
ブッチー武者です。今日は、私がこの12年で一番伝えたいと思ってきた、認知症の「不思議さ」についてです。
認知症になると記憶が失われていく、というのは皆さんご存じだと思います。けれど私が一番厳しいと感じているのは、記憶がなくなることそのものよりも、「時系列」がなくなることです。
私たちは普通、子どもの頃の自分、大きくなった頃の自分、そして今の自分が、一本の線でつながっています。だから、久しぶりに会った息子に「随分白髪が増えたね」と言えるわけです。ところが認知症になると、その線がつながらなくなる。頭の中にある息子は子どもの頃の姿のまま。目の前にいる、年を取ってシワの出てきた男性を見て、「これは私の息子じゃない」となってしまうのです。
先輩のお母様がまさにそうでした。もし先輩が小さい頃の姿で現れたら、きっと「あら、おかえり」と言ったのでしょう。でも人は、時を巻き戻すことはできません。
20歳の頃の記憶だけを切り取って、そこだけで話すこともあります。だから周りの人と話が合わなくなる。まるでタイムスリップをしているように、いろいろな時代を行き来しているのです。
介護をする側にとって、これは本当に辛いことです。毎日面倒を見ているのに、「あなたは誰?」と言われる。「よくやってくれるね」という言葉が欲しいわけではないけれど、自分のやっていることの価値が、だんだん分からなくなっていく。この辛さを、私は舞台で伝えたいのです。
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