒に見守る”道も用意します」
それは未来へ伸びる細い橋だった。夫婦は顔を見合わせ、
「もう少し持ち帰って相談します」
と言い、深く頭を下げて帰っていった。

「つながった希望の線」──細く頼りなかった夢が、現実の形を取りはじめる。

三月の雪は、まだ固く残っていた。山あいの空は低く、白い雲がゆっくりと動いている。山口育英奨学会の応接室――分厚いカーテンの隙間から、かすかな光が差し込んでいた。

山口庭園 旧正門堀江たちは、山口理事長の前に並んで座っていた。机の上には、手書きで描かれた「One Oguni構想」の図面と、丁寧に製本された企画書が静かに置かれている。理事長はしばらくそれを見つめ、指先でページをめくった。

そして、ゆっくりと顔を上げた。
「――そうか。こんなことを考えてくる人がいるとはね。」
穏やかな声だったが、その奥に確かな興味が宿っていた。
「おもしろいんじゃないか。なにかしらの協力はしていこうと思う。」

その言葉が、部屋の空気を一変させた。ミラデが持ち込んだ壮大な計画とビジョン。それは美しくまとまり、理屈も通っていた。だが同時に、その規模はあまりにも大きく、現実味を疑う声も少なくなかった。
けれども――本気で町ひとつを再生させようとする以上、最初から“小さな枠”に収まるはずもなかった。理事長は、彼らの情熱の奥にある真剣さを見抜いたのだろう。

「まずは、はじめてみてはどうかな。」
その一言で、細く揺らいでいた希望の線は、はっきりとした実線になった。
堀江は小さく息をつき、呟いた。
「……つながった。」
「もう、あとにはひけないな。」
荒井が、まるで雪が解けるような清々しい笑顔を浮かべた。
後日、原事務局長から連絡があり、会社設立費用を支援してもらえることとなった。

その夜、ミラデのメンバーは町内唯一のスナックに集まり、小さな祝いの宴を開いた。日本酒の瓶が開き、笑い声とため息が交錯する。
「難所をひとつ越えたな。」
「いや、ここからが本当の勝負だ。」
テーブルの上に置かれたランプの灯が、皆の顔を柔らかく照らしていた。それは、長い冬の果てに差し込む春の光のようだった。
外では、雪がしんしんと降り続いている。しかし、その白の向こうには――確かに、新しい季節の気配があった。

「走り出す者たち」──理想を形にするための、怒涛の三ヶ月。

2025年5月4日。小栗山 旧今井邸 蚕部屋遅い春は、重たい雪をようやく手放した。今井からのLINEに促され、堀江は小栗山の家へ向かう。敷地の縁に残った雪はまだ冷たく、空はやわらかな青を取り戻している。「ずいぶん待たせてしまったね。こっちは今年も雪が多かったみたいだね」
今井は微笑んだ。
「冬に二、三度見に来ました。雪でうもれてましたよ」
「だろうね」
二人の会話は、雪解け水のように緩やかだ。

今井は、少しだけ呼吸を整え、まっすぐ言った。
「ところでね。あの話、お願いすることに決めました」
言葉は短いのに、驚くほど遠くまで届いた。
堀江は、ほんの一瞬だけ目を閉じ、それから深く頷いた。
「ありがとうございます。きっといい活用ができると思います」
「今後、手続きでご足労をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
握手は、五月の風と同じ手触りだった。しなやかで、確かな温度があった。
蚕部屋の丸太梁が、低く応えるように鳴った。この家の“芯”は、たしかにまだ生きている。
そしてその芯は、やがて町のどこかへ、見えない線で結ばれていくはずだった。
お膳立てはととのった。あとは、実行に移すだけだった。

それからの日々は、嵐のように過ぎていった。書類の山。司法書士との打ち合わせ。会計士との資本金計画。株式の設計をめぐる議論は夜更けまで続き、誰かがコーヒーを淹れるたび、机の上の図面が一枚、また一枚と増えていった。キリサワベース コワーキングスペース「農地の取得には、これとこれが必要です」役所で渡された分厚い資料を前に、堀江は思わずため息を漏らした。机の端に置かれた手帳には、町内イベントの準備予定がびっしりと並んでいる。「これ、正気のスケジュールじゃないな……」苦笑しながらも、誰も手を止めようとはしなかった。日々の仕事、家族の生活、そして地域の活動。すべてを抱えながら、それでも彼らは動いた。
夜の打ち合わせの帰り道、雪を踏みしめる足跡だけが、確かにこの町の未来へとつながっていった。

