
あかちゃんに、芸術は必要なのでしょうか。
言葉を話す前のあかちゃんに、舞台を見せる意味はあるのか。内容を「理解」できないのに、芸術に触れる必要があるのか。
ベイビーシアターの活動をしていると、そんな問いを投げかけられることもあります。
そもそも芸術とは、理解するものなのでしょうか。
音に耳を澄ませること。光や色を目で追うこと。誰かの動きに呼吸を合わせ、思わず身体を動かすこと。
あかちゃんたちは、全身で世界を感じ、受け取り、自分なりの方法で応えています。

今年6月、Bambino! 0才からのパフォーミングアートは、韓国・南楊州市(ナミャンジュ市)で開催された「Baby Culture and Arts Festival」に招聘され、『Kaow Kome〜いのちを育む、おこめの物語〜』を上演しました。
そこで私たちは、あかちゃんと芸術をめぐる、ある大切な考え方に出会いました。
このフェスティバルは、2025年に南楊州市で「乳幼児の文化享受環境づくり条例」が制定されたことをきっかけに誕生しました。

この条例が制定された背景にあるのは、「あかちゃんにも文化芸術に触れる権利がある」という考え方です。
文化芸術を特別なものではなく、人生のはじまりから誰もが享受できるものとして社会に根付かせようとする、とても先進的な取り組みでした。
フェスティバル期間中にはベイビーシアター作品の上演だけでなく、国際フォーラムも開催され、Bambino! からは千代その子が事例発表とパネルディスカッションに参加しました。

私たちがどのような歩みを経て活動を始め、日タイ国際共同制作によるベイビーシアター作品『Kaow Kome』を生み出すに至ったのかを事例紹介として発表し、パネルディスカッションでは、日本では乳幼児と文化芸術がどのような位置づけにあるのか、アーティストとしてはどのようなサポートが得られるのか、パフォーマーに求められるスキルについてなど、多くの質問をいただきました。

そのフォーラムで特に印象に残ったのが、Changwon National UniversityのDong, Pool Ip教授による研究発表でした。
Dong先生は「乳幼児と文化芸術」を語るとき、私たちは無意識のうちに「発達」や「教育」という視点だけで見てしまっているのではないか、と問いかけられました。
あかちゃんは「発達させるべき存在」なのでしょうか。
芸術は「学ぶもの」なのでしょうか。
もちろん、それも一つの側面です。
しかし、本来芸術とは、まず「感じるもの」であり、あかちゃんたちは作品を最も純粋に受け取り、世界と出会っている存在なのではないか。そんなお話でした。
また、「あかちゃんたちの表現は"限られている"」という思い込みにも疑問を投げかけられました。
あかちゃんは、言葉がなくても、まなざしや表情、呼吸、身体の動きやリズムを通して、世界を感じ、自分自身を表現しています。
あかちゃんは「守られるだけの存在」ではなく、自ら世界を探究し、実験し、表現している存在です。そして、芸術を「教えられる存在」ではなく、多様な芸術や文化を楽しみ、体験する権利を持つ存在なのだというDong先生の言葉は、私たちの活動そのものを後押ししてくれるようでした。
韓国でも、日本でも、そしてアジア全体でも、乳幼児のための文化芸術はまだ決して十分とは言えません。
だからこそ南楊州市では、「あかちゃんと文化芸術といえば南楊州市」と世界から認識されるようなまちを目指し、政策レベルで取り組みを進めているとのこと。
その本気度に、私たちは大きな刺激を受けました。
そして同時に、日本でもベイビーシアターをもっと広めていきたいと強く思いました。
今回、南楊州市が政策として「あかちゃんと文化芸術」に取り組む姿を目の当たりにし、この文化を広げていくためには、個々のアーティストの努力だけではなく、自治体や地域、そして国全体で支えていく仕組みが必要なのだということを、あらためて実感しました。その可能性について深く考えさせられる機会にもなりました。

いよいよ7月27日(月)23:59。
クラウドファンディングが終了します。
現在、目標の86%。
既に132名からご支援をいただいています。
ここまで応援してくださった皆さま、本当にありがとうございます。たくさんの方々にご支援いただき、あたたかい言葉もたくさん頂戴し、励まされると同時に身の引き締まる思いでいます。
私たちが目指しているのは、タイ公演を実現することだけではありません。
一人でも多くの方に、「あかちゃんのための舞台芸術(ベイビーシアター)」があることを知っていただくこと。
そして、言葉になる前の感覚を大切にすることが、人が本来持っている感性や、他者とつながる力を育み、分断や孤立が広がる現代社会の課題をやわらげていくこと。
私たちは、その可能性を信じて、このプロジェクトが、そのちいさな一歩になることを願っています。
あと数時間。どうか応援をよろしくお願いいたします。
////////
私たちのプロジェクト、取り組みについては THEATRE for ALL というウェブメディアでも特集していただき、ベイビーシアターの可能性を丁寧に紹介していただきました。こちらもあわせてぜひご覧ください。




