『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

『なぎのえき』は、佐賀県唐津市の無人駅を舞台にした、写真と音声(オーディオドラマ)による没入型アートプロジェクトです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる2つの回復ツールをお届けします。 聴く避難所(オーディオドラマ) 飾る避難所(電子書籍フォトブック)

現在の支援総額

37,000

1%

目標金額は2,500,000円

支援者数

6

募集終了まで残り

31

『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

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あと 31

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支援者数6

『なぎのえき』は、佐賀県唐津市の無人駅を舞台にした、写真と音声(オーディオドラマ)による没入型アートプロジェクトです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる2つの回復ツールをお届けします。 聴く避難所(オーディオドラマ) 飾る避難所(電子書籍フォトブック)

物語の回想シーンをどこにするか、それを決めるのに時間はかかりませんでした。僕たちの舞台は、あの懐かしい演劇部の部室。

部屋、と呼ぶには少しばかりおこがましい空間でした。学校の立ち入り禁止の屋上へと続く、冷たい非常階段の踊り場。そこに無理やり壁と扉をくっつけただけの、建築の「隙間」のような場所。けれど僕たちは、どこからか古びた椅子や傷だらけの机を持ち寄って、さしずめ思春期の「秘密基地」を作り上げてしまったのです。

文字通り、隙間だらけのその場所での思い出を掘り起こし始めると、引き出しの奥から次々と記憶の断片が溢れ出してきて、時折、感情のコントロールが追いつかなくなることがあります。

下校時間を告げる無機質なチャイムが鳴り響いた後も、僕となぎのモデルになった彼女は、ずっとそこに残って他愛のないお喋りを続けていました。もちろん、彼女の無軌道なステップに、僕はいつだって不器用にしがみつくだけ。

「まいったな」と僕が頭を抱えるような、そんな日のことです。 彼女は自分でも「少しやりすぎちゃったかな」と反省するのか、そんな気配を察した日は、その日のうちに決まって僕を映画に誘うのでした。映画館の暗闇に逃げ込めば、僕の機嫌が直る。彼女はそう信じていたのでしょう。……悔しいけれど誘われてすぐに、機嫌はすっかり直っているのですが(笑)。

この『なぎのえき』という作品を制作しながら、そんなディテールをひとつひとつ、ブルーブラックのインクでなぞるように思い出しています。

贅沢を言わせてもらえるなら、このままずっと、このノートの中で彼女を呼吸させ続け、物語を紡いでいられたらどれほどいいだろう。そう考えてしまう瞬間もあります。執筆が進むにつれて、彼女との二度目のお別れが、静かに、けれど確実に近づいているのを感じて切なさが募るのです。

もう一度、彼女を完璧に手放すこと。それは正直なところ、身が引き裂かれるほどつらい作業です。

けれど、「きちんと別れる」ことこそが、僕がこの作品に込めた、たったひとつの揺るぎないテーマ。今度こそ、あの日唐突に奪われてしまった時間に正確なピリオドを打ち、彼女に素直な「さよなら」を言えるように。

僕は今日も、少し冷めたコーヒーを傍らに置いてキーボードをタップしています。


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