「始まりの音」──夏の空に響いた花火と、町の新しい鼓動。

――そして迎えた夏。

会社の設立日は、町内最大のイベント「おぐに夏まつり大花火大会」の前々日。もちろん、準備と運営にはミラデも参加している。
誰がどう考えても、あり得ない日程だった。しかし、彼らにとってそれは、むしろふさわしいタイミングだった。
「花火の音と一緒に、この町の新しい幕を開けよう。」
そう言ったのは佐伯だった。堀江も荒井も笑った。笑いながら、静かにうなずいた。

森と暮らす株式会社――モリクラ。
2025年8月12日、その名前が正式に登記された。長い冬を越えて、ようやく生まれた“ひとつの芽”。
その後、今井夫妻とのやり取りは続けられ
細部の調整を重ねながら、空き家引き取りの契約に向けて話を進めていった。
そして会社設立への動き出しからわずか三ヶ月後、ついに契約締結の日が訪れた。

机の上に置かれた契約書に、今井夫妻の手が静かに伸びる。その瞬間――町の未来が、ほんの少し音を立てて動き出した。
小栗山の家が、「森と暮らす株式会社」最初の再生物件として、確かに息を吹き返した瞬間だった。それは、One Oguni構想の4本柱のひとつ――“空き家再生”の第一歩でもあった。

外では、秋風が稲穂を揺らしていた。あの家の古びた戸の向こうに、まだ見ぬ人の暮らしの灯が、静かにともろうとしていた。

「オヤマボクチ会議」──“当たり前の風景”の中に、次の町づくりのヒントがある。

春の雪解けが進むころ、山の斜面はまだところどころ白く、その下から顔を出した草の匂いが、風にまじって町を包んでいた。
「オヤマボクチって知ってるか?」
佐伯が、コーヒーを片手にぽつりと言った。ミラデの拠点――キリサワベースの一角では、雪解けの水音だけが、静かな時間を刻んでいた。
「ボクチ?」
堀江が首を傾げる。
「そう。山に自生する野草だよ。葉っぱの裏に産毛があって、それを集めると綿みたいになるんだ。昔は火縄銃の火口にも使われてたらしい」
荒井がうなずいた。
「火口……だから“ボクチ”っていうんだな。聞いたことある。」
佐伯が続ける。
「実は、そばの“つなぎ”にもなるんだ。オヤマボクチの繊維を混ぜると、そばが途切れず、喉ごしが全然違う。今じゃ滅多に手に入らない。全国的にも希少なんだ」
「へえ……」
オヤマボクチ(ヤマゴボウ)堀江は感心したように息をのむ。「そんなものが、この町に?」そのとき、今井が笑った。
「ヤマゴボウでしょ。うちの庭に雑草みたいに生えてるよ。」
その場の空気が一瞬、凍った。
「……マジか。」
「マジ。」
今井は肩をすくめて言った。
「栽培できないかな」
佐伯がすぐに食いつく。
「ちょうど育英会の畑、今年から使えるところがある。試してみてもいいかもしれない」
荒井が手帳を開きながら言った。

堀江はその光景を見つめながら、心の中で小さな灯がともるのを感じていた。山に生える雑草のような一株が、町の未来を支える糸になるかもしれない――そんな直感だった。

「蕎麦のつなぎ、町のつなぎ」──自然も、人も、町も。そこにある意志をつなぐ。

「やってみよう。」
そう言ったのが誰かは今となってはわからない。
こうして始まった「オヤマボクチ栽培実験」は、のちに“小栗山物件”へとつながる、最初の小さな冒険だった。山の斜面に掘った浅い畝に、芽吹いたばかりの若葉が並ぶ。
土の匂いが濃く、風が頬にやさしい。荒井は手袋を外し、指先で小さな芽をそっと押さえた。
「こいつら、強いよ。」
そう言って笑うその顔は、まだ雪の残る春空のように清々しかった。畑に植えたオヤマボクチの苗は、気まぐれな山風に吹かれながら、しっかりと根を下ろしていた。土は重く、ぬかるみ、時折春の名残の冷気が地表を冷やした。それでも芽は負けなかった。葉の裏に小さな銀色の毛を宿し、太陽を待つように空を見上げていた。

