
さあ、あっという間にパンダノン島での生活も最終日を迎えました。
朝目覚めて窓の外を眺めると、ボートを担いで海を歩く屈強な男たちの姿。
この島ならではのたくましい日常とも、いよいよお別れです。
お世話になった家に感謝を込めながら荷物をまとめ、メインハウスへ向かいます。
数十匹のゴキブリが飛び交う夜や、猛暑でなかなか眠れなかった夜など、振り返れば過酷な出来事ばかりでした。
(思い出してみれば、大変だった記憶は不思議と夜のことばかりです笑)
それでも、旅立ちの時が近づくにつれて別れが惜しくなり、気づけばこの場所が愛おしくてたまらない存在になっていました。

最後の食事と食器洗いを済ませ、私たちは船着場へ。
道中、子どもたちが「最後のお見送り」にと駆けつけてくれました。
交わす言葉の一つひとつに愛おしさを感じながら、胸がいっぱいになりながら船に乗り込みます。
中には船の上までついてくる子もいましたが、出航の合図とともに勢いよく海へ飛び込み、島へと泳いで戻っていきました。
「もう少し彼らと話していたい」――そんな寂しさが募りますが、いつか訪れる別れがあるからこそ、ここでの思い出はより一層美しく輝くのだと思います。
私たちの本当の目的は、単に生活を共にして楽しく過ごすことではなく、彼らが自立して生きていくための「力」を育むサポートをすること。
頭ではそう理解していても、込み上げる切なさを隠すことはできませんでした。
メンバーの一人は、ぽつりとこう漏らしていました。
「7日間、家族のように想いと時間を共有してきたからこそ、突然の別れで心にぽっかりと穴が開いたみたいだ」
支援する側にいたはずの私たちが、いつの間にかパンダノン島の人々からかけがえのない宝物を受け取っていたのだと痛感します。
ありがとう、パンダノン島。
来年、私たちは必ず帰ってきます。
活動の質をさらに高め、よりパワーアップした“EST”の姿を見せることを約束して。

パンダノン島に別れを告げ、私たちはフィリピン本土の「マクタン島」へと向かいました。
7日前に見たときと同じ、エメラルドグリーンの美しい海。
正直なところ、1週間の疲れが出たのか帰路の大半を眠って過ごしてしまったため、景色を堪能できたのはほんの一部でした。
「残念でしたか?」と聞かれれば、答えは否です。――むしろ、全力を出し切った証として本望でした。
マクタン島に到着し、その足で現地団体「ゴーシェア」の事務所へ向かいました。
初めてここを訪れたときは不安で胸がいっぱいでしたが、今回は違います。
温かく迎えてくださったゴーシェアの皆さんは、口々にこう言葉をかけてくれました。
「成長したね。本当にお疲れ様!」
その言葉を聞いた瞬間、張っていた緊張の糸がほぐれ、ようやく肩の荷が降りた気がしました。
それからしばらくして、さよならパーティーが始まりました。

ESTのメンバーと現地スタッフのシーモンキーたちが思い出話に花を咲かせる中、食卓の中央にはフィリピンの伝統料理である豚の丸焼き「レチョン」が並びます。

手で簡単にちぎれるほど柔らかくジューシーなお肉を囲み、賑やかな時間が流れていきました。
素敵な食事を終えた後、私たちはゴーシェアの方々と今回の渡航をじっくりと振り返りました。

ボランティア経験者が一人もいない中で、手探りで活動することへの大きな不安。
英語が得意ではないため、シーモンキーたちと意思疎通が図れるかという懸念。
それでも、未知の世界へ飛び込むことに胸を躍らせていた出発前の気持ち。
一人ひとりが胸の内に秘めていた想いを言葉にしていくうちに、メンバーの目からは自然と涙がこぼれ落ちていました。
駆け抜けた日々の濃密さを語るには、どんなに時間があっても足りません。
そして全員の語りの中に共通していたのは、「言語の壁を超えた人との繋がりの温かさ」でした。


ボランティアを通じて深まったパンダノン島の子どもたちとの絆。
同じ志を持ち、喜怒哀楽を共にしたシーモンキーたちとの絆。
私たちはこの一週間で、何物にも代えがたい「確かな繋がり」を手に入れたのです。
しかしその一方で、私たち学生の力だけでは解決が難しい過酷な現実や課題も、肌で直接感じることとなりました。
改めて、今回のプログラムの essence(本質)は“ボランティア”です。
一過性の「与える支援」にとどまらず、現地の人々が自立して生きる力を育む持続可能なサポート。
だからこそ、私たちがこれからやるべきことは一つです。
学生である私たちの最大の武器は、現状を打破しようとする「驚異的な行動力」で人を動かし、ひいては社会や企業をも巻き込んで動かしていくこと。
私たちは遠く離れた日本に戻ってからも、一時的な自己満足で終わらせず、永続的な支援のアプローチを続けていくと強く決意しました。
現地に足を踏み入れた者と、そうでない者が一丸となって一つの目標へ進むことには、当然難しさもあるでしょう。
しかし、私たちの決意や情熱は、そんな壁で立ち止まるほどちっぽけなものではありません。
私たちは止まることなく、歩み続けます。
未来を変えるためのアプローチを、これからも決して諦めません。

フィリピン渡航 完




