
【毎日更新】第29回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』
「ああ、これね、いいだろ」
俺は、よく分かんねえけど照れながら言った。
「いや、別に褒めてねえだろ」相変わらず無慈悲な涼介。
まあ、とにかく俺は完全に、彼女が「あの彼女」だってことを確信していた。三十年の月日なんてなかったことになるくらい、彼女は彼女だったんだよ。
「ずいぶん雰囲気が変わったね。でも、顔はそのまんま」
そう言って彼女はケラケラと笑う。いや、そっちだってそのまんまだよ。でも、よく考えたら彼女の顔を間近で見たのは一回だけだったんだよな。
一度しか見てない彼女の顔。その記憶にこんな自信があるなんて、それくらいあの一回が印象的だったってことだよな。……ところで彼女、いつまで笑ってんだろう。そんなに面白いかな。
「いや、笑い過ぎだろ」俺がツッコむと、「ごめんごめん」と彼女はさらに笑って答える。
「つうか、覚えてんの、俺のこと」勢いに任せて聞いてみた。
いま思や、「顔はそのまんま」なんて言われてるわけだから覚えてるって事なんだけど、いや、俺だってそれは分かってたんだけど、何て言うんだろう、本当に覚えてるのか、あるいは、どれくらい覚えてるのか、俺はなんだか確信が持てなかったんだよ。
俺の方は、ついさっきまで忘れてたとはいえ彼女を「強烈に」思い出していたわけで、その青臭え想いと、彼女の俺についての記憶がどれくらい「つり合って」いるのか、確かめたかったんだよな。
笑い過ぎてなのか、それとも昔を思い出してなのか、彼女は目尻に浮かんだ涙を拭いながら俯いて、「そりゃあね」と言った。
そりゃあね、と来たか。うーん、どうなんだろう。
つうか「そりゃあね」っていうのはつまり「そりゃあ覚えてるよ」て事で、つまりそれってなんて言うか、逆に言えば「忘れられるわけないじゃない」みたいなことじゃねえの?
言葉や態度を自分に都合よく受け取る、ってのは男の特技だよな。俺の中で、彼女にとっての俺は「忘れられるわけがない」くらいに大切な存在だった、ってことになって、俺は自分でもそうと分かるくらいに満面の笑顔になって、「そうか、そうか」なんて言いながら頷いた。
「それは、何つうか、嬉しいな」
俺はすっかり上機嫌になって、そうか、そもそも涼介のバカがいなけりゃこんな嬉しい気持ちにもなれなかったんだなと、仕方ねえ褒めてやるかみてえな気分で、後ろを振り返った。
したら、気持ちの悪い革ジャンのオッサン達が、互いの肩をつつき合いながらクスクス笑ってやがる。うわあ気持ち悪い。てめえら四十代だってのになんだその童貞の中学生みてえな反応。仲間の告白を遠くから見守るみてえな構図じゃねえか。
〜第30回に続く〜
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本日はここまでです。
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それでは、また明日。
児玉ロウ