堀江はその光景を見つめながら、思った。
――この町の再生も、きっと同じだ。
ゆっくりでも、確実に根を張る。誰かが見守り、誰かが水をやり、風の中で倒れそうになっても、また立ち上がる。

「この草が、蕎麦になるのか……」
山口育英奨学会 畑佐伯がつぶやく。
「いや、蕎麦の“命をつなぐ”んだ」
荒井が応えた。
「つなぐ、か。」堀江はその言葉を反芻するように呟いた。

町と町を、
世代と世代を、
人と土地を――。

その“つなぎ”になるものを、ずっと探していた気がした。

「本物の匂い」──“土臭さ”を誇りに変える、町の未来のデザイン。

ある夕方、キリサワベースのウッドデッキに、ミラデのメンバーたちが集まっていた。山の端に夕日が沈みかけ、木々の影が長く伸びる。カップから立ちのぼる湯気が、春の冷たい空気に溶けていく。
テーブルの上にはノートパソコンとコーヒーカップ、そしてびっしりと書き込まれたホワイトボードが立てかけられていた。赤いマーカーで囲まれた言葉がひときわ目を引く。

「――蕎麦料亭旅館、ね。」

青柳がホワイトボードを見つめながらつぶやいた。その口元には、少し皮肉にも見える笑みが浮かんでいる。「おもしろいじゃないか。」建築家の目が光った。「この前の下見で思ったよ。あの小栗山の家には、“土臭さ”が抜群に似合う。」
堀江は頷いた。
「土臭さ、か。まさにそれだな。都会では絶対に真似できない“本物の匂い”がある。」
パズルのピースが一つひとつはまり込んでいくように、アイデアが現実の輪郭を持ち始める。
物件、コンセプト、ブランディング、そして素材――それぞれが勝手に芽を出し、One Oguni構想という幹が、それらをひとつに束ねていった。

ホワイトボードには計画の概要が整然と並んでいる。
小国の山々に自生するオヤマボクチを“つなぎ”に使った十割蕎麦を中心に据えた料亭旅館。季節の山菜と野菜、棚田の雪解け水で育った米。小国でしか味わえないものだけを集めた料理。
「食べものだけじゃない。」
堀江が言った。
「宿も、“物語”にしよう。二階の蚕部屋をそのまま活かして、かつての暮らしを体験できるようにする。古道具を再利用して、時間の流れを感じる空間に。」
青柳はその場でスケッチブックを開いた。鉛筆の音が、静かな夕暮れに響く。
「母屋の梁はそのまま生かす。あれはいい骨格だ。古いけど、しっかりしてる。あれを照明で浮かび上がらせれば、まるで記憶そのものが天井を支えてるみたいに見える。」
「宿泊は一日一組限定にしよう。」
佐伯が言った。
「量じゃなくて、質で勝負だ。小国に来る意味を感じてもらうために。」
堀江がホワイトボードに書き加える。《一日一組限定・リアリティ特化宿泊体験》赤いペンが走るたびに、計画の鼓動が速くなる。
「それに、運営には移住者を入れよう。」
堀江の声は落ち着いていたが、その奥に確かな熱があった。
「彼らに“住み込みで働ける場”を提供する。ここで経験を積み、最終的には自分の店として独立してもらう。」
「雇用と移住、両方を同時に解決するってわけか。」
荒井が頷く。
「地域おこし協力隊の制度を活用できるな。まさに“制度の本来の形”だ。」
「そうだ。」
堀江が微笑む。
「僕らが求めているのは、“人を使う地域づくり”じゃなく、“人が根づく地域づくり”なんだ。」
その言葉に、場の空気が変わった。誰もが無言のまま、ホワイトボードに書かれた赤い文字を見つめていた。
青柳が静かに言った。
「この建物は、町のランドマークになる。」
「空き家を、観光地にするってこと?」
佐伯が訊いた。
「いや、違う。」
堀江が答える。
「“観光地のように輝く日常”をつくるんだ。住む人の誇りが町を変える。これが、その第一歩になる。」

ウッドデッキに夜の気配が降りてくる。木々の間から、ゆっくりと蛙の声が響きはじめた。堀江は立ち上がり、ホワイトボードの赤い囲みを指でなぞった。
「この家から始めよう。」
静寂の中で、誰かがコーヒーを啜る音がした。遠く、川のせせらぎが聞こえる。その音がまるで未来の拍動のように、彼らの胸に響いていた。

