

ローカルベンチャーラボの中で、特に大きな学びになったのが、南相馬・小高と秋田・五城目の事例でした。
南相馬・小高については、ローカルベンチャーラボでメンターとして伴走してくださった和田さんから、震災後の地域でどのように挑戦が生まれ、事業が立ち上がってきたのかを学ばせていただきました。
和田さんから伺った南相馬・小高の実践で印象的だったのは、震災という大きな出来事がありながらも、そこから地域の課題に向き合い、挑戦し続けてきた人たちがいたことです。
特に印象に残っているのは、「100の課題から100のビジネスを生み出す」という考え方です。
地域にある困りごとや違和感を、ただ問題として終わらせるのではなく、事業や挑戦のきっかけに変えていく。
そして、それを一人の力で全部やるのではなく、地域おこし協力隊や移住者、若い挑戦者たちが、それぞれのやりたいことや得意なことを持ち寄りながら、地域の中で新しい仕事や活動をつくっていく。
そこに強い学びがありました。
南相馬・小高の話を聞いて、僕が特に印象に残っているのは、「飲食店をやりたいわけではなかった」という言葉です。
お店をつくること自体が目的ではなく、帰ってくる人や、地域で暮らす人たちの選択肢をつくるために、必要な場や仕事を生み出していた。
つまり、事業は単なる売上づくりではなく、人がその地域で生きていくための選択肢を増やすものでもあるのだと感じました。
震災によって一度バラバラになったコミュニティが、課題を事業に変え、挑戦する人を受け入れ、また新しい人を呼び込んでいく。
実際に南相馬を見た時、僕はとても活発な街だと感じました。
震災があったから終わりではなく、震災があった場所だからこそ、そこから立ち上がり、挑戦を続ける人たちがいて、その挑戦が街の空気を少しずつ変えている。
和田さんがよく話されている「3.5%が変われば社会は変わる」という言葉も、僕の中に強く残っています。

全員を一気に変える必要はない。
でも、地域の中で本気で動く人たちが少しずつ増えていけば、街の空気は変わっていく。
南相馬・小高の実践から、そのことを学ばせてもらいました。
もう一つ、大きな学びになったのが秋田・五城目の事例です。
五城目で印象的だったのは、最初から大きな事業計画を立てて、上からプロジェクトを動かしていたわけではないということでした。
朝市、廃校を活用したコワーキング、古民家の再生、温泉宿、教育、子どもの居場所。
そうした一つひとつの動きは、暮らしの延長線上にあり、誰かの「やってみよう」や「面白そう」から少しずつ形になっていました。
特に印象に残っているのは、遊び場を開くことで仲間が増え、その仲間が結果的に事業の仲間になっていったという話です。
最初から「地域を変えよう」「大きな事業をつくろう」と構えるのではなく、まずは遊びや出会いの場をつくる。
そこに人が集まり、関係性が生まれ、誰かが言い出しっぺになり、別の誰かが乗っかる。
その積み重ねの中から、小さなプロジェクトが立ち上がっていく。
この流れに、僕はとても惹かれました。
ただ、五城目の学びで大切だったのは、「遊びだけで何となくうまくいっている」という話ではなかったことです。
遊びから始まっているように見えて、その裏側には、ちゃんとお金の流れや運営の仕組み、地域の人たちとの関係性、役割分担がありました。
みんなでお金を出し合い、売上を再投資する。
会費で小さくお金を回す。
宿のように事業として収益をつくる。
必要なところでは出資や金融機関との関係も組み立てる。
教育や子どもの居場所のように、すぐにはお金になりにくいけれど、地域の未来に欠かせないものも大切にする。
つまり、五城目で起きていたのは、単なるイベントづくりではなく、関係性を起点に、暮らし・学び・仕事・お金の流れを少しずつ編み直していくような実践でした。
僕が特に学びになったのは、偶発性をただ待つのではなく、偶発性が生まれやすい状態を意図的にデザインしていたことです。
人が出会う余白をつくる。
話しやすい雰囲気をつくる。
遊びながら関係性を育てる。
暮らしの延長線上に、挑戦の入口を置いておく。
小さく始まった動きを、必要に応じて事業や仕組みにしていく。
この考え方は、YOHAKU食堂にもそのままつながっています。
南相馬・小高から学んだのは、地域の課題や違和感を、事業や挑戦の種に変えていくこと。
五城目から学んだのは、遊びや関係性の中から小さなプロジェクトが生まれ、それを暮らしやお金の流れにつなげていくこと。
そしてローカルベンチャーラボで整理されたのは、外から地域に何かを持ち込むのではなく、地域の中にすでにある声や可能性を見えるようにし、それを人や場所や仕組みにつなげていくことでした。
この学びを通じて感じたのは、これからの地域には、行政だけでも、民間事業者だけでも拾いきれない小さな声を受け止め、地域の中で小さな実践につなげていく現場機能が必要だということです。
YOHAKU食堂でやりたいことは、まさにその機能を、田村の現場で実装していくことです。
田村にも、すでにたくさんの声があります。
何かやってみたい。
地域に関わりたい。
でも、どう動けばいいか分からない。
一人では踏み出せない。
誰に相談したらいいか分からない。
自分の小さな違和感やアイデアが、仕事や活動になるとは思えていない。
そうした声が、日常の中で消えていかず、ちゃんと誰かに受け取られ、人や場所とつながり、小さな一歩になっていく。
その流れを、食堂という日常の場所からつくっていきたいと思っています。
だからYOHAKU食堂は、飲食店としての売上も大切にしながら、同時に、地域の人、移住者、関係人口、事業者が自然に交わり、小さなプロジェクトが生まれる入口として育てていきたい場所です。
食堂という日常の場だからこそ、構えずに人が集まり、声が出て、つながり、小さな動きが生まれていく。
その流れを田村でつくっていきたいと思っています。
これは、僕個人がやりたいことを地域に押し込むためのものではありません。
田村の中にすでにある声や可能性を、日常の中で拾い、必要な人や場所につなぎ、小さな実践に変えていくための現場づくりです。
市の中長期的な課題である人口減少、移住定住、関係人口づくり、地域の担い手づくりに対しても、行政だけでは拾いきれない日常の声を、民間の現場から拾い、地域プロジェクトにつなげていくことで貢献できる部分があるのではないかと考えています。
ローカルベンチャーラボで学んだこと。
南相馬・小高の実践をもとに、メンターの和田さんから受け取った視点。
秋田・五城目の事例から学んだ、遊びと関係性からプロジェクトが生まれる流れ。
そして田村で日々感じている現場のリアル。
それらを、学びのままで終わらせず、田村の中で形にしていく。
YOHAKU食堂は、そのための一歩です。
地域の課題や小さな声を、諦めではなく挑戦の種に変えていく。
その実践を、田村の食堂から始めていきます。



