164名の皆さんのご支援を受けて、メンバー全員がタイへ渡航し、BICT Festでの『Kaow Kome』バンコク公演を終えて帰国することができました!
まずは、私たちをバンコクまで送り出してくださった皆さまに、心からお礼を申し上げます。
子どもと家族のための国際舞台芸術祭BICT Fest

BICT Fest(Bangkok International Children’s Theatre Festival)は、タイ・バンコクで2年に一度開催される、子どもと家族のための国際舞台芸術祭です。
あかちゃんから子ども、若者、大人までが楽しめる舞台作品が世界各地から集まり、「子どもたちが質の高い舞台芸術に出会うこと」を大切に、2016年から開催されています。
2026年は10周年を迎えたアニバーサリーイヤー。
9か国から11作品・プログラムが参加し、私たち『Kaow Kome』も、日本・タイの共同作品として、このフェスティバルに招聘されました。
子どもたちを「未来の観客」ではなく、今この瞬間に芸術を楽しむ一人の観客として迎える。
そんな考えを大切にしているフェスティバルです。

そして会場として私たちを受け入れてくださったGoethe-Institut Thailandは、バンコクにあるドイツの文化機関。図書館やホールを備え、映画、音楽、舞台芸術などを通して、国や文化を越えた出会いや交流を生み出している場所です。
全公演満席! さまざまな国・地域の観客

フェスティバル第1週目のプログラムとして、この場所で上演することになった『Kaow Kome』。
国際的なフェスティバルであること、そしてGoethe-Institut Thailandという場所の特性もあって、タイの方々だけでなく、さまざまな国や地域から多くの観客が足を運んでくださいました。
ドレスリハーサル後の反響が大きく、本番は全公演が満席に。さらに今回は、乳幼児を連れたご家族だけでなく、「大人だけでも観たい」という声が予想以上に多く寄せられました。
想定を大きく上回る方々にご来場いただき、うれしい悲鳴ではありましたが、あかちゃん一人ひとりとの距離や関係性を大切にする作品だからこそ、出演者にとっては、なかなかチャレンジングな公演にもなりました。
作品を体験した観客の皆さんからの言葉を少しご紹介します。
バンコクの観客から届いた声
<タイ語のアンケートから抜粋>
“観る前は、「こんなに小さな子どもと舞台作品って、いったいどんなふうになるんだろう?」と思っていました。
でも始まってみると、そこにあったのは、みんながとても楽しそうに過ごしている時間でした。
まだ照明がつく前から、子どもたちは会場の真ん中へハイハイしていきます。
やさしく、かわいらしく、芸術的で、穏やかで、本当に小さな子どもたちに合った空気の中で、一緒に遊んでいくような作品でした。
タイのアーティストと日本のアーティストが、小さな子どもたちのためにつくった作品。
お米の物語と、成長していくことの不思議を描きながら、子どもたちを中心に置いています。
大人は、ただそばにいて見守る。
劇場で私たちが普段しているような「決められた見方」をする必要はありません。
子どもが行きたいなら、行けばいい。やりたいことがあれば、やればいい。ハイハイしたければ、ハイハイする。音を出したければ、音を出す。探検したければ、探検する。
そして大人も、それを一緒に楽しみながら、そっと後ろからついていけばいいのです。”
“大切なのは、その場の雰囲気や、パフォーマンスの中でのコミュニケーションのあり方。
動きはゆっくりとしていて、安心できるものでした。
特に音楽がとても好きでした。自然の音が美しく織り交ぜられ、タイの「雨」にまつわる音楽を日本人のアーティストが演奏していて、親たちは思わず笑顔になりました。
そして何より、子どもたちがとても楽しそうでした。
季節が移り変わっていくような世界を、一緒に冒険していきます。
いろいろな家族が、自分の子だけではなく、ほかの子どもにも目を配っている姿が見えました。知らない人の子どもに、おもちゃを分けてあげる子もいました。
その光景を見ながら、
「一人の子どもを育てるには、本当に社会のみんなの力が必要なんだな」
と思いました。
大人にとっては、少し疲れる時間かもしれません(笑)。子どもたち一人ひとりが、自分の気持ちや身体に従って、あちこちへ動いていくから。
でも、子どもたちにとっては、とても自然で自由な時間なのだと思います。
とても心が満たされました。
こうした活動が、これからもっともっと発展していってほしいです。今日は本当に感動しました。
すべてのスタッフの皆さんにエールを送ります。これからも、ぜひ続けてください。”
“BICT Festで、とても心が満たされる時間を過ごしました。
この作品には、観客が自由に観察できる「余白」があるところが好きです。だからこそ、いろいろな美しい瞬間を見ることができました。
そこには、安心する気持ち、自信、怖さ、楽しさ、わくわくする気持ち。さまざまな感情がありました。
ある瞬間、子どもが自分の「セーフゾーン」から抜け出して、知らない友だちのところへ行って遊び始める。
ある瞬間には、子どもが自分からパフォーマンスの中へ入り、パフォーマーと一緒に身体を動かしている。
じっと座ったまま、こっそり眺めている子もいる。周りを一生懸命観察している子もいる。
ある子が立ち止まって、自分が遊んでいたものを、知り合ったばかりの友だちに譲る。ある子は、知らない家族のそばに座っている。
音楽が鳴り終わると、子どもたちは楽しそうに駆けていく。
すべてが、同じ時間の中で起こっている。
トンボのようにたくさんの目があったなら、この素晴らしい瞬間をすべて見て、全部とっておきたいと思うほどでした。