この夜、小栗山の家は「計画」から「使命」へと変わった。そしてその使命は、次の季節――実際の改修工事と試運営のはじまりへと、確実に進んでいく。

「理想だけでは続かない」──お金だけでも続かない、とはいえ・・・

夏の終わり、キリサワベースの灯りは遅くまで消えなかった。窓の外では虫の声がかすかに響き、山の風が稲の匂いを運んでくる。ノートパソコンの画面を操作するたび、淡い光がメンバーの顔をやわらかく照らしていた。「お金が足りない。」
堀江の低い声が、静寂を破った。誰もすぐには答えなかった。今やるべきことは山ほどある。だが、ビジネスとして成り立たなければ、理想も続かない。
ボランティアで走ってきたミラデの活動とは違う。
今度は“会社”として、現実の数字と向き合わなければならなかった。
「けど、俺たちの目的は儲けることじゃない。」
佐伯がコーヒーカップを傾けながら言った。
「そう。稼ぐことは、続けるための手段にすぎない。」
荒井が頷き、さらにこう続ける。
「とはいえ資金は必要だ。」
沈黙のあと、関口が言った。
「そうだ。クラファンやろう。」
|その瞬間、部屋の空気が少しだけ動いた。

それは突拍子もないようで、妙にしっくりくる思い付きだった。
「問題は、どうやってこの想いを伝えるか、だね。」
白石がぽつりとつぶやいた。

「想いをどう伝えるか」──“支援”ではなく“共感”を生む仕組みへ。
森と暮らす株式会社が何を目指してるか――それを、ストーリーとして届けよう。」
堀江の声に、全員が顔を上げる。
「この第一号“小栗山物件”は、いわば物語の“第一話”。これから続く空き家再生のプロジェクトを、章立てて見せるんだ。」
「じゃ、十二話構成にしてドラマ化したりしてな。」
佐伯の冗談に、場がふっと笑いに包まれた。
「それ、意外と現実味あるかもな。」
荒井が笑う。だが、すぐに真剣な空気が戻る。
「全体の構想としては悪くない。でも本当に大事なのは――お金を出してくれる人たちに、何を返せるかだ。」
荒井が言った。
「リターンか……」
堀江がつぶやいた。
「物で返すのも悪くない。でも、俺たちが本当に伝えたいのは“物”じゃない。」
白石が顔を上げる。
「“わくわくドキドキの未来”――私たちがミラデを立ち上げたときに掲げた言葉。それこそが、感じてもらうべきリターンなんじゃない?」

静かな熱が、再びテーブルを満たしていく。
「つまり、関わること自体が価値になる。」
「いや、それだけじゃない。」
堀江が続けた。
「このプロジェクトに参加してくれた一人ひとりが、自分を“物語の主役”として感じられる。――それが、僕たちの理想だ。」

外では風が稲穂をなで、虫の声が絶え間なく続いていた。
山あいの夜は早く、世界がゆっくりと秋の静けさに包まれていく。
堀江は手帳を開きながら、言葉を選ぶように話し始めた。
「この考え方は、人によっては何の価値もないかもしれない。リターンとしては“ケチ”だと思われるかもしれない。でもさ――このプロジェクトの本当の価値は、行きづまりかけた未来に変化を起こすことなんだ。その当事者になること。みんなでつくりあげた未来こそが、本当の意味でのリターンなんだと思う。」

しばらくの沈黙ののち、佐伯がうなずいた。
「いいな、それ。」
「うん。そういうことなのかもね。」
白石が微笑む。
堀江は小さく息を吐いた。
「だから、将来の仲間たちに、僕らができることを――つづろう。」

その夜、誰も“終わり”を告げなかった。泣き続ける虫の声の中で、何か新しい物語の始まりだけが、確かにそこにあった。ひんやりとした山の空気がおりてくる頃、テーブルの上には一枚の紙が広げられていた。
そこには、手書きで八つの枠が描かれている。
「リターン」と書かれた見出しの下に、誰かの字でぽつぽつとアイデアが書き込まれていく。

