
先週は、YOHAKU食堂の原点について書いてきました。
なぜこの事業をやりたいと思ったのか。なぜ、人が自分の声を取り戻し、小さな挑戦が生まれる場所をつくりたいのか。
その背景には、自分自身のこれまでの経験や、AMT、ローカルベンチャーラボでの学びがありました。
今週はもう少し、なぜ福島で、なぜ田村市でこの事業を始めるのかについて書いていきたいと思います。
僕が田村市に来る大きなきっかけになったのは、一般社団法人Switchとの出会いでした。

Switchは、田村市を「未来と可能性が育まれる地域」にすることを目指し、地域の中にある気づきや課題、ニーズをもとに、人や資源、スキルをかけ合わせながら、新しい価値を生み出そうとしている団体です。

その考え方に、僕は強く惹かれました。
田舎には何もないのではなく、まだ形になっていない可能性がある。
空き家も、自然も、人のつながりも、暮らしの中にある小さな違和感や願いも、見方を変えれば新しい仕事や挑戦の種になる。
その考え方は、僕がずっと持っていた、「人が自分らしく生きられる社会をつくりたい」という想いと重なりました。
だからこそ僕は、田村という場所に惹かれました。
何か完成されたものがあるから来たというより、同じ方向を見ている人たちがいて、ここなら自分の想いを地域の中で形にしていけるかもしれないと感じたからです。
その中でも、久保田さんとの出会いは大きなものでした。
最初から明確な答えがあったわけではありません。
空き家なのか、拠点なのか、場づくりなのか、仕事づくりなのか。自分の中でも言葉になりきっていない想いを、田村の現場に照らし合わせながら、何度も話させてもらいました。
そのたびに、久保田さんはすぐに答えを出すというより、
「それは田村でどうやるのか」
「誰にとって必要なものなのか」
「地域の中でどう接続するか」
という視点を投げかけてくれました。
その時間があったからこそ、僕の中で少しずつ整理されていったことがあります。
最初、僕は空き家の利活用から考えていました。
使われなくなった空き家を活かし、そこに人が集まり、新しい仕事や活動が生まれていく。
そんな形ができないかと思っていました。
でも、田村で時間を過ごし、地域の人たちと話し、自分の想いを何度も言葉にしていく中で、少しずつ気づいていきました。
僕が本当にやりたいのは、空き家を活用することそのものではない。
場所をつくることだけでもない。
人の中にある「やってみたい」が、田舎でもちゃんと形になり、それが生業や小さな仕事として地域の中で循環していく流れをつくりたいのだと。
そのための土台をつくりたいのだと分かってきました。
田村は、すでに完成された成功事例がある場所ではないかもしれません。
でも僕は、そこに可能性を感じています。
まだ決まりきっていないからこそ、余白がある。
これから何かを始められる余地がある。
大都市のように何でも揃っているわけではないけれど、だからこそ、人と人の距離の近さや、空間の余白や、暮らしの中にある小さな声から、新しい動きが生まれる可能性がある。
僕は、田村にその可能性を感じました。
そして、空き家や拠点づくりを考え続けた先に見えてきたのが、YOHAKU食堂でした。
食堂なら、まず人が来る理由があります。
ごはんを食べるために来る。誰かと会うために来る。仕事帰りに少し立ち寄る。一人でも来られる。地域の人も、移住者も、外から来た人も、同じ食卓に座ることができる。
空き家をただ再生するのではなく、そこに人が集まり、会話が生まれ、やってみたいことが少しずつ形になっていく。
その入口として、食堂という形が一番自然なのではないかと思うようになりました。
Switchが大切にしている、地域の中の気づきや課題、ニーズから価値を生み出していくという考え方は、YOHAKU食堂にもつながっています。
誰かの小さな違和感。まだ言葉になっていない願い。地域の中にある困りごと。やってみたいけれど、一人では踏み出せないこと。
そうしたものを、ただの個人のつぶやきで終わらせず、人や場所、資源とつなげていくことで、新しい価値や生業が生まれていく。
僕は、その流れを食堂という日常の場所からつくりたいと思うようになりました。
福島で始める理由は、僕自身が震災をきっかけに、たくさんの人との出会いによって生き方を変えてもらったからです。
あの時、福島で出会った人たちの姿や言葉が、自分の人生を大きく変えてくれました。
だから今度は、自分が福島で、人の人生が少し動き出すきっかけをつくりたいと思っています。
田村で始める理由は、この地域にまだ、声と挑戦がつながる余白があると感じているからです。
そして何より、ここで出会った人たちとの縁があったからです。
一人では、ここまで形にできませんでした。
話を聞いてくれる人がいて、問いを投げてくれる人がいて、時には厳しい視点をくれる人がいた。
その積み重ねの中で、YOHAKU食堂は少しずつ形になってきました。
何もないように見える田舎に、生業をつくる。
地域の中にある気づきや課題、ニーズから、新しい価値を生み出していく。
その考え方に惹かれて田村に来た自分が、今度はYOHAKU食堂を通じて、誰かの小さな「やってみたい」が生まれる場所をつくっていく。
そんな一歩を、福島県田村市から始めたいと思っています。



