
くらしごと五右衛門の敷地の中に、小さな「上高野こども文庫」があります。この文庫ができたのは、今から40年ほど前のことだそうです。

当時は、子どもたちだけで市営図書館まで行くには少し遠く、道中も心配でした。そこで、地域のお母さんたちが「子どもたちの身近なところに本を置いてあげたい」と、市営図書館から数か月ごとにたくさんの本を借り、地域の子どもたちが本に親しめる場所をつくりました。そんなお母さんたちの思いから始まった文庫です。
私たちが関わるようになってからも、文庫では、本を読むことを入り口に、いろいろなことをしてきました。春には野原へよもぎを摘みに行き、絵本『よもぎだんご』を見ながらお団子をこねました。鯉のぼりを出す日には、大きな鯉の口から子どもたちが「行ってきまーす」と入り、尾びれからモソモソと出てきて、大笑いしました。

七夕には笹を飾って絵本を読み、庭にゴザを敷いて紙芝居をしたこともあります。お正月には、五右衛門の田んぼで育てたもち米を、おくどさんで炊いて餅つき。
本のそばに、畑があり、火があり、食べることがあり、遊ぶことがある。気がつけば、文庫の活動は、五右衛門の暮らしの中へ広がっていました。
子どもたちの「やってみたい」から始まった「人と自然の友の輪大作戦プロジェクト」では、「野草使いクラブ」も開きました。

よもぎを摘み、よもぎ酵母を育ててパンを焼いたり、セイタカアワダチソウやマリーゴールドで布や毛糸を染めたり。お昼には、子どもたちだけでおくどさんに薪をくべ、ご飯を炊いたこともあります。大人は心配しながら後ろで見ていましたが、炊き上がったご飯はふっくら。子どもたちは「最高においしい!」と満足そうでした。

そういう時、大人が教えているつもりで、実は大人の方が子どもたちに教えてもらっているのだな、と思います。
野草使いの活動をもとに、みんなで紙芝居もつくりました。プロジェクトリーダーの中学生を中心に、何人もの子どもが絵を描き、色を塗りました。それぞれが思い思いの色を使うので、出来上がりは少しばらばら。でも、「みんなのストーリーだから、これでいいんだよね」という言葉がありました。夏から秋の野草を描いた紙芝居は完成しました。次は、冬から春の上高野を歩きながら、どんな草や花に出会えるのか探して、また続きをつくれたらと思っています。


文庫のそばには、子どもたちが「食べてみたい」「使ってみたい」ものを育ててきた「マジックガーデン」もあります。じゃがいもを掘ったり、ブラックベリーを食べたり、育てたマリーゴールドを草木染めに使ったり。今はハチ箱も置かれています。季節が巡ると花が咲き、虫がやってきて、野菜が実る。そんな小さな変化を、子どもたちと一緒に眺められる場所になっています。


文庫の活動も、ずっと同じように続いてきたわけではありません。人手が少なくなったり、メンバーが遠くへ引っ越したり、海外へ移住したり。みんなの暮らしが変わる中で、活動がゆっくりになる時期もありました。形を変えながらも、この場所ならではの時間やつながりは続いています。
40年前のお母さんたちが「子どもたちの近くに、本のある場所を」と始めた文庫。その思いを私たちが受け取り、また次のお母さんたちへ、そして子どもたちへ、ゆっくり手渡していけたらと思っています。本を読んでもいいし、畑に行ってもいい。縁側でおしゃべりしてもいいし、「こんなことやってみたい」と誰かに言ってみてもいい。五右衛門に、これからもそんな余白が残っていたらいいなと思います。

今回のクラウドファンディングは、くらしごと五右衛門という場所を、これから先にもつないでいくために行われています。この小さな文庫も、五右衛門で育ってきたたくさんの「くらしごと」のひとつです。またここで、子どもたちやお母さんたちと、どんなことが始まるでしょう。
そんな続きを一緒に見守っていただけたらうれしいです。そして、よろしければ、クラウドファンディングへのご支援、応援をどうぞよろしくお願いいたします。