「価値は、心の中にある」──感じてもらう未来、それが僕らの“お返し”。

プランA「まずは子どもだよな。」堀江が言った。「未来をつくるのは彼らなんだから。」その言葉に、全員の手が止まった。

“お小遣いで投資できる子どもプラン”
――その文字が書き込まれる。
子どもたちが、家族と一緒にやって来て、一日店長や従業員を体験する。ごっこではなく、本物の仕事を、笑いながら覚える時間だ。夕食はスタッフと同じまかない。
「給料は出ないけど、宿泊は提供しよう。」
「付き添いの大人は実費だな。」
「でも、普通なら十四万かかる体験を五万でできるって、最高に贅沢じゃないか。」
白石が笑うと、蛙の合唱に乗ってやわらかい空気が流れた。

プランB
「遠くにいる人にも、何か届けたいね。」関口が言う。「手紙がいい。メールじゃなくて、ちゃんと紙で。」
“サンクスレターと進捗配信”
――心のこもった一通を送り、同時にYouTubeの限定チャンネルで裏話を配信する。建設現場の笑いも、壁塗りの失敗も、みんな物語の一部になる。
「名前は、ホームページに永遠に残そう。」
堀江がペンを走らせる。
「支援者っていうより、共作者だ。」

プランC
「だったら、“物語”も届けよう。」佐伯が静かに言う。
“第一話 完全版”。
このクラウドファンディング自体を物語として書く。
小栗山物件の誕生から完成までを描いた一冊。
十二話構成でつづく“おぐにの再生記”の、はじまりの章。
「これ、続きも書くんだろ?」
「もちろん。次の物件でもやるよ」堀江は笑った。

プランDテーブルの端に置かれた湯呑みの湯気が、月明かりに透けて揺れた。
「手に取ってわかるものもほしいね。」
白石が言った。
“おぐにの玉手箱”。五つの集落、それぞれの水で育った山の米。
「日照も水も違う。だから、味も違うんだ。」
関口が熱を帯びる。
ペットボトルに詰め、キャップには小国和紙を使う。
「そうだ、それを触るだけで“この町”を感じられるように。」
「贈り物としても美しいな。」

プランE・F
「現場を体験してもらうのもいい。」荒井が言う。“一日店長・従業員体験”。(プランE)
地方で働くということを、肌で感じてもらう。
「観光でもボランティアでもない、仕事としての田舎。」
「お、それいいね。」佐伯がメモを取りながら笑う。
「宿泊付きプラン(プランF)も加えよう。夜は囲炉裏を囲んで語り合う。」
「“一泊・夕食付き五万円”――よし、これで行こう。」

プランG
「あと一つ。」静かに口を開いたのは建築家の青柳だった。「建築を見せるツアーを作ろう。」
“プレオープンツアー”。
「一般公開前に、一組限定で案内する。僕が全部解説する。」
「ガイド付き建築探訪か。」堀江が笑う。
「裏話も含めてだ。」青柳の目がわずかに光る。
「きっと、設計図より深く伝わるよ。」

プランH
最後に堀江が言った。「この町をまるごと案内するツアーをやりたい。」“会社代表と巡る小国ツアー”。
三人の社長が案内人となり、小国の隅々を巡る。
歴史、文化、自然――そして変わりつつある小国の未来を見せる。
「宿泊と食事込み、二人一組。究極の小国体験だな。」
「いい。夢がある。」白石が笑う。

===
八つのプランが出揃った。
紙の上には、それぞれの小さな物語が並んでいる。
子ども、家族、旅人、職人、そして未来の住民――
誰もがこの町のどこかに自分の居場所を見つけられる。

堀江は深く息を吸い込み、静かに言った。
「これこそが僕らのリターンだ。」

その言葉に、誰も続けなかった。
ただ、全員が静かにうなずいた。

外では、雪がやんでいた。
夜空に小さな星が滲み、月の輪郭が戻ってくる。
未来という名の物語が、いま、確かに歩き始めていた。

完結編につづく

後書き ― 未来をともに描くあなたへ

ここまでお読みくださったあなたに、心から感謝を申し上げます。
この物語のどこかに、あなたの心が少しでも動いたとしたら、
それだけで私たちの挑戦は、すでに小さな一歩を進めたことになります。
私たちが描こうとしているのは、
「地方再生」や「空き家活用」といった一過性のテーマではありません。
もっと根の深い、“人がどうすれば幸福に生きてゆけるか”という問いです。
都市でもなく、過疎でもない。
自然と共にありながら、自立して暮らす。
その在り方を、もう一度自分たちの手で設計し直したい。
この小国の山あいで始まった試みは、
きっとあなたの暮らしとも、どこかでつながっているはずです。
なぜなら、これは次の世代に何を残せるかという、
私たちすべてに共通する物語だからです。
もし、この挑戦に共感していただけたなら――
どうか、この物語の“読者”としてだけではなく、
“共に未来を紡ぐ仲間”としても加わっていただきたいのです。
あなたの参加は、ただの支援ではありません。
それは、「変わりゆく時代においても、人は希望をつくり出せる」という
証そのものになります。
私たちは、あなたと共に、この地に、そして日本のどこかに――
“わくわくドキドキする未来”を現実にしていきます。
ぜひ、私たちのクラウドファンディングにご参加ください。
そして、あなた自身の、未来への“意志”を、ここに託して頂けたならと思います。

