
【毎日更新】第28回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』
間違いなかった。
そこに居たのは間違いなく、当時の俺の数少ない友達、ずっとあのレストランからのぞき見てたあの彼女、あの夕焼けの日、臭えドブ川沿いの道路で一度だけ話した、彼女だったんだ。
「ああ……」
俺の口から、情けない溜息が漏れた。情けねえ上にキモい溜息だ。まるでアイドルに恋するオタクみたいな。
だけど彼女は嫌がったりしなかった。
むしろ、それまでの厳しい表情——そりゃそうだ、突然涼介みたいな輩に突撃されたら誰だってこんな顔になる——がみるみる和らいで、皺の浮きかけた、だけど四十代にはとても見えねえ柔らかそうな頬を緩めて、パッと笑ったんだよ。
今度は溜息どころか、一発でイッちまいそうな笑顔だった。
ただ呆然と彼女を見ているだけの俺——ヨダレくらいは出てたかもしれねえ——に、彼女はやがて耐え切れないといった感じでプッと吹き出すと「なあに、それ」と俺の頭を指差した。
「え、何が?」
俺は思わず頭をゴリゴリと撫で回した。
先週床屋で刈ったばかりだから左右の毛もジョリジョリと気持ちがよく、自慢のモヒカン——オレンジ色に染めたトサカ——は滑らかにウェーブし、吹き込んでくる風に揺られている。
俺はこの髪型をこよなく愛しているし、今はこれ以外のスタイルなんて考えられねえ(まあ、実際のとこ三ヶ月前までは腰に届くくらいのロン毛で、同じように「これ以外のスタイルは考えられねえ!」って言い張ってたんだけどな)。
でも、とはいえ、そうだよな。こりゃどう考えても「一般的」なヘアスタイルじゃねえし、驚くのも無理ねえよ。
しかも、彼女の知っている俺ときたら、あの真面目な、暗い、いつも俯いて長い前髪で顔を隠してるようなヘタれたガキなんだ。あれから三十年経ってるったって、俺がこんな髪型してるなんて夢にも思わなかったんだろう。
〜第29回に続く〜
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本日はここまでです。
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それでは、また明日。
児玉ロウ





