
【毎日更新】第17回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』
「そしたらさ、なんかこっち見てるやつがいるんだよ、何度も何度も、チラチラって。あんた、あたしが気付いてないと思ってたのね。まさか、だよ。あたしはあの景色のプロだもん。全部見えてたよ」
「そ、それは……」
先生に怒られるようなバツの悪い気分で、俺は俯いた。
「あたし一人で暇だから、そういうの、楽しかったなあ。あのビルにはたくさんの人がいたけど、そう、レストランじゃなくて、会社とかもいっぱい入ってたし、たくさんの人がいたけど、でも、あたしのことに気づく人はほとんどいなかった。もしいても、ちょっと見て、それでおしまい。あんたくらいのもんなの、何度も何度もこっちを見たりするのはさ。だから、土曜日になると、あ、あいつ今日は来るかしらって、楽しみにしてた。いつも六時に予約してたでしょう。別に直接顔を合わせてるわけじゃないのに、なんか友達が会いに来てくれたみたいでさ」
俺は顔を上げた。彼女は少しだけ寂しそうに、笑っていた。
「なんで……一人なの」
俺は聞いた。
「まあ、いろいろあるんだよ。あんたみたいに、幸せな家庭ばっかじゃないってこと。でも、私だってそんなに不幸なわけじゃない。一緒には住めないけど、お父さんもお母さんもいるし、お金とかもちゃんともらってるし。私の知っている子で、お父さんとお母さん死んじゃった子とか、家にお金がなくてバイトしてる子とかもいるんだよ。そういう子たちに比べたら、私はずっと幸せだよ。あの部屋もね、狭いけど居心地がいいし」
彼女はそれまでより早口で言った。その早口加減が、何となく彼女の強がりを感じさせて、俺は何も言えなかった。
太陽は思った以上のスピードで沈んでいき、俺たちを染めるそのピンク色の光が、どんどん濃く、暗くなっていった。あと五分もせずに、あたりは夜になるだろう。俺は妙な感覚を覚えていた。今すぐに彼女の前から消え去りたいという想いと、いつまでもこうして話していたいという想い。早く暗くなればいいという想いと、いつまでも沈むなという想い。
「ねえ」
彼女が言って、俺は顔を上げた。
「なに?」
今度は俺も、まっすぐ彼女を見て言った。
「お願いがあるんだけどさ」
「お願い?」
そして彼女は、ちょっと恥ずかしそうに、言ったんだ。
「もしよかったら、あたしと友達になってくれないかな」
〜第18回に続く〜
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本日はここまでです。
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それでは、また明日。
児玉ロウ





