フェルメール『真珠の耳飾りの少女』、失われた美しさへの挑戦

フェルメール『真珠の耳飾りの少女』の400年のひび割れを高解像度データで蘇らせ、デザイナーやクリエイターの手に渡す新たな創作素材へ。

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このプロジェクトは、2026/06/17に募集を開始し、 2026/07/19に募集を終了しました

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『真珠の耳飾りの少女』の黄色いジャケットは、何でできているのでしょうか。17世紀オランダ服飾研究の第一人者 Marieke de Winkel の研究などによると、この衣装は光沢のある絹織物(シルクサテン)である可能性が高いと考えられています。その理由としては、 ●フェルメールが描いた光沢が非常に滑らかであること ●光の反射がベルベットよりも鋭いこと ●シワの入り方が柔らかく、絹らしい質感であること ●当時流行していた黄色いサテンジャケットの特徴とよく一致していること などが挙げられます。一見するとベルベットのようにも見えますが、ベルベットであれば、 ●光沢はもう少し鈍く、 ●影はより深く沈み、 ●毛羽立った柔らかな質感が表れる はずです。一方、『真珠の耳飾りの少女』では、 ●ハイライトが細く鋭い ●面全体が均一に輝いている ●布の折れ目が鏡面のように光を反射している といった特徴が見られ、ベルベットとは少し異なる印象を受けます。フェルメールが描いた当時は、こうした素材の違いも一目で分かるほど鮮やかだったのかもしれません。しかし、約360年という長い年月の中で絵具は少しずつ変化し、私たちには判断が難しい部分も増えています。だからこそ、当時の服飾や他の作品を手がかりに、「このジャケットはどんな姿だったのだろう」と想像を巡らせるのも、名画を楽しむ醍醐味の一つではないでしょうか。そういう事でChatGPTにジャケットをシルクサテンの生地にして描いてもらいました*********************今日の作業


今回は、衣装の袖の部分を修復しました。修復作業を進めていて気になったのが、袖の付け根の作りです。肩の後ろ側には折り返しが何本も入った「プリーツ」が描かれていますが、前側にはそのような表現がありません。「なぜ後ろだけにプリーツがあるのだろう?」そう思って調べてみたところ、マウリッツハイス美術館のブログに興味深い解説がありました。それによると、この衣装は白いシャツの上に当時流行していたジャケットを着せ、その袖には「インセット・スリーブ(はめ込み袖)」が採用されているそうです。そして、肩の後ろ側に見える平行な線は「カートリッジ・プリーツ」と呼ばれる装飾とのことでした。また、青と黄色のターバンは当時の日常着ではなく、異国風の人物像「トローニー」を演出するための衣装だったと考えられています。文章だけではなかなかイメージが湧かなかったので、フェルメールの他の作品も調べてみました。すると、『手紙を読む青衣の女』では、この作品とよく似た袖の形を見ることができます。また、『女主人と召使い(Mistress and Maid)』では毛皮付きの上着が描かれていますが、ファーを除いた袖の仕立てはどこか共通する印象を受けます。、『女主人と召使い(Mistress and Maid)』(部分)『真珠の耳飾りの少女』では、人物は胸から上だけが描かれているため、衣装全体が大きく注目されることはありません。それでも、この肩のプリーツが加わることで衣装に立体感が生まれ、青いターバンとともに異国的な雰囲気をより印象深いものにしているように感じます。修復を始めるまでは見過ごしていた小さな部分でしたが、細部を観察していくほどに、フェルメールの衣装表現の巧みさにも目を奪われます。


ターバンの黄色
2026/06/27 23:21

コツコツと修復作業を進めています。前回の活動報告では、「ターバンの黄色部分では、表面の色層が部分的に失われているように見える箇所があり、服の黄色とは異なる表情を見せています。」と書きました。今回修復した部分を修復前後で比較すると、その違いが分かりやすい箇所がありましたのでご紹介します。注目していただきたいのは、ターバンの中央付近と下側です。修復前はひび割れや色層の欠損によって分かりにくくなっていましたが、修復後はフェルメールが描いた曲面を表現するための柔らかな陰影が、少し見えやすくなったのではないかと思います。私は修復を進めながら、この部分は上に重ねられた色層が部分的に失われているような印象を受けました。もちろん、400年近い年月の中で起きた変化は、顔料や技法だけで説明できるものではありません。それでも、一つひとつ丁寧に修復していくことで、フェルメールがどのような順序で色を重ね、立体感を生み出したのかが少しずつ見えてくるような気がしています。もし実物をご覧になる機会がありましたら、ぜひターバンのこの部分の陰影にも注目してみてください。修復画像と見比べながら鑑賞すると、フェルメールの描画手順を想像する楽しみが、さらに広がるかもしれません。