心より、感謝を込めて。
おぐに未来デザイン研究所(MiRADe)
森と暮らす株式会社 一同より


スケジュールについて

2025年8月中旬 株式会社設立
2025年9月中旬 物件契約完了
2025年10月 クラウドファンディング準備
2026年2月上旬 クラウドファンディング開始
2026年4月下旬 クラウドファンディング終了
2026年5月中旬 リターン 一部 発送
2026年5月中旬 工事開始
2026年7月中旬 プレオープン
2026年8月中旬 店舗オープン リターンイベント開始

ーーー振り返りーーー

雪深い山里に、もう一度あたたかな灯りをともす。
――空き家から生まれ変わる「蕎麦料亭旅館・縁和(ENTOWA)」プロジェクト。
長岡市小国町小栗山。
雪解け水が清らかに流れ、森に守られたこの小さな集落には、かつて家族の笑い声が響き、暮らしの営みが続いてきた歴史があります。しかし時が流れ、灯りの消えた空き家が増えつつあるのも現実です。

その一軒一軒には、家族の思い出、土地の記憶、そして子どもの頃に訪れた“おばあちゃんの家”のような郷愁が息づいています。

「壊すのではなく、この物語を未来につなぎたい」
――それが私たち森と暮らす株式会社の想いです。

最初に取り組むのは、280年の系譜を持つ一軒の家の再生。昭和36年に新築されたこの家を、“最上級の田舎体験”を味わう蕎麦料亭旅館・縁和として甦らせます。

小国の蕎麦は、希少植物オヤマボクチと布海苔を“つなぎ”に使う、地域独自の文化が息づく特別なもの。縁和ではそのボクチを自ら畑で育て、畑や裏山の散策、収穫、蕎麦打ち体験など、家全体・土地全体を“田舎のアトラクション”として楽しめるように設計します。

料理だけではない。

ここでお客様が求めるのは、郷愁、やすらぎ、癒し――「時間の味(滋)」です。

地域の人、移住者、若者が協働し、“つなぐ”をテーマに、食・宿・体験を通して小国の魅力を未来へと手渡す場所。それが縁和であり、小国の新しい原点となる再生拠点です。

この挑戦を、地域の外からも一緒に支えてほしい。

今回、改修費用の一部をクラウドファンディングで募らせていただきます。支援者の皆さまには、ボクチ蕎麦や宿泊体験、オンラインでも物語に参加できる特別なリターンをご用意しました。どうか、あなたの手でこの家に再び灯りをともしてください。また誰かが訪れ、笑い声がこぼれる日を一緒に迎えられたら幸いです。――「森と暮らす」最初の物語は、ここから静かに始まります。

縁和(ENTOWA)資金計画(概算)

1. 必要資金 総額(概算)

合計: 28,500,000円(約2,850万円)

2. 必要資金の内訳と使途

① 建物改修費(母屋)
約 12,000,000円(1,200万円)

内容

金額(概算)

内装改修(和室補修・土壁補修・床補修)

3,500,000

断熱・雨漏り・建具補強

2,000,000

水回り整備(簡易キッチン・浴室・トイレ)

3,500,000

電気・照明工事(LED/配線改修)

1,000,000

外構整備(玄関・アプローチ)

1,000,000

消防設備・安全対策

1,000,000

※贅沢なリノベではなく、「昭和の質感を残す最低限の再生」が前提。

② 設備・什器備品
約 3,000,000円(300万円)

内容

金額

調理器具(コース料理用)

800,000

蕎麦打ち設備(こね鉢・麺台・麺棒・包丁)

400,000

冷蔵・冷凍設備

600,000

宿泊用家具(寝具・机・チェア)

600,000

昭和インテリア・照明・アンティーク

300,000

食器・カトラリー

300,000

③ 農地・アクティビティ設備費
約 2,500,000円(250万円)

