今治・笠松山で始める森づくり
―― このプロジェクトがどんな想いで始まったのか、ぜひご覧ください。
2025年、愛媛県今治市で大規模な山林火災が発生しました。焼損面積は481.6ヘクタールに及び、愛媛県内では過去最大規模となりました。火災は3月23日に発生し、鎮火までに23日間を要しました。
私たちは、この山で森づくりを始めます。
山林火災の影響を受けた、愛媛県今治市・笠松山とその周辺
植えるのは、まず500本です。場所は山の尾根。急峻な斜面に隣接し、重機を入れることはできません。苗木だけでなく、堆肥や水、マルチング用の稲藁などを、人の手で運び込み、植樹を行います。
この500本は、山の再生にとって、ごく一部にすぎません。
けれど、この場所で、どのように人が関わり、どのように自然回復に向き合うのか。その最初の形を、ここにつくろうとしています。
これは、今後10年にわたる山の再生に向けた最初の取り組みです。
第一回目の植樹祭は、2026年4月12日に実施される予定です。<植樹祭の詳細>
この植樹祭は、今治市と公益財団法人 鎮守の森のプロジェクトが共催して進めています。
なぜ、今この山で森づくりをするのか
―― 481.6ヘクタールという現実を前にして
この広さは、市や県による公的な復興事業だけで、すべてを賄うにはあまりにも大きな規模です。そのため現在、この山の再生には、行政による復興に加えて、市民の手による森づくりも求められているという状況があります。
私たちは、その一端を担うかたちで、山の自然回復のプロセスに参加することを選びました。

私たちはこれまで、東日本大震災の津波被災地で、市民の皆さまと共に、津波から命を守る「森の防潮堤」づくりに取り組んできました。
災害の種類は異なりますが、大きな被害のあとに、自然と人がどう関わり直すかを考えるという点で、今回の取り組みも、その延長線上にあります。
近年、日本各地で山林火災が相次いでいます。
今回の火災も、今後、各地で向き合っていくことになる課題の一つとして受け止めています。
津波被災地、宮城県岩沼市で取り組んだ
「森の防潮堤」づくり
かつて街並みがあった海岸線(写真左:提供岩沼市)→ 津波被害を低減する「森の防潮堤」を造設
山林火災と、森の再生をどう考えるか
山林火災のあと、燃えた山林を対象に植生調査を行う中で、樹種によって燃え方に違いがあることが確認されました。針葉樹であるネズミサシは強く燃えていた一方で、常緑広葉樹も被害を受けながら、局所的には延焼を抑えたと考えられる場所も見られました。
過去の地震火災や山林火災に関する調査から、常緑広葉樹は、針葉樹に比べて燃えにくい傾向があることが知られています。※1

しかし、山林火災において、「燃えない木」や「燃えない山」をつくることは、現実的にはきわめて難しいと私たちは考えています。
山林火災の被害の大きさは、火力の強さや地形、下草や落葉・落枝の状況、さらには強風による飛火など、 複数の自然条件が重なって生じます。ひとつの要素だけで、被害を完全に防ぐことはできません。
土壌の状態を確認。地表は焼け焦げている。
焼けた幹の根元から、再び芽吹く広葉樹。
特に広葉樹は、回復の力を持っている。
どんな森を目指すのか
―― 青々とした山を取り戻すために
だからこそ山林火災のあと、森をどう再生するかに、単純な答えはありません。また私たちは、元に戻すことだけを目的にするのではなく、いまの山の状態を見つめながら、この土地に合った森の再生を考えています。
今回植える500本は、そのための最初のきっかけにすぎません。この植樹を起点に、今後10年にわたって植樹を重ね、山そのものが、ゆっくりと再生していくことを目指して、私たちは森づくりを始めます。
森づくりの基本姿勢
―― まず、森を見に行くことから
この森づくりは、まず火災跡と周辺の森を植生調査することから始まりました。 笠松山よりも、海側、そして内陸側。 周辺のいくつもの森を実際に歩き、その土地で生き続けてきた樹種を確かめてきました。
目指すのは、この地域に本来なじんできた森の姿を、丁寧にたどり直し、この土地本来の森へと再生していく道筋をつくることです。
植生調査をする鈴木伸一博士(植生学者)
今回の植栽計画については、日本における潜在自然植生理論※の第一人者であり、「宮脇方式」の森づくりを確立した、宮脇昭博士の弟子である、鈴木伸一博士が技術監修を担いました。
鈴木伸一:地球環境戦略研究機関(IGES) 国際生態学センター センター長/鎮守の森のプロジェクト 技術部会会長
※潜在自然植生理論とは、潜在自然植生とは、ある土地からいっさいの人為的作用を停止したときに考えられる、その時点でその土地が支え得る最も発達した植生のことを指します。(国際生態学センター)
しまなみ街道を望む森も調査
樹種選定について
―― 潜在自然植生理論と、この山の状態に合わせた樹種の考え方
樹種選定の基本は、潜在自然植生理論に基づき、スダジイやアラカシなどの常緑広葉樹が主体です。 今回は、高木層から低木層までの28種類ほどの樹種を植える予定です。ただし、今回の植栽地は、花崗岩が風化した栄養分の乏しい土壌であり、 また山林火災によって、土壌そのものが後退している状態です。