そして時々、「IMAGINE」という歌を思い出しました。
そこには「私の場所」「あなたの場所」と分ける境界はなく、立ち上がり、分かち合い、一緒に遊ぶこと、そしてやさしさがある。
今日、子どもたちと大人たちの心に蒔かれた小さな種が、いつか芽を出してくれたら。
争いによって傷ついている大人たちの世界を、ほんの少しでも癒してくれたら。
そんなことを思いました。”
公演を通して、私たちが学んだこと
今回のバンコク公演は、私たちチームにとっても大きな学びと発見のある時間になりました。
『Kaow Kome』は、日本とタイのアーティストが共同でつくってきた作品です。だからこそ、私たちチームの中にも、言葉の違い、文化の違いがあります。
そんな違いがある中でも、この作品で何よりも大切にしているのは、演者たちが「つながっていること」。
なぜなら、あかちゃんたちは、物語を追って舞台を観ているわけではないから。
目の前にいる人がどんな状態でそこにいるのか。その人とその人が、どんなふうにつながっているのか。
私たちは、あかちゃんたちがそうしたものを、とても敏感に感じ取っていると思っています。
けれど、慣れない国で、言葉や文化の違いを越えながら共同生活をし、連続7公演というハードなスケジュールのなかで、毎日、心とからだを整え続けることは、決して簡単なことではありませんでした。
私たちはみんな人間です。
元気な日もあれば、疲れている日もある。
悲しいことが起きることもあれば、動揺したり、不安を感じたりすることもあります。経験豊富なパフォーマーたちであっても、今回の滞在中には、しんどさを抱える瞬間が何度もありました。
それでも、目の前のあかちゃんたちに、そのときできる一番よいパフォーマンスを届けるために、私たちに何が必要なのか。
今回あらためて実感したのは、技術や経験だけではなく、お互いをリスペクトすること。違いを尊重すること。相手を理解しようと心を配ること。そして、誰かが難しい状態にあるときには、チームで支え合うこと。
そうした日々の関係そのものが、舞台の上での「つながっていること」につながっていく。
それは、あかちゃんのための作品をつくる私たちにとって、とても根本的で、大切なことなのだと、あらためて気づかされました。
チームの一人ひとりが、そのことに丁寧に向き合いながら走りきった、バンコク公演。
届いた観客の皆さんからの言葉の一つひとつに触れながら、私たちが舞台の上で大切にしてきた「つながっていること」が、あかちゃんやご家族にも届いていたのだと感じています。
パフォーマンスの外での時間
今回の滞在では、公演の合間に、乳幼児親子と大人のみの参加者の両方を対象とした「MOVING WITH CARE」のワークショップも実施しました。
初日にはオープニングイベント、最終日にはアフタートーク、そして公演後にはAsian TYA Meetingにも参加。

