
二十五年ほど前のことだ。仕事の都合で長く故郷を離れていた僕は、久しぶりにおたや祭りに行った。
おたやはやっぱり夜がいい。よく知っているはずの参道が提灯の灯りに照らされて、いつもと違う特別な活気に満ちている。
にぎわう人の波の中を歩くうち、ふと、屋台で売られているものが目に留まった。
細い竹の枝先につり下げられた縁起物の宝船だ。宝船の上には七福神や金色の米俵、真っ赤な鯛などがみっちりと乗っている。
見た瞬間、幼いころの記憶がよみがえった。
(ああ、これだったのか)
僕がまだ、小学校に上がる前のことだ。
父に連れられて、この道を歩いていたとき、頭上高くに赤くてきらきらしたものが飾られているのを見つけた。
精一杯背伸びをして手を伸ばしたが届かない。欲しくてたまらなかったが、買ってはもらえなかった。
大人になった今、それがたやすく手の届く高さにある。
大小さまざまな宝船の中から、中くらいのものを選んで買った。3000円ぐらいだった。
とても満ち足りた気持ちだった。
家に帰ると、当時はまだ健在だった父が、僕が手にしているものを見て笑った。
「なんだ、珍しいものを買ってきたな」
「うん」
僕も笑った。いい夜だった。今でもよく覚えている。



