プロジェクトの実行者について
プロジェクトをご覧くださりありがとうございます。りんご農家の永井温子です。
前回のクラウドファンディング【共に耕し、拓く「コファーム型りんご園」で、りんご関係人口創出プロジェクト始動!】では、たくさんの方にご支援いただきありがとうございました。
おかげさまで、引き継いだりんご畑の運営を続けることができています。
また、コファーマーの皆さんと一緒に青森県外へりんごを販売したり、タルト・タタンやりんごジャムを製造したり、りんごの剪定枝を再利用した「美枝紙(みえし)」を活用した贈答向けのりんごジュースをリリースしたりなど、さまざまな活動が生まれています。
しかし近年、冬の大雪や夏の高温の影響により、元々高齢であるりんごの木の枝が雪の重みで折れてしまったり、病気の進行によって樹体が弱ってしまったりなど、課題もまだまだあります。
りんごの木の健康を守りながらりんご畑を運営していくには、「改植(かいしょく)」と呼ばれる、「植えている木を伐採、抜根し、新しい苗木を植え、世代交代をすること」が必要不可欠です。
正直な気持ちを申し上げると、私たちが生まれる前に誰かの手によって植えられ、長い年月そこにあったりんごの木をそのままのこしておきたい気持ちは強いです。しかし、湿気が多い、大雪が降るなど、日本の特に青森県というのは、りんごの木が生きていくには過酷な環境でもあります。ある程度年を重ね、病気になりやすくなってしまったりんごの老木をそのままのこしておくことは農業経営的リスクになります。病気にかかると、他の木にも移ってしまうことがあるからです。他の木というのは、自園地だけでなく、他の園地の話でもあります。

リスクを減らすために、私たちはほぼ毎年、少しずつでも苗木を植えて畑を更新するようにしています。農業経営の視点からは、この選択は間違ってはいないと考えています。しかし、私たちの心にはモヤモヤが残ります。私たちにとってりんごの木は、普段から一緒に生活を共にしている「戦友」のような存在であり、生活のために「胸を借りてきた」存在でもあるのです。私たちがりんご畑を引き継ぐ前からすでにずっとそこにいたりんごの木を、自分たちよりも長く生きてきたりんごの木を、「ただ切って燃やして、なかったことにしてよいのか。」と、りんごの枝や根っこを燃やしながら、私たちは悶々と考えてきました。
目指すのは、りんご畑を「共に記録し、のこす」こと
このクラウドファンディングで実現したいことは、私たちが引き継いだりんご畑を記録し、のこすことです。
絵:阿部澤
今回のプロジェクトでは、りんごの老木を20年以上描き続けてきた画家の阿部さんに、私たちが管理する「ヒビノス林檎園」の風景を描いていただきました。絵の中にあるりんごの木の中には、今ではもう無いものもあります。もっと言えば、同じ木であったとしても毎日毎分毎秒、同じ状態の木はありません。
また、描いていただいた絵をベースに、デザイナー・アーティストの樽澤さんにグッズを制作していただきました。「こういう畑があった」ということをより強く実感していただくことができると考えています。
絵:外崎佑実(コファーマー)
「記録し、のこす」の先に何があるのでしょうか。阿部さんや他の画家の方に別のりんごの老木やりんご畑の風景を書いていただき、個展を開いて皆さんにご覧いただくということもできるかもしれません。他のアーティストの方に、何か表現していただいて、別のコラボレーションにもつながるかもしれません。はたまた、私たちが想像できないようなアウトプットを思いつく方もいらっしゃるでしょう。この取り組みがどのように発酵していくかはまだわかりませんが、このプロジェクトがその発酵を促す酵母のようになればいいなと思っています。
プロジェクト立ち上げの背景
私たちの会社では、りんごの栽培「ヒビノス林檎園」と、「RINGO JAM」の2つの事業をベースに経営をしています。
「ヒビノス林檎園」では、りんごの栽培に加え、品種別りんごジュースを販売しています。栽培をしていて驚いたことは、りんごの品種は多様で、味わいもさまざまであることです。りんごやりんごジュースの販売を通じて、りんごそのものの美味しさや楽しさを感じていただきたいという気持ちを大切にしています。

