
活動報告 Vol.18
「変数の広さが、人を救っていた。」
医療の“変数”について考えていると、
どうしても思い出してしまう先生方がいます。
関東労災病院の
岡﨑先生、眞田先生、本田先生。
義肢装具士としてまだ未熟だった頃、
現場で迷いながら立っていた私を、
先生方はいつも静かに支えてくださいました。
印象的だったのは、
技術や判断が優れているだけではなかったことです。
どんな若手も。
どんなスタッフも。
どんな状況も、どんな感情も。
丸ごと受け止めてしまう「変数の広さ」。
患者さんの動き。
視線。
しぐさのわずかな変化。
患部のごく小さな反応。
言葉のトーンの揺れ。
その奥にある不安や緊張。
若手の失敗や迷い。
スタッフの葛藤。
ご家族の背景。
その日の現場の空気。
そして “言葉にならない沈黙” までも。
本来“ノイズ”として切り捨てられがちなものを、
先生方は一つも手放さず、
すべての変数を抱えたまま判断していた。
その姿勢に触れたとき、私は思いました。
「医療とは、“見えない変数”と真剣に向き合う営みなんだ」と。
そして、もう一つ気づいたことがあります。
変数の広い先生ほど、声をかけられなくなる。
器が大きく、
背負っているものが多く、
誰よりも現場を守っているのに—
周りは遠慮し、
相談すらできなくなってしまう。
医療者の孤立は、
能力や性格の問題ではなく、
変数を背負い過ぎる “優しさの副作用”
なのかもしれません。
この経験から、私は確信しました。
医療は“正論だけでは動かない”。
医療が動くのは、
変数の広さ × 現場の解像度 × 信頼。
だからこそ、
私は就職前後の“空白地帯”を埋める取り組みを続けています。
あのとき先生方から受け取った
「変数の広さ」という背中を、
少しでも形にして返したい。
医療は、人間と向き合う産業。
だからこそ、この“見えない変数”を
これからも現場のみなさんと一緒に
考えていけたら嬉しく思います。



