
【毎日更新】第25回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』
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そもそもは涼介を止めること、もとい、涼介が何をしようとしているのか確かめることが目的なんだが、そういうこともだんだん分かんなくなってくるっていうか、目の粗いサンドペーパーで心をガリガリとやられてるみたいで、論理的な思考がどんどんできなくなっていくんだよな。
頭にあるのは、あの頃の記憶を元に自分の頭で作り上げた「現在の」彼女の顔、身体。
……おいおい、何を考えてんだよ。
俺と同年代だからもう四十代半ばだぜ、色恋話の登場人物にはちょっとご遠慮いただきたいお年ごろだ。
だいたい、仮にあの部屋にまだ彼女が住んでいたとして、そして仮にいま部屋の中にいたとして、それがなんだっていうんだ?
冷静になれよ。三十年も前の話なんだぜ?
そもそも俺のことなんて覚えているわけがねえじゃねえか。
だいたい、俺より先に涼介の方が顔を合わせる可能性だってある。いや、あいつの破壊的な性格から言って、その可能性はかなり高い。
まあ、面は多少イケてても、青白い顔したロン毛の、もう初夏だってのに革ジャン着込んだ涼介を見て、普通の人間なら「まともな人じゃない」と思うだろう。下手したらビックリしすぎて警察呼んじまうかもな。
そんなことを考えながら階段を上っていったら、やがて、五階に差し掛かる上り階段の途中で、かすかに誰かの話し声が聞こえてきた。
俺は思わず足を止めて、その声に耳を澄ました。
内容は聞こえないが、男の声だ。
直後、「だから違うっつってんだろ!」という、どう考えても涼介による怒号が聞こえてきて、ギョッとした。
違うって、いったい何が違うんだよ。思わず足を踏み出し廊下に出てみると、その突き当たり——つまり赤いカーテンの部屋の前——に、革ジャン着たキリストみたいな風体の涼介が見えた。
ああ、あのバカ……。
扉は少しだけ開けられていて、涼介はまるでしつこい新聞勧誘員みたく、その隙間に身体を差し込むようにして立っている。俺はリアルに、額にを掌底を当てた。あちゃーってときにする、あのポーズさ。そして、一気に走りだした。
「おいコラ涼介、何やってんだ!」
俺が叫ぶと、涼介が後ろ斜め上を見るような舐めた感じで振り返り、まるで外人みてえに肩をすくめる仕草をした。いや、なんだそれ。俺はなんだかすげえムカついてきて、涼介のそのイケ面がぶっ壊れるくらいに殴ってやるって気持ちで駆け寄ったんだけど、そんとき部屋の中から「出てってよ」という、女の、ハスキーボイスが、聞こえたんだよ。
〜第26回に続く〜
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本日はここまでです。
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それでは、また明日。
児玉ロウ



