
監督の合田朝輝です。
■脚本という挑戦
「作りものを書く」という方向性だけは、はっきりしました。
次に考えたのは、何を書くのかです。
小説でもいい。
脚本でもいい。
形式は何でもよかった。
重要だったのは、自分の中にあるものを、作品として外に出すこと。
その結果として、たまたま辿り着いたのが、映画でした。
一から全て、自分で映画の脚本を書きました。
ただ、最初は自分で映画まで作ろうとは思っていなかったんです。
あくまで、自分のアイデアと文章がどこまで通用するのか。
それを試すための挑戦でした。
コンクールに応募するために書いた文章。
自分を残すための一歩。
それだけでした。
自分が書きたいものの前に、いくつかの前提がありました。
コンクールに応募するための条件。
低予算。
香川がテーマ。
少しでも、映画になるための条件を上げる。
自分にとっても自然な条件でした。
■最初に考えたアイデア
この条件の中で、いくつか設定を考えました。
一つは、ALSをテーマにした物語。
病気のことを知ってもらうきっかけになるかもしれない。
当事者だからこそ書けるリアルもある。
もう一つが、地元の観音寺市を舞台にした物語。
田舎の閉塞感の中で、若者が何かを見つける話。
自分の知っている風景を描くことができる。
ただ、どちらも自分がやる意味があるのか。
そう思い始めると、なかなか決まらなくなる。
そこで、一度考え方を変えました。
どういう設定を、自分が面白いと思うのか。
自分が見たことがないものは何か。
自分が見たいと思えるものは何か。
その視点で考え直すことにしました。
それでも、すぐには答えは出ませんでした。
考えては、やめて、また考える。
決め手がないまま、時間だけが過ぎていく。
そんな時、ふと思いました。
「自分が苦しい時に、何に助けられてきたのか」
そこから、一つの方向が見えてきました。
苦しい時に助けられたような作品が作りたい。
辛い時に笑わせてくれたようなもの。
一瞬でも、現実を忘れさせてくれたもの。
自分の苦痛を忘れることができるもの。
■バカみたいな考え
できるだけシンプルなものにしたいと思いました。
難しいテーマや重たい設定ではなく、できるだけ軽い入り口。
テンポよく進む。
考えなくても楽しめる。
感動ではなく、面白さ。
単純に、沢山笑えて、ちょっとだけ泣ける。
そのくらいのバランスがいい。
そういう方向で考えていく中で、一つのイメージが浮かびました。
低予算の撮影現場。
トラブルだらけの状況。
壊れる撮影データ。
無理難題に振り回されながら、
パニックの中で何とか乗り越えようとする映画監督。
今の自分とも、どこか重なる物語。
それを、バカみたいな方法で解決していく。
ドタバタしたコメディ。
この物語を書く時に、一つだけ決めていたことがあります。
「感動を目的にしない」ということです。
今の自分が求めているものではなかったからです。
感動させることを目的にすると、どうしても重たくなる。
意味を持たせようとする。
それは、私が助けられてきたものとは違う。
私が求めているのは、面白いものです。
ただ笑える、という意味ではなく。
見ている間、時間を忘れる。
気づいたら終わっている。
もう一度見たくなる。
そういうものです。
■私が撮りたいモノ
何も考えずに笑える時間。
頭を使わずに見ていられるもの。
ただ「面白い」と思えるもの。
そういうものに、何度も助けられてきました。
真剣に向き合うことも大事ですが、それだけでは持たない。
どこかで、逃げる時間が必要になる。
そしてその「逃げる時間」は、決して無駄ではないと思っています。
むしろ、それがあるから続けられる。
だからこそ、自分が作る側に回るのであれば、
同じものを作りたいと思いました。
誰かにとっての「逃げ場所」になるもの。
見ている間だけ、少し現実を忘れられるもの。
それでいて、見終わった後に、ほんの少しだけ何かが残るもの。
何かを教えるものでもなく、
人生を変えるものでもなくていい。
ただ、見ている間だけ、少し楽になれる。
それで十分。
自分が救われた形を、そのまま差し出す。
それが、今回やろうとしていることです。
もし、どこかで誰かの時間を、少しだけ軽くできたら。
くだらなくて、でも愛おしくて、観終わった後に「ああ、面白かった」と言えるもの。
それが、私の撮りたいモノ。



