
【毎日更新】第27回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』
「状況も何もねえよ、せっかく感動の再会ってやつを演出してやってんのに、この女、何か勘違いしてんだ」と涼介。
「勘違いって、なんだよ」
「いや、よく分かんねえけど、本人に直接来させろとか、話は社長に聞けとか、訳のわかんねえこといいやがんだ」
何だとこのチンピラ、訳がわかんねえのはテメエだろうが。アメリカだったら速攻で撃たれて頭はじけ飛んでるぜ。
「ふうん、で、その誤解は解けたわけ?」あくまでマイペースなボン。百円ライターを擦る音が聞こえて、タバコの匂いが漂ってくる。
「いや、まだ」素っ気なく涼介は言った。「でもまあ、何かどうでもよくなってきたな」
な、何だとこの野郎。どうでもよくなってきたってどういうことだ。当て逃げもいいところじゃねえか。
すると、それまで黙っていた彼女が言ったんだ。
「あんたたち、一体何者?」
「だからあんたとこいつが友達なんじゃねえのかってさっきから言ってるじゃねえか」
声を荒げる涼介にボンが、「そんな風に押さえつけてたら顔が見えねえじゃねえか」と冷静に言って、「ああ、それもそうだな」と、その細っこい腕のどこにこんな力がって思うような怪力で俺は襟首を引っ張られ、要するに首元を引っ掴まれた猫みたいな情けねえ体勢で、部屋の中をまっすぐに見ることになったんだ。
とつぜん舞台に引き上げられた俺は、視界の中央を占めていてどうにも無視できない彼女を、モロに見た。
でも、人間の意識っておかしなもんだよな、次の瞬間、まるでエロビデオのモザイクみてえにその姿がボヤけて、代わりにその背景、つまり短い廊下とそこにかかった暖簾、その向こう側に見える赤い座椅子と小ぶりなベッド、そして、そうだ、ここが間違いなくあの部屋なのだと伝える赤いカーテンと、その隙間からかすかに見えている、あのレストラン。
さっきまで自分たちがいた向かい側のビル、同じ五階の窓の中に、イソイソと動いているあのおばちゃんの姿が見えていた。
「ちょっと、あんた……」
一メートルと離れていない所から聞こえた声に、映像を逆再生するように、俺の意識はワンルームマンションの狭い玄関先に引き戻される。
窓の中のおばちゃんが恐ろしいスピードで遠ざかっていき、代わりにそこに現れたのは……四十代にはとても見えねえ、いや、あの中学生だった頃とほとんど変わらねえくらいに見えたんだから、さすがにこれは俺の思い出補正かもしれねえが、とにかくさっきレストランで彼女の話をしてから頭の中で繰り返し想像していた彼女のイメージが、現実の彼女にシールみてえに張り付いてるようだった。
俺はその、眼前に立つ、色白の、ちょっとハーフっぽい女を、見てた。
〜第28回に続く〜
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本日はここまでです。
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それでは、また明日。
児玉ロウ