一方「RINGO JAM」という事業も行っています。この事業は、「りんごのことをもっと知りたい。りんごの魅力や可能性ってどこまで広がるんだろう」という好奇心から始まりました。りんごやりんご畑を通して今まで色々なジャンルの取り組みをしてきました。

りんご畑でサウナや野点(のだて)を楽しんだり、りんごの剪定枝で作られた和紙を使った「アニマルねぷた」、りんごの枝でクリスマスリースを作るワークショップなどを行ったり、りんご畑で音楽ライブを行ったりしてきました。2024年には、「コファーム型りんご園」という誰でもりんご作りに関われる仕組みづくりの一歩目を踏み出しました。今回のクラウドファンディングはこの「RINGO JAM」の活動と地続きになっているものです。「りんご」というきっかけから、「りんごのある風景」を作ってみる試みと言ってもいいかもしれません。
そして今回のプロジェクトを具体化していくに当たって大きく影響を受けた出来事がありました。2024年から2025年にかけて関わった舞台「home〜りんごさんのうた」です。
青森県在住の文筆家の世良啓さん作のりんごをテーマにした掌編小説「home」が種となり、脚本の読み合わせから舞台化までをたくさんの人が関わって形となったプロジェクトでした。

舞台写真:Cashipan
特に印象的だったのが、テーマソングである「りんごさんのうた」の1番の冒頭の歌詞です。
生きてきた記憶を りんごの根は覚えていた。
「りんごさんのうた」 作詞作曲:koyomi
演劇プロジェクトを通じ、りんご畑をのこしていくことと同じくらい、それまでりんご畑がどんな風景であったかを記録し、その記録をのこしていくことが必要であるという仮説が私の中で育っていくのを感じました。
資金の使い道
皆さまからご支援いただいた資金は、りんご畑の風景を記録し、のこす活動費に充てさせていただきたいと考えています。今後は、自分たちの畑だけではなく、他のりんご農家さんのりんご畑を記録する活動にもつなげていきます。
資金の使い道:企画、広告宣伝費(専用サイト制作、運用)、グッズの企画デザイン、RINGO JAMの活動費等。
リターンについて
今回のクラウドファンディングのコアにあるのが「RINGO REPORTAGE(読み:りんごるぽるたーじゅ)」という言葉です。
「reportage」はもともとフランス語で、「探訪」を意味します。取材記者、ジャーナリスト等が、自ら現地に赴いた内容を放送・新聞・雑誌などの各種メディアでニュースとして報告することを指して使われるようになり、この考え方、手法は文学や絵画にも応用されていきました。
「RINGO REPORTAGE」は、実際にあるりんごやりんご畑のある風景を、さまざまな表現方法を通じて表現し、のこすことであると考えています。
これまでたくさんのりんごの老木を描いてこられた阿部澤(あべたく)さんにりんご畑の風景を描いていただきました。その絵を、デザイナーの樽澤優香(たるさわゆか)さんにグッズや箱としてアレンジしていただきました。ご支援いただいた方には、今回出来上がったグッズや箱、採れたてのりんご、りんごジュース、また、りんご農家・作家の髙橋アツシ(たかはしあつし)さんによるりんごや青森を題材にした物語をリターンとしてお送りいたします。
阿部澤さんの絵をプリントした箱にりんごを詰めてお届けします
阿部澤さんの絵をプリントした箱にりんごジュースを詰めてお届けします
阿部澤さんの絵を元にしたグッズをお届けします
実施スケジュール
2026年5月 阿部さん制作開始
2026年7月 制作終了、グッズデザイン、制作
2026年9月中旬 クラファン開始
2026年10月中旬 クラファン終了 終了後順次リターン発送
ご協力いただく方のご紹介
画家|阿部澤(あべたく)
経歴
1960年 東京生まれ都立戸山高校卒
1984年 ソビエト国立プーシキンロシヤ語大学(モスクワ市)修了
1990年 日動画廊昭和会展出品(91)
1992年 林武賞展入選
1993年 個展(東邦アート・97,99,07)
2004年 個展(浪岡町中世の館)以後、青森県内各地にて開催
