改めましてこんにちは、プロジェクトチームを代表してご挨拶いたします、大路紘子です。私は、2018年より、カンボジアのNOM POPOKという事業の代表として、カンボジアの子どもの栄養改善を目指して、健康的なお菓子の配布と学校での栄養授業を行っています。

昨夏より、オンラインで集まった有志の皆さんとともにカンボジア食育プロジェクトを立ち上げ、カンボジアの小学生のための食育絵本と新しいお菓子を作るプロジェクトをすすめてきました。32の公立小学校・フリースクール・孤児院・病院を対象に、これらの学校や病院に通ったり、孤児院で生活する約950名の子どもたちに、完成した絵本とお菓子を届けることをめざして、必要な費用をクラウドファンディングで募りたいと考えています。


カンボジアの社会問題 子どもの栄養不良

カンボジアは、低栄養が問題とされる国の一つです。5歳未満児および学齢期の子どものおよそ3人に1人が、慢性的な栄養不足の指標である低身長とされています。また、急性的な栄養不足の指標である低体重の子どもの割合も世界と比べて高いです。ある地域では、学齢期の子どもの75%が低体重である(Foundation for International Development/Relief (2017) “Development of Recommended Dietary Allowance and Food-Based Guidelines for School-Aged Children in Cambodia”)ことを示したデータもあります。

なお、グラフ上の数値はすべて5歳未満児のデータですが、カンボジアの学齢期の子どもの低身長は33%、低体重(10歳以下)は15%となっており、学齢期の子どもたちの多くも同様に低栄養状態にあることがわかります。


また、低栄養だけが問題ではありません。近年、経済発展の影響による食事内容やライフスタイルの変化により「栄養転換」が見られ始めています。都市部と農村部の間で、さらには同じコミュニティや家庭内においても、相反する低栄養と過剰栄養が同時に存在する「栄養問題の二重負荷」が、世界的に問題になっています。カンボジアでも、都市部を中心に太りすぎの子どもが増えています。多くの新興国と同様、カンボジアは現在、栄養不足と栄養過多(太りすぎや肥満)の両方の問題に取り組まなければならない状況にあるのです。


栄養教育の不在

これまでにカンボジア政府は、パートナー援助団体や企業とともに、妊婦や乳幼児の栄養改善への取り組みを進めてきました。しかし、学齢期の子どもたちへの栄養指導はまだまだこれからです。教師を含むおとなは、食や栄養についてきちんと学ぶことなく今に至るため、私たちが子どもの頃に学校で当たり前のように受けていた食育の授業などは、カンボジアではまだ行われていません。

また、食育の「生きた教材」と言われる学校給食も、カンボジアでは一般的ではありません。カンボジアの公立校では、児童数に対して教師や教室の数が少ないため、学校は午前と午後(学校によっては夕方も)のシフト制となっていて、子どもたちは割り振られた時間帯にのみ登校するため、学校で給食を食べるタイミングがなく、環境も整っていないのが現実です。


お菓子 だいすき!!

他方、学校の中や周辺には、エナジードリンクやジュース、揚げ物やスナック菓子などを売る売店が並んでいます。子どもたちは、授業の合間にここでお菓子を買って食べることが習慣化しています。中には朝ご飯を食べずに学校に来て、お菓子を代わりに食べる子がいたり、午前中に学校でお菓子を食べたから、おうちでお昼ご飯を食べられなくなる子がいたり…。 学校だけではありません。至るところにこうしたお菓子類を安い値段で扱う売店があり、お菓子は、子どもたちの食生活から切り離すことのできないものになっています。


子どもたちがニコニコしながら頬張る、濃い色や味のものは、確かに魅力的です。しかし、それを継続的に摂取することが、子どもたちの将来に大きな負担をしいることになるのではないか。知っていれば避けられることがあるのではないか。そう思うと、子どもたちが健康的な食選択をできるようになるためのサポートの大切さに気付きます。


栄養は権利
子どもたちの未来のために、栄養教育は大切な投資です。



栄養授業+お菓子=>栄養改善

こうした状況を踏まえて、私は、これまで3年に亘って、栄養授業と健康的なお菓子を組み合わせた栄養改善活動に従事してきました。この経験を通して、食と栄養の教えに、子どもだけでなく、先生たちおとなも大いに関心を寄せてくれること、また「生きた教材」としてお菓子を切り口にすることの効果を身をもって感じてきました。もちろん、私たちの授業をうけたから、私たちのお菓子を食べたからと言って、子どもたちの食選択がすぐに変わるわけではありません。それでも、子どもたちが、売店で買ったお菓子に含まれる砂糖の量を気にするようになったり、ヨーグルトを使ったお菓子を体にいいから進んで食べたいと言うようになったりする小さな変化を見てきました。

