活動報告 vol.21「義肢装具士の“思い”を、構造に届ける。」義肢装具士の方々と話していると、ひとつの共通した思いが浮かび上がってきます。それは、とても静かで、しかし揺るぎない願いです。「患者さんに、ちゃんと適合調整を届けたい」「もっと歩けるように、もっと生活しやすくしてあげたい」「どんな地域に住んでいても、必要な義足が届く社会であってほしい」これは誰か一人の意見ではなく、全国の現場に共通する“核”のような思いだと感じています。しかし、その思いを妨げる「構造」が存在しますあまり知られていませんが、義肢装具士の仕事は「医療」ではなく、障害福祉サービス(補装具費)の予算に位置づけられています。その結果、・医療・介護の補正予算が議論されても、補装具は対象外・適合調整が医療費削減や就労支援に寄与しても、制度上は評価されない・「制作したら終わり」という設計のまま、数十年が経過という見えにくい歪みが蓄積してきました。義足・義手は「作って終わり」ではありませんとくに義足・義手は、納品後も数年単位の継続的な適合調整が必要です。しかし現行制度では、・適合調整に対価がつかない・時間をかけるほど赤字になる・小規模事業所(業界の8〜9割)から先に疲弊するという構造があります。「装具の利益で義足を支える」時代が終わりつつある義肢装具会社の収益の大半は、実は装具です。かつては、装具の利益で義足・義手の長期フォローを補ってきました。しかし近年は、・樹脂・金属など原材料の世界的高騰・医療費抑制による告示価格の据え置きと、装具代金の下落・若手不足による人件費上昇により、装具の利益で義足を支えることが難しい時代に入りました。その結果、「義足を扱えない」「継続フォローができない」という事業所が、静かに増えています。地域によっては、義足を諦める患者さんもいます。これは、私の原点そのものです。現場の声は、制度まで届いていない誰かが悪いわけではありません。ただ単に、「声を届けるための回路がない」それだけです。・企業の声は届かない・若手の肌感覚は反映されない・全国のデータが散らばり、俯瞰できないこの構造的な空白が、義肢装具士の未来を静かに脅かしています。厚生労働省に届けるべき論点は、すでに明確ですこれは批判ではありません。設計思想をアップデートするための提案です。① 適合調整を評価する「回路」の不足補装具が障害福祉に位置づけられていること自体が問題なのではありません。ただ、医療・介護・就労支援とのつながりが見えにくく、適合調整の価値を定量的に示す仕組みが設計されていない。② 適合調整の価値証明適合調整が・医療費削減・介護負担軽減・就労継続に寄与していることを、データで可視化する必要があります。③ 制度の持続可能性の危機若手不足は企業努力の問題ではありません。告示価格 × 労働構造 × 原価高騰という三重苦が原因です。④ 現場の声を届ける回路の新設現場・学校・若手の声を、政策決定のテーブルに届ける仕組みが必要です。では、ジョブハッピーにできることは何か私は義肢装具士の「翻訳者」として、次の役割を果たしたいと考えています。・全国の求人票・離職率・働き方データを可視化し、 行政にも医療にもない「産業の地図」をつくる・個人の意見ではなく、全国傾向として政策へ翻訳する・「思い」を、制度の言語(データ・構造)へ変換する・若手が続けられる職業構造をつくる (定着支援・キャリア支援・セーフティネット)思いが正しいなら、構造は必ず変わる義肢装具士は、単なる技術職ではありません。患者さんの人生に寄り添い、一歩一歩を支える専門職です。その思いが制度に正しく届き、次の世代が胸を張って選べる職業になるように。私はこれからも、小さなデータを積み重ね、現場の声を構造へ翻訳し、静かに、しかし確実に届け続けます。読んでくださり、ありがとうございました。武内佑介ジョブハッピー/義肢装具士