2007年 個展(心斎橋大丸)
以降、老いたるりんごの物語を中心に個展など多数
デザイナー・アーティス|樽澤優香(たるさわゆか)
ローカル・クリエイティブ・プロジェクト「HIROSAKI AIR」共同主宰。青森県弘前市を拠点に、グラフィックデザイン、イラストレーション、空間演出など、地域文化とアートを横断した制作を行う。まちの行事や文化プログラム、演劇、公共空間のビジュアルデザインを通じ、土地の記憶や人の感情を可視化する表現を追求。東京での制作経験を経て、現在は弘前から地域に根ざしたデザインと創造的コミュニケーションのあり方を探求している。
りんご農家・作家|髙橋アツシ(たかはしあつし)

岩手県出身、青森県弘前市在住。りんご農家のかたわらローカル誌へのエッセイの寄稿やWEBメディアの記事の執筆など行う。『リンゴルポルタージュ』は、2024年秋から2026年夏にかけて書き溜めていた掌編小説や短編小説をまとめた初めての短編集。
最後に
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
普段りんご畑で悶々と考えていることをクラウドファンディングとしてチャンレンジさせていただくにあたり、「自分たちの考えていることは、果たして本当にいいことなのだろうか…。」とまたさらに悶々としてしまいながら進めてきました。いろんな方のお力添えをいただき、実施することができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。
現状のままでは、なかったことになってしまうりんご畑にあるさまざまなことを、少しでも記録し、のこす仕組みを作っていきたいと考えています。今回のプロジェクトは、その一歩目です。どんな風にこのプロジェクトが育っていくのか、これからも見守っていただけますと幸いです。
応援していただけたら嬉しいです!どうぞよろしくお願いします!
最新の活動報告
もっと見るRINGO REPORTAGE|初めての伐採のこと
2026/10/17 21:23皆さんは、りんごの木を伐採したことはありますか?私はあります。初めてチェーンソーを手に、りんごの木を伐採したのは約4年前のことでした。雪がすっかり溶けた4月ごろ、私は初めての改植作業をしていました。りんごの細かい枝をのこぎりやハサミですっかりなくしてしまった後、チェーンソーで直径30cmくらいの枝を落としていきます。慣れていない私は、1本の木の枝を落とし切るのに1時間も2時間もかけていました。「このペースで果たして終わるのだろうか…。」と時折絶望しながらも進めていき、知り合いのりんご農家さんが大きなバックホーを使って木の根を抜く作業をしてくれる約束の期日までにはそれなりに伐採することができました。しかし、問題はその後でした。抜いてもらった根っこがついたままの木が、畑にゴロゴロ転がっています。根に近いところの木の幹ほど太いので、簡単には切ることができませんし、重すぎて移動させることもできません。できるだけ幹を小さくする必要があるのですが、直径50cmも60cmもある木を、チェーンソー触りたての私が上手に切れるわけもなく、結局チェーンソーの刃を何本もダメにしてしまいました。(1本数千円します…)そんな姿を見かねて、近所の農家さんが助けに来てくれました。その方はご自身のチェンソーを持ってきてくださり、私の目の前でりんごの枝を切ってくださいました。「押し付けるんじゃなくて、引く力、離す力を使わないと切れないんだよ。」と言いながら、私が太刀打ちできなかったボス級の幹をまるで豆腐のように切っていきます。「力はいらないんだよ。ほら、片手でもいける。」と、スーッと切り進めていく農家さんの姿を見て、「ここまでできるようになるのにどれだけかかるんだろう…。」と、不安になったことを今でも覚えています。2年経ったあたりから、チェーンソーを上手に使えるようになってきたことを実感できたような気がします。倒れている木や地面と水平になっている枝を切るのは問題なくできるようになりましたが、垂直に立っている木を切るのは、今でも苦手です。必要な技術なので、引き続き精進したいと思います。クラファンは現在【14名】の方にご支援いただいております。少しずつ人数が増えているのを見ると、とても心強いです。本当にありがとうございます!木を切ることそのものは慣れてきましたが、木をなくしてしまうことについては、ちょっと色々考えてしまう自分がいます。 もっと見るRINGO REPORTAGE|焦げた焼きりんご