これまでの活動では、学校の先生方の理解を得て、通常の授業の時間を一部を借りるスタイルで行ってきました。これ自体、カンボジアの公立校においては、大変に新しい取り組みです。しかし、これでは時間的な制限や、対象となる子どもの数が限られること、子どもの食事に関与している保護者への働きかけが難しいことなどの課題もありました。そこで、伝えたい食育メッセージを絵本にして、子どもたちに配布し、自宅で保護者も一緒に何度も読み返せるようにしたいと考えるようになりました。


絵本とお菓子レシピの完成

そこで、管理栄養士、保育士、保健師、教師、イラストレーター、音楽家など様々な専門を持った方々と協力して、カンボジアの子どもたちに、食育絵本と健康的なお菓子を配ることを決めました。2020年6月のキックオフ以来、絵本チームとお菓子チームに分かれ、時に連携して、準備を進めてきました。


(スライドに登場する以外にも、絵本やお菓子の作成にかかわっているメンバーが大勢います!)


まず、絵本チームでは、メンバーがそれぞれ持つ強み、たとえば、栄養や保健の知識、子どもの関心を引きつけるポイント、文字がまだしっかり読めない低学年の子どもの理解が進む絵や構図、カンボジアの生活・食習慣など、集まった皆がそれぞれに持つ知見を共有、合体して、何度も議論を重ねながら、絵と文を完成させました。結果、カンボジアの子どもたちにとって、違和感なく、楽しんで学べる、食育絵本を作り上げることができたと自負しています。

こうして出来上がった絵本は、「体にいいもの何食べる?」というタイトルです。お菓子ばかり食べて食事をしっかりとらない少年が、病気になって栄養のある食事の大切さ、そして病気になりにくい体を作ってくれる野菜パワーに気付き、しっかり食事をとるように頑張る、というストーリーです。完成した絵を使って、クメール語の音声付きビデオ紙芝居(日本語字幕あり)を作りましたので、ぜひご覧ください。子どもたちに配る絵本は、この絵にクメール語の文を挿入して、印刷・製本したものとなります。




また、絵本で野菜の大切さを伝えていることを踏まえ、一緒に配るお菓子にも、野菜を使うことを決めました。カンボジアと日本の双方で試作し、メンバー間で意見を交わしながら、人参をつかった米粉のスコーンのレシピを完成させました。人参を活かした食欲をそそる明るい色の、ほんのり甘いおやつになりました。

絵本を読んだ子どもたちが、「野菜パワーってすごい、でもやっぱり、野菜は苦手…」と思ったとしても、この人参スコーンを食べれば、「あれ、人参っておいしい~」って思ってもらえるようなものに仕上がりました。


3個セットで1袋とし、食育絵本の登場人物ミエンちゃんとタナオくんのイラストが描かれたシールを付ける予定です。


最後の一押しを

こうして、絵本もお菓子も、配布の準備が着々と進みました。

しかし、最後の一歩に難関が待ち受けていました。

このプロジェクトは、とある企業から資金援助を約束されて始まりましたが、新型コロナウイルスの影響もあってか、残念ながら援助はいただけないことになってしまいました。しかし、せっかく出来上がった絵本原案とお菓子のレシピを無駄にしたくない、そして何よりもカンボジアの子どもたちのための栄養教育の機会を届けたい、その思いから、クラウドファンディングを通して資金集めに挑戦することを決めました。


実施体制

本プロジェクトのメンバーの多くは日本在住ですが、私自身を含めNOM POPOKに所属する2名がカンボジアに在住しています。お菓子の製造および配布、絵本の印刷、製本および配布は、私たちがカンボジアで行います。NOM POPOK から学校や孤児院に直接配布する(絵本とお菓子の両方を配布します)方法、NOM POPOKから病院に直接配布する(患者さんへの食べ物の配布は認められませんので、絵本のみの配布となります)方法、現地で教育分野に長い活動歴のあるNGO団体を通して学校に配布する(地方にある学校が多いため、消費期限のあるお菓子は配布せず、絵本のみの配布となります)方法で実施します。このため、お菓子と絵本の配布数に差異があります。

配布先の詳細は、以下をご覧ください。


寄贈先一覧


資金の使い道  

合計:360,000円


実施スケジュール

8月下旬 クラウドファンディング終了
9月上旬 絵本翻訳完了
9月下旬 絵本製本印刷完了
10月上旬~ 絵本とお菓子のお届け*
10月下旬~ リターン発送*

* 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府の方針により、学校へのお届けが予定より遅れる場合があります。ご支援者様には、現地の状況を適宜報告いたします。

<All-in方式で実施します。>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


栄養改善に国境はありません。
カンボジアの子どもたちに健康な未来を届ける活動に、ぜひ加わってください。



  • 2021/10/31 14:17

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