<未だにアジア最貧国のひとつ>
2011年にアジア開発銀行が公表した資料によると、国民の半数を超える828万人が1日2ドル未満(地方では人口の9割が1日1ドル以下)で暮らす貧困層と推定されており、後発開発途上国に位置づけられています。
カンボジアと言ってもプノンペンなど都市部にいるとなかなか実感しづらい部分ではありますが、こういった事実が現実としてあります。
また、大きな問題のひとつに地雷や不発弾の問題があり、400-600万発残っているとされ、死傷者は大幅に減った現在でも年間100人前後(老人や小さな子供も含まれます)このままのペースだと完全撤去に100年かかると言われています。
こういった見える問題以外に、貧困や教育問題がなぜ起こるのかを辿っていくと、目に見えにくい問題があります。
そのような問題点は私たちの住むシェムリアップでも頻繁に見受けられます。
<学校は確かに必要>
カンボジア=貧困・内戦・ボランティア・学校建設等のイメージは未だにあると思います。
それらは確かに必要ですが「建てた後が肝心」と言われており、小学校だけでなく、その後を大切にする段階にきています。
観光ガイドは人気でこぞって語学を学びますが、語学を習得しただけでは仕事はありません。
手に職をつけやすい料理の学校(職業訓練型レストラン)も沢山できましたが、パソコン、経理、デザイン、車の整備工等専門性が高いものがもっとあって良いと思いますし、職人を育てるものづくりの学校がほとんどない事も不思議です。
この先のカンボジアの発展は、専門性の高い分野のスペシャリストが増えることがひとつのキーになってくると考えています。
<一度死んだものづくり>
カンボジアのものづくりは内戦で一度死んだと言われています。
建造物を見てもカンボジアのものづくりがいかに凄いかがわかりますが、内戦後は自国オリジナルのものが極端に少なく、多くのものを輸入に頼っている事が様々な問題の原因の1つになっています。
<ボランティアでは何も変わらない>
寄付に頼らざるを得ない、永遠にどこかから何かをもらい続けないと回らない既存のモデルでは状況を変える事は難しい事に多くの人が気づき、沢山の企業や団体が持続可能なサイクルを生み出す為挑戦しています。
<貧困=飢餓ではない>
世界最貧国、1日2ドル以下で暮らす貧困層が多い等と言われていますが、多くの人が持つカンボジアのイメージとは異なり、農家が多いこともあり飢餓に瀕する程の人は実は少なく、普通に働けばご飯は食べられるという状況があります。
<ご飯は食べられるが現金収入が少ない>
それなりに働けばご飯は食べていけるが、現金収入が少ないというのが問題点の一つです。
ミシンが買えない、農業の機械が買えない、仕事に行く為のバイクが買えない、病気になったが医者に行けない、教育にかかる費用が賄えない、等の問題です。
→現金収入を得るための知識・スキル・実業が必要
→正しい知識や情報さえあれば飛躍的に良くなる環境はある
<専門職が少ない>
カンボジア・タイで何百という業者と関わり感じた事ですが、近隣諸国と違いカンボジアにはコピペした様に同じ業種のお店が並んでいます。
首都プノンペン以外の地域では顕著です。
新しいものが増えてきたとはいえ、ユニークなものは海外企業の一人勝ちが多く、原材料等も中国・タイ・ベトナム等からの輸入がほとんどです。
輸入に頼る結果原価も上がり、収入に反して物が高いという現象が起こります。
また、内戦中はメガネをかけていただけで殺されたという有名な話があります。
密告制度により、知識人や目立つ人は皆殺しにされました。
これらは今も潜在的に人々の意識に残っているのではないかと感じたひとつの経験があります。
2年前、カンボジアになかったとあるものを仕立てる為テイラーを回った際、60件以上のテイラーに断られたことがありました。
その理由のほとんどが「やったことがないものだから」「失敗したら怖いから」「まわりのお店はやっていないから」というものでした。
これはそれらを体感して立てた私のひとつの仮説です。
→目立てば殺された歴史
→人と違う事をしたがらない・挑戦しない
→街には同じ業種が溢れる・ユニークなものがない
→競争が生まれない
→品質が上がらない、価格が下がらない(逆に価格競争だけになる)
→産業が育たない
→雇用・現金収入が少ない
→教育を受けさせる余裕がない
こういったものが負のスパイラルを作っている一つの要因になっています。
<足りないものが多い=伸び代が多い>
ただ、足りないものが多いという事は、伸び代も多い、ということです。
それはカンボジアの大きな希望でもあります。
私たちはそこにひとつのモデルを作ることでその流れを変えようとしています。