内容

金額

ボクチ栽培設備(農具・整地・苗)

800,000

畑の整備(区画整備・土作り)

600,000

裏山の散策路整備

500,000

収穫体験用設備

300,000

外テーブル・野外ベンチ

300,000

④ 農作業小屋改修(カフェ活用)
約 2,000,000円(200万円)

内容

金額

簡易リノベ(内装・床・壁)

700,000

電気・照明

500,000

テーブル・椅子など什器

400,000

ミニキッチン・コーヒー設備

400,000

⑤ サイン・デザイン・ブランディング関連
約 2,000,000円(200万円)

内容

金額

ロゴ開発・ブランドブック

300,000

Webサイト制作

1,200,000

パンフ・名刺・看板

300,000

写真・映像制作(必要最低限)

200,000

⑥ 開業準備・運転資金(3ヶ月分)
約 6,000,000円(600万円)

内容

金額

スタッフ人件費(地域雇用)

1,650,000

食材仕入れ

900,000

光熱費

300,000

広告・PR費

1.250,000

保険・登録・許可関連

400,000

初期運転資金(予備)

1,500,000

⑦ その他雑費(予備費)
約 1,000,000円(100万円)予期せぬ追加工事・備品購入などに備える。

3. 資金計画

区分

金額

割合

自己資金

5,000,000円

17.5%

銀行融資(小規模事業・信用保証協会)

13,500,000円

47.4%

クラウドファンディング

6,000,000円

21.1%

投資家・私募

4,000,000円

14.0%

※クラウドファンディングは「リノベ費用の一部」として(600万円を想定)

4. 事業収支の期待値(概算)
■ 1日の売上(満稼働した場合)
昼 12,000円 × 2組 × 6名 × 2回 = 144,000円
夜(宿泊) = 70,000円× 1組 × 2名 × 1回 = 140,000円
→ 最大 284,000円/日
■ 年間売上(控えめ稼働率:昼30%/夜30%)
約 2,000〜2,500万円/年
→ 初期投資の回収期間: 約3〜4年

<資料リンク>
はじめに
ミラデとモリクラ
空き家活用プロジェクト
サブスク会員制度
損益シミュレーション
小栗山物件「縁和」(ENTOWA)ブランドコンセプトシート
小栗山物件「縁和」広告戦略
小栗山物件事業内容

支援金の使い道

集まった支援金は以下に使用する予定です。

  • 設備費

  • 広報/宣伝費

  • リターン仕入れ費

※目標金額を超えた場合はプロジェクトの運営費に充てさせていただきます。

支援に関するよくある質問

ヘルプページを見る

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最新の活動報告

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  • 【活動報告|雪と、私たちと、縁和(仮)】1月の終わりから、降るわ降るわの雪、雪、雪。天気予報はもはやエンタメではなく、サバイバル情報です。何度か物件へ向かいましたが、やっているのは“雪かき”ではありません。正確には“雪掘り”。そう、発掘作業です。ほぼ遺跡。4〜5人のメンバーで、黙々と、時に笑いながら、時に無言になりながら(笑)、未来の宿を掘り起こしています。今はまだ雪に包まれているこの場所も、オープンすればこまめな除雪が必須。対策を怠ると――家に入れません。冗談ではなく、本当に。でも、この雪があるからこそ見られる景色がある。この雪と付き合えるからこそ、生まれる物語がある。雪国のプロジェクトは、まず“扉を開けるところ”から始まります。今日も一歩ずつ、未来を掘っています。引き続き、応援よろしくお願いいたします。動画はこちら(現場のリアル、ぜひご覧ください)  もっと見る

コメント

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  1. 2026/02/22 03:21

    わあ、本当に素晴らしいプロジェクトですね!率直に申し上げて、あなたのアイデアには強く惹かれましたし、大きな可能性を感じています。ぜひ、もっと詳しくお話を伺いたいです。 集められた資金は、実現に向けた重要な段階に充てられる予定とのことですが、このプロジェクトが完全に実現した場合、人々の生活にどのような変化をもたらすとお考えですか。 ぜひ詳細についてお話しできる機会を楽しみにしております。プロフィールに記載しているメールアドレス、またはダイレクトメッセージでご連絡いただけましたら幸いです。もし追加のご支援が必要でしたら、資金面でお力になれる可能性もございます。


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