そのため、常緑広葉樹だけでなく、コナラ、アベマキ、クヌギ、ヤマザクラ、ホオノキといった 落葉広葉樹も組み込みます。
これらの樹種は、落葉を通じて土壌の回復を助け、森が再び成立していくための下地を整える役割を担います。現在の土壌条件と回復の段階を考慮した樹種選定です。
なぜ、まず500本なのか
―― 尾根の条件が導いた、正直な数
植える場所は、山の尾根にあたります。平坦に近い部分はわずかで、そのすぐ脇は急斜面です。
しかもこの尾根は、痩せた土地にも強いとされるマツでさえ十分に成長できないほど、厳しい環境にあります。
重機を入れることはできず、苗木や堆肥、水、マルチング用の稲藁など、すべてを人の手で運び込む必要があります。
植樹に必要な苗木以外の資材の総重量は、約2.5トン。もし1人が20kgずつ背負って運ぶとすれば、荷下ろし場所から植樹地まで往復約300メートルの山道を、延べ125往復する計算になります。20名で行っても1人あたり6往復になるのです。
決して簡単な作業ではありません。それでも私たちは、この山の再生をあきらめたくない。しかし、こうした条件の中では、まずは500本が限界です。無理に数を増やすのではなく、この場所で確実に根づくことを優先する判断です。

誰と植えるのか
―― 本気で、この山の再生を願う人たちと
今回の森づくりは、地元・今治の応援団、愛媛県内から集まる応援団、そして、この山の再生を願い、全国から集まる復興ボランティアとともに行います。
立場や背景は異なっても、「この山が再び健やかな姿を取り戻すこと」を願う思いを共有する人たちと、同じ場所で、同じ時間を過ごしながら植えていきます。
また、尾根での作業や、急斜面に隣接する環境を踏まえ、今回の植樹は18歳以上の大人の方を対象としています。安全に配慮しながら、状況を判断し、責任をもって関わっていただくための判断です。
そして、若い力とともに、準備から関わる
―― 地元の大学とつくる、森づくりの土台
今回の植樹に向けて、地元の大学とも連携し、学生ボランティアの参加を募りました。
想像を超える多くの学生の皆さんが手を挙げてくださり、山の再生に関心を寄せてくれていることに、私たちは大きな勇気をいただいています。
現場の安全確保や作業スペースの制約もあり、やむなく募集を途中で締め切らせていただくほどの反響でした。ご協力いただいた大学関係者の皆さま、心より感謝いたします。
植樹当日だけでなく、苗木や堆肥、水、マルチング用の稲藁などを背負い、山に運び込む準備段階から、若い力とともに一歩ずつ進めていきます。
急峻な山の尾根で行う今回の森づくりは、多くの人の手を必要とします。この山の再生に向き合う時間を、次の世代と共有することも、私たちが大切にしたい取り組みの一つです。
ご応募くださった学生の皆さん、本当にありがとうございます。準備ボランティアから、どうぞ一緒によろしくお願いいたします。
背負子に資材を積み、植樹地まで運び込みます。
私たちが大切にしていること
―― 自然回復の「きっかけ」をつくるという考え方
私たちは今回、森を短期間で再生させることを目指しているわけではありません。今回の取り組みは、この山が本来もっていた森の姿へと、何十年、あるいは何百年という時間をかけて再生していくための、最初のきっかけをつくることにあります。
その理由は、今回の森づくりが、樹木の成長だけでなく、火災によって後退した土壌の状態の回復から考えているからです。
笠松山周辺では、約17年前にも山林火災が発生しており、今回の火災は、それを上回る規模と面積の被害となりました。
気候変動による極端な気温上昇、また乾燥化があり、森林の火災リスクは各地で大きくなっていると言われています(AR6)。繰り返される火災によって、土壌の状態は大きく後退しており、本来の森の姿へと自ら更新していくまでには、長い時間が必要になります。
私たちは、その長い回復の時間軸を前提に、でも、なるべく早く自然回復が動き出す条件を、この場所につくっていきたいと考えています。
黒く焼け焦げていた山肌の土は、雨によって流れ出し、徐々に白く露出しています。
斜面には、水の通り道が刻まれている。
限りなく自然に近い森を、できる限り早期に実現する
公益財団法人鎮守の森のプロジェクトでは、地域本来の多様な在来種を用い、樹高30〜50センチメートルほどのポット苗を混植・密植する「宮脇方式」による森づくりを行っています。
この方法により、自然の回復をただ待つのではなく、より短期間で「限りなく自然に近い森」=「鎮守の森」を育てることが可能になります。こうして生まれる森は、多層構造を備えた生態系として、あらゆる自然災害からいのちを守る力を持ちます。
また、地域の生き物にとって命のゆりかごとなり、また、豊かな森は、田畑や海、川へ豊富なミネラルをもたらします。そして、自然の力によって自ら更新し、再生していく持続可能な森でもあります。
植え方の特長/小さな苗 × 密植 → 森が早く育つ
表層崩壊を防ぐ森
自然林は、低木層・亜高木層・高木層が重なり合う多層構造によって成り立ちます。
地上では、密集した葉により、雨粒が地面に直接当たるのを防ぎ、土壌の流出や地面の削れを抑えます。また、水が土壌に浸透しやすくなり、急激な乾燥も防ぎます。
地下では、さまざまな深さに根が張りめぐらされ、絡み合い、自然の土留め効果を発揮します。

