日本とベトナムの社会的共通課題
における鍼灸の活用
-社会の高齢化と災害を生き抜くために-
Ⅱ 鍼灸の医療経済学的評価の現状
Evidence-based Medicine: EBMで知り得たこと
・安全性
・有効性
・経済性
鍼灸治療の医療経済評価の順位
鍼
1.腰痛
2.頭痛
3.変形性疾患,アレルギー性疾患,産婦人科系疾患,狭心症
4.消化器系疾患,帯状疱疹後神経痛,鍼麻酔
5.うつ病,尿路感染症,外傷性脳損傷,凍結肩,慢性頸部痛,慢性疼痛
灸
1.帯状疱疹後神経痛
2.骨盤位
医療費節減事例1
【鍼治療による狭心症治療の医療費節減】
・1997年5月を観察期間終了とし,デンマークの個人クリニック外来を受診している狭心症患者105名に対し,4週間に12回,薬物療法に加え鍼治療とセルフケア教育を3~126ヶ月間行った.
・患者1人当り5年間で$32,000(入院費90%,外科手術70%)が削減された.
・治療前8%に比べ,治療1年後で53%,5年後には69%の患者が制限のない生活を送れ,心疾患による死や心筋梗塞のリスクの増加もなかった.
・これらは社会的費用削減の可能性を示唆していると考えられる.
医療費節減事例2
【鍼治療による慢性疼痛治療の医療費節減】
・ドイツ連邦保険医協会と複数の保険会社と大学は,2000年12月~2005年3月の間,1万人以上の医師によって,合計304,674人の患者(男性34.5%,年齢53.1±13.8才と女性65.5%,年齢49.5±14.2才)が,慢性疼痛(臀部及び膝の変形性関節症,腰痛,頸部痛,頭痛)に対し,3ヶ月間に平均10±3回の鍼治療を受けるRCTを行なった.
・通常医療に鍼を併用することは安全で効果的な治療であることが明らかになった.
・併用治療として鍼を用いることは,通常医療単体よりも高価であったが,費用対効果は単位QALY(Quality Adjusted Life Years;生活の質を調整した生存年)当り€10,000~€18,000の範囲(腰痛:€10,526,膝OA又は股OA:€17,845)で,欧州で医学的治療を保険システムに導入する際の国際的基準値(単位QALY当り最高€50,000もしくは£30,000を上限)を適用すれば,鍼治療は費用対効果的であると考えられる.
医療費節減事例3
【鍼治療による健康保険組合の医療費節減】
・肉体労働主体の一事業所の勤労者で頸肩部痛,腰痛,膝痛などを訴える117名に対し鍼治療を行い,各疼痛が半減した者は約8~9割であった.
・治療開始前後のPOMSテストでは,「緊張」,「抑うつ」,「怒り」,「疲労」,「情緒混乱」のスコアが有意に減少し,「活動性」の変化はなかった.
・鍼治療期間中,運動器疾患による医療機関受診の延べ人数と日数は半減し,健康保険医療費は約1/3となった.
・同種他事業所で同様の検討を行ったが,運動器疾患に関する諸要因に顕著な変化はなかった.