日本とベトナムの社会的共通課題
における鍼灸の活用
-社会の高齢化と災害を生き抜くために-
Ⅰ 日本とベトナムの21世紀の保健医療政策の動向
政策の基礎となるデータ
・国民国家である近代国家において,科学的根拠に基づく政策は,各国の人口動態を含む各種統計学的データに基づいて,課題設定,政策立案,政策決定,政策実施,政策評価されている.
・国際連合(United Nations: UN)が掲げる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の目標3「すべての人に保健と福祉を」も,世界各国の人口動態を含む各種統計学的データに基づいている.
・世界保健機関(World Health Organization: WHO)と国際連合児童基金(United Nations Children‘s Fund: UNICEF)によるアルマ・アタ宣言(Declaration of Alma-Ata)を引き継ぐ,2018年10月に採択されたアスタナ宣言(Declaration of Astana)も,世界各国の人口動態を含む各種統計学的データに基づき,SDGsに強い影響を受けている.
20世紀と21世紀の特徴と差異
①20世紀までの日本は,多子若齢・人口増大社会で,患者は若く,「効率的」に「治す医療」が必要とされ,近代西洋医学が中心であった.
②21世紀からの日本は,超少子高齢・人口減少社会で,患者は老いており,人は「生・老・病・死」を免れないのを前提に,「非効率的」な「傍らで見守る医療」が必要とされ,それが中心となる.
③20世紀の概念や価値観だけでは行き詰る,既に「医療」の枠組を超えた,治せない「敗北の医学」の世紀が21世紀である.
21世紀の保健医療政策
【政策のパラダイムシフト】
•「治す」20世紀型保健医療政策(病院型)
•これまで,質・量,共に必要とされた中心的政策.
↓ ↓ 移行 ↓ ↓
•「傍らで見守る」21世紀型保健医療政策(生活支援型)
•これから,質・量,共に必要とされる中心的政策.