
text by 石黒洸治
「苦味もありつつ、疲れが取れて元気になれるものを考案してほしい」
とのリクエストでした。
苦味のあるリキュールとして有名なカンパリをベースに選択。
正確なレシピは公開されていませんが、ハーブやスパイス等が数十種類使われており、苦味もありつつ、ほのかな甘味もあります。
また、鮮やかな赤色なため、「元気になれる」に合うかな、と。
また、当時も井上さんから音楽関係のお話もお聞きしていたので、
そこからは音楽関係の名前がついたカクテルをヒントにして考えていきました。
もうひとつの材料として、オーセンティックバーではなかなか使われていませんが、カルピスを選択。
カルピスの創業者は三島海雲氏。
三島氏がモンゴルにいた頃に酸乳という飲み物に出会いました。
現地で体調を崩し、瀕死の状態になった時、すすめられるままに酸乳を飲み続けたところ回復を果たしたことから、
日本に乳酸菌を広めることを志して製品開発に取り組んだことがカルピスの始まりです。
1923年の関東大震災時には渇水した地区にカルピスをトラックで配布したという逸話もありますね。
昔、何かの記事かテレビの番組で、創業者の経験から日本人のために開発したことを見ていて、薄らとですが記憶にありました。
「疲れが取れて元気になれる」=「回復する」と願いを込めつつ、意外性を持たせようとも考えて。
味わいとしても乳酸菌飲料なので、包み込んでくれるかなと。
当時のお店のオーナーには許可も得ずに、このカクテルのために独断で仕入れましたね笑
さらにもうひとつ。
疲れには酸味や甘味があるものが好まれることも考え、味の調節として自家製のシロップを。
こちらもなかなか日本では知られていないものとなります。
最後にカンパリとの相性や香りを考えて隠し味にとあるものを1滴。
疲れていることを踏まえてアルコール度数は抑えめに、
優しくも鮮やかめな色合いに。
井上さんはショートカクテルをよくお飲みになっていたので、ショートカクテルで。
考案した日は
「明日、井上さんがお見えになる予感がするから、今日のうちに作ろう」
と乙川君とお話して創作してましたね。
その予想通り、翌日に井上さんがお見えになってくださり、
昨年の7月12日、その日が初披露となりました。