こうした常緑広葉樹の森は、過去の地震火災や山林火災に関する調査から、針葉樹に比べて燃えにくい傾向があることが知られています。関東大震災や阪神淡路大震災時には、避難場所の周囲に常緑広葉樹があったかどうかが、多くのいのちを守る境目になりました。
避難所の周りを囲む防火樹林帯のイメージ
関東大震災の大火災から、2万人のいのちを救った防火樹林帯(現在の清澄公園)
植樹祭のご案内
2026年4月12日(日)、愛媛県今治市で『令和7年今治市林野火災復興 〜市民と共に未来へつなぐ森づくり〜』が開催されます。
失われた森を再生し、地域の復興と持続可能なまちづくりにつなげることを目的に、「いのちを守る森」づくりを進めます。
今治市が主催する第一回植樹祭(子ども中心)に続き、本植樹祭は大人を中心に、全国へ広げる取り組みとして開催します。
地域住民・企業・行政・全国の応援団が力を合わせ、土地本来の樹種を植え、自然回復と減災機能を備えた森を育てます。
私たちが行うのは、急峻な尾根に、苗木や堆肥を担ぎ上げ、500本を植えることです。それは小さな規模かもしれません。けれど、この山が再び自ら森へと戻っていくための、最初の条件を整える取り組みだと考え、本気で山と向き合っています。
その一歩を、始めます。ご支援・ご参加を、どうぞよろしくお願いいたします。

皆さまへのお願い
このプロジェクトを成功させるためには、皆さまのご支援が欠かせません。今回のクラウドファンディングを通じて寄せられた支援金は、今治市の植樹祭の苗木代(発芽から3年ほど育てられたものを使用)、堆肥、資材費(稲わら、稲縄、竹杭)、植樹後3年間の草抜きなどの育樹費、そして植樹祭の開催費用などに活用されます。目標額を超えた分は、来年以降の今治市の植樹活動に活用いたします。
当財団は公益財団法人であり、いただいた支援金は寄付金控除の対象となります。お送りする受領書(2000円〜)は、確定申告にご利用いただけます。年間合計寄付金額が2000円を超える場合には、確定申告を行うことで寄付金控除(税制上の優遇措置)の対象となります。「所得控除」か「税額控除」のいずれか有利な方を選択できます。
ご協力いただいた方には、プロジェクトの進捗や成果を定期的に共有し、支援者の皆さまにも活動の一端を感じていただけるよう努めます。
植樹祭主催者の紹介
公益財団法人鎮守の森のプロジェクト: 災害から命を守る森づくりを全国で展開している公益財団法人です。2012年に元首相の細川護熙氏(理事長)と植物生態学者の宮脇昭博士(副理事長、2021年逝去)によって、東日本大震災を契機に設立されました。宮脇方式による植樹活動を推進しており、「潜在自然植生」に基づいた持続可能な森づくりを通じて、自然災害から命を守る取り組みを続けています。これまで、東北の津波被災地や南海トラフ地震に備える「森の防潮堤」を14の自治体と共に造ってきました。
今回の山林火災は、災害の種類は異なりますが、 大きな被害のあとに、 自然と人がどう関わり直すかを考えるという点で、 今回の取り組みも、その延長線上にあります。
近年、日本各地で山林火災が相次いでいます。今回の火災も、今後、各地で向き合っていくことになる課題の一つとして、「潜在自然植生」に基づいた持続可能な森づくりを役立てたいと考えています。
支援金の使い道
今治市における植樹代1本およそ1500円〜(苗木(発芽から3年ほどの苗木を使用)・堆肥・資材費(わら、ロープ、竹杭など))、育樹費(植樹後3年間の草抜きメンテナンス)、植樹祭の開催費用 など。
当財団へは公益財団法人であり、いただいたご寄付は寄付金控除の対象となります。
お送りする受領書(2000円〜)は、確定申告にご利用いただけます。
年間合計支援金額が2000円を超える場合には、確定申告を行うことで 寄付金控除(税制上の優遇措置) の対象となります。「所得控除」か「税額控除」いずれか有利な方を選択できます。
※1 参考文献:田中八百八(1923)大正の大地震及大火と帝都の樹園/日本造園学会の調査委員会1995.6




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