
1. 研究背景
近年、医療の高度化と多様な生き方・価値観の尊重が求められる中で、「自分らしい人生の最終段階を どのように迎えるか」というテーマが注目を集めている。こうした背景のもと、自らの将来の医療や ケアに関する希望を事前に考え、信頼する人や医療従事者と共有するプロセスとして、Advance Care Planning(ACP:アドバンス・ケア・プランニング/人生会議)が、国内外でその重要性が指摘されて いる(秋葉, 2024)。従来、ACP は主に高齢者や重篤な疾患を抱える患者を対象に実施するものとして 理解されてきたが、宮下(2017, 2019)や川口ら(2021)などの研究は、「自分らしさ」や「尊厳ある 死」に関する意思決定が年齢を問わず人間にとって根源的なテーマであることを示している。日本で は高齢化が進む中で、ACP の重要性が医療・福祉の現場で広まりつつあるが、一方、若年層にとっては まだなじみが薄く、「ACP は大人や高齢者のもの」というイメージが根強く残っている。実際、高校生 を対象とした質問紙調査でも、「ACP を知らない」「死について話し合う機会がない」という回答が多数 を占めた。人生の選択や価値観に関わる対話は、高校生のような若い世代にとっても意味のあるもの であり、進路選択や生き方を見つめ直す機会にもなり得る。実際、米国では子どものころから死生観 や価値観を話し合う教育が取り入れられており(島薗・竹内,2008)、死を考えることを通じて自分自身 の「生き方」や「わたしらしさ」を主体的に考える力も育まれていることが推察される。