フェルメールの作品を年代順にじっくりと眺めていると、あるひとつの面白い事実に気が付きます。それは、彼にとっての「赤」という色彩の扱い方の変化です。── 画面から消えていった「赤」の謎『取り持ち女』などの初期の作品では、画面の中に情熱的な赤い上着やカーテンが大胆かつ鮮やかに使われています。『取り持ち女』(1656)フェルメール 出展:wikimediaところが、1660年代半ば(まさに本作が描かれたとされる時代)以降になると、フェルメールの画面の中で「赤」が占める面積は、まるで引き潮のように少しずつ減っていくのです。現在修復を進めている『真珠の耳飾りの少女』でも、画面を大きく支配しているのはお馴染みの「青(ウルトラマリン)」、そして「黄色」と「白」です。では、フェルメールは赤に興味を失ってしまったのでしょうか? ──デジタル上で極限まで拡大し、ひび割れを取り除きながら彼女の顔を見つめていると、まったく逆の答えが見えてきます。── 命を吹き込む、最後のひと筆この作品において、赤はごく限られた場所にしか使われていません。 少女の瑞々しい唇、そして肌の血色(チーク)。しかし、修復作業でピクセル単位まで拡大して見ていると、このわずかな赤は決して脇役などではないことが分かります。むしろ、「少女に生命感を与えるための、最後のひと筆」として、驚くほど計算し尽くされた強烈な存在感を放っているのです。 青と黄色が、画面全体の静けさと美しい調和をつくり、 白(真珠や瞳の光)が、差し込む光のドラマを与え、 最後の赤が、少女の肉体に温かい命を吹き込む。 面積を大きく広げるのではなく、ここぞという一箇所に絞って最高の赤を置く。細部を見れば見るほど、フェルメールは色を「たくさん使う」のではなく、「必要な場所、そこにしかない一点だけに命を宿す」圧倒的な引き算の画家だったのではないか。修復の手を動かしながら、そんな気がしてならないのです。******************************************修正はターバンはの部分、筆後を残すように丁寧に


フェルメールの人物画の魅力の一つは、光によって浮かび上がる青と黄色の美しい色彩のハーモニーにあると思います。『真珠の耳飾りの少女』をよく見ると、一口に黄色と言っても異なる表情の黄色が使われていることが分かります。服に使われているのはイエローオーカー系の落ち着いた黄色。一方、ターバンには鉛錫黄(Lead-Tin Yellow)による鮮やかな黄色が使われていたことが、近年の科学調査によって明らかになっています。昔は「フェルメールはインディアンイエローを使っていた」と紹介されることもありましたが、分析技術の進歩によって、作品に使われた顔料についても少しずつ詳しいことが分かるようになってきました。修復作業で興味深いのは、同じ黄色系の色彩でも、場所によって劣化の現れ方が異なることです。少女の服の黄色部分では、ひび割れは見られるものの、比較的均一な印象を受けます。一方でターバンの黄色部分では、表面の色層が部分的に失われているように見える箇所があり、服の黄色とは異なる表情を見せています。もちろん、400年近い歳月の中で生じた変化は顔料だけで説明できるものではありません。フェルメールが重ねた絵具の層構造、油の配合、キャンバスの動き、さらには過去の修復や保存環境など、さまざまな要因が影響しているはずです。それでも修復を進めながら拡大して観察していると、服の黄色とターバンの黄色では、どこか異なる歳月の重なり方をしているように感じられます。こうした違いを眺めていると、フェルメールがどのような材料を選び、どのように色彩を重ねていったのか、つい想像が膨らんでしまいます。******************************************


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