2026/10/16 22:00ここ最近急に肌寒くなり、特に夜は温かい食べ物を体が欲するようになりました。夏頃からりんごを毎日のように食べていましたが、冷蔵庫で冷やした生のりんごはちょっと負担に感じ、焼きりんごを作りました。作り方は全く凝っておらず、フライパンにバターを入れて熱し、その上に薄く切ったりんごを並べ焼き目をつけ、砂糖をパラパラかけて弱火でじわじわ火を通すだけです。今日は収穫したての「シナノスイート」を使いました。生で食べるシナノスイートは「王道」な味がして、香りもほどよく誰にでも好まれそうな味をしていました。しかし、調理をした後の焼きシナノスイートを食べた瞬間、その「スイーツ」っぷりに夫とつい目を合わせてしまいました。「こんなに別の食べ物になるんだね。」と、りんごの化け方に大変驚かされました。焼きりんごといえば、大学時代の寮生活を思い出します。当時5階建の建物に約200名が敷き詰められていました。青森出身の友人の部屋の前には「ご自由にどうぞ」と書かれた段ボールが置かれており、その中にりんごがぎっしり入っているのを見た時は、「さすが青森だな。」と感心したものです。ある日、寮全体に焦げ臭い香りがたちこめました。「火事じゃないよね?」と、みんなでざわざわバタバタ。結局、犯人は3階のMっちゃんで、焼きりんごを作っている最中にコンロから離れたばっかりにりんごが丸焦げになったことが原因でした。建物の真ん中に階段があり、その近くにキッチンが各階に備えられていたため、効率よく1階から5階まで香りが広がっていったのでした。今回作った焼きりんごは、そのMっちゃんの失敗を踏まえていたので無事成功しました。せっかくなので、今後いろんな品種で試してみたいと思います。クラファンは今日時点で【14名】の方にご支援いただいております。ありがとうございます!皆さんももしよろしければ、焼きりんご試してみてください。 もっと見る
RINGO REPORTAGE|雪の中のりんごランタン
2026/10/15 21:262年前のことです。収穫が本当に終わらなくて、りんご園に雪が積もってしまったことがありました。周りの農家さんたちはすでに冬支度を終え、ストーブで暖まりながら倉庫などで選果の作業に励んでいる12月(仕事の早い人はそれすらも終わらせ、りんご以外の何かに取り組んでいるはず…)、私たちは雪のなか半ベソをかきながら収穫の作業をしていました。降った雪はりんご畑の土の上だけではなく、りんごにも10cmほどこんもり積もっていました。りんごは樹上で完全に熟しており、蜜もたっぷり入っていました。りんごの上の方は赤く、お尻の方はオレンジ色に染まり、蜜が入ることによって光をぼぅっと通す様子は、まるでランタンのようでした。実際に見たことはありませんが、きっと台湾のランタンのお祭りもこんな風に綺麗なんじゃないかなぁと感じました。ちゃんとしたカメラを持っていかなかったことを悔やみました(収穫をしに畑に来ているので、生産者としては正解かも)。綺麗だなぁと、ぼんやりとりんごを眺め続けているわけにもいかず、できるだけ雪の中での収穫を長引かせないためにも、疲れた体に鞭を打って収穫作業に当たりました。慢性疲労に加え、肩甲骨周辺の筋肉も悲鳴をあげていましたが、大きな怪我をせずに収穫を終えられた時のほっとした気持ちは今でも覚えています。無事に収穫を終えることができたのは、ひょこっと現れた茶トラの子猫のおかげかもしれません。この茶トラのことは、また別の機会にご紹介します。クラファンも残り【16日】、ご支援くださった方は【13名】になりました。本当にありがとうございます!雪の中で光るりんごを見た自分がいたことを、忘れないようにしないといけないなと思います。 もっと見る






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