これらの機会を通して、参加者の皆さんや、アジア各地で子どものための舞台芸術に取り組む仲間たちから、私たち自身も大きな刺激と学びをいただきました。
教育、戦争、災害、ソーシャルメディア、コミュニティ、健康、家庭、環境、人と人との関係性—。

今、世界の子どもたちを取り巻いているさまざまなことについて、異なる国や文化的背景をもつ人たちと、「私たちには何ができるのか」を一緒に考えた時間も、本当に実りの多い経験となりました。
そして、『Kaow Kome』という作品を今、子どもたちに届けていくことの意味についても、あらためて強く感じることができました。
ご支援が、一つひとつの瞬間に

今回のバンコク公演では、急遽、会場の衛生環境をよりよくするためにフロアマットを購入したり、作品の世界観をよりクリアに伝えるために、天井から吊るす布を現地で買い足したりしました。また、あかちゃんたちが安心して触れられるよう、ゴザも新しく安全なものを購入することができました。
そして、ご支援によって実現できたことは、物を購入できたことだけではありません。
タイのあかちゃんが初めて劇場に来たこと。
ある子が、自分の安心できる場所から一歩踏み出してみたこと。知らない家族同士が、自然に一緒に子どもたちを見守っていたこと。
バンコクで生まれた、そうした一つひとつの瞬間の背景に、皆さまからのご支援がありました。
皆さまに支えていただいたからこそ、私たちは安心して作品を届けることに集中し、目の前のあかちゃんやご家族と向き合うことができました。

『Kaow Kome』のこれから
日本・京都から、韓国・南楊州、そしてタイ・バンコクへ。
異なる土地のあかちゃんやご家族と出会いながら上演を重ねてきて、この作品を、まだまだ多くの人たちのもとへ届けていきたいという思いが、強くなっています。
今回のバンコク公演を観て、ヨーロッパやカナダのフェスティバルからも、関心を寄せていただいています。
タイと日本から生まれたベイビーシアターとして。
そして、アジアから生まれた作品として。
『Kaow Kome』を、これからさらに深め、育てていきたいと思っています。
さいごに
最後に、今回のバンコク公演を実現するために力を貸してくださった皆さんに、心から感謝を伝えたいと思います。
連日、朝から夜遅くまで、たくさんの作品とアーティスト、そして観客を迎えるために走り続けてくれたBICT Festチームの皆さん。頼もしく現場を守ってくれたテクニカルチームの皆さん。
出演者たちの渡航費をはじめ、今回の公演をさまざまな面から支えてくださった国際交流基金の皆さま。
滞在中いつも一番近くにいて、会場で起こるさまざまなことに一緒に向き合い、公演を支えてくれたCrescent Moon Theatreのアーティストの皆さん、そしてジブちゃん。
この作品にかかわってくれた、すべての方々。
言葉も文化も違う場所で7公演を走りきることができたのは、皆さんがそばにいて、支えてくださったからです。
舞台の上だけではなく、その舞台が生まれるまでにも、本当にたくさんの人の力とつながりがありました。
そして何より、この挑戦を日本から応援し、私たちをバンコクまで送り出してくださった164名の支援者の皆さま。
皆さんと一緒に、『Kaow Kome』をバンコクのあかちゃんたちへ届けることができました。あらためて、本当にありがとうございました。
これからも、この作品が出会う人や土地からたくさんのものを受け取りながら、大切に育てていきたいと思います。





