【第2回】素材の科学。炭染の「吸う力」とビニロンの「放つ力」――はじめに日光商事の川村です。前回は初山社長のルーツと江戸の技法について伺いました。第2回となる今回は、なぜ「炭染」がビジネスの道具を守るツールとして優れているのか。職人の経験が証明するその科学的な相性に迫ります。「炭染」は色ではない。付加される「機能」である。川村(日光商事):初山社長、世の中には多くの「染め」がありますが、初山さんの炭染は、単に布に色をつけるだけではないそうですね。初山(初山染工):ええ。うちは化学染料で下染めをして色を安定させるようなことはしません。天然の炭そのものを繊維に付着させるんです。そうすることで、炭が本来持っている抗菌や消臭、そして調湿といった力が布にそのまま宿るんですよ。川村:「布が炭の機能を纏う」ということですね。初山:その通りです。象徴的なエピソードがあります。以前、100年前の古布を持ち込まれた方がいて、何をやってもカビの臭いが取れないと困っていらした。それを炭で染め直してみたところ、嘘のように臭いが消えたんです。川村:100年越しの課題を炭が解決したと。初山:うちの家族も炭染のタオルを長年使っていますが、何年経ってもカビ臭くなりません。これは机上の計算ではなく、私たちの生活の中で歳月が証明してくれた確かな実感です。「湿気を吸う炭」と「逃がすビニロン」の化学反応川村:今回、その炭染の製品を私たちの「ビニロン」の袋に入れて販売するという企画ですが、初山さんはこの組み合わせをどう見ていますか?初山:実は、これ以上ない組み合わせだと思っています。炭染の商品は空気中の湿気をよく吸います。しかし、炭には遠赤外線効果があるため、密閉された普通の袋だと袋の中で結露(水滴)が溜まってしまうことがあるんです。川村:そこで、通気性と吸湿性に優れたビニロンの出番ですね。初山:そうなんです。ビニロンは湿気を外へ逃がしてくれる。炭が吸い取った余計な湿気を、ビニロンが外へ放り出す。この「呼吸のサイクル」が成立することで、中に収納した大切な衣類や道具を、最適な環境で守ることができるんです。ポリ袋(左)とビニロン(右)の通湿性実験(コップ内のお湯の湯気が通気するか) ビジネスの道具を「守る」ための合理的投資川村:30代、40代のビジネスパーソンにとって、勝負服であるスーツやシャツをどう維持するかは切実な問題です。初山:出張先や移動中、あるいはオフシーズンの保管。炭染とビニロンの組み合わせは、大切な道具のコンディションを整えるための「理にかなった選択」になるはずです。単なる伝統工芸品として飾るのではなく、日常を支えるタフな道具として使い倒してほしいですね。おわりに――炭染は、単なる色付けではなく「機能の付加」であり、それがビニロンと組み合わさることで最高の相乗効果を生む。お互いの強みが完璧に噛み合ったこの「理にかなった選択」を、皆様のクローゼットにお届けできることが非常に楽しみです。次回は、ポーズではない「本物のサステナビリティ」がテーマです。大量生産の時代に背を向け、自然のサイクルと共に歩んできた初山染工の「循環の美学」について詳しく伺います。




