日本とベトナムの社会的共通課題
における鍼灸の活用
-社会の高齢化と災害を生き抜くために-
Ⅲ 社会の高齢化における鍼灸の活用
一般的な高齢者の身体的特徴
①予備力の低下(病気にかかりやすくなる)
②体の内部環境の恒常性維持機能の低下
③複数の病気や症状をもっている
④症状が教科書どおりには現れない
⑤現疾患と関係のない合併症を起こしやすい
⑥感覚器機能の低下
高齢者の疾患の特徴
①一人で多くの疾患をもっている
②個人差が大きい
③症状が非定型的である
④水・電解質の代謝異常を起こしやすい
⑤慢性の疾患が多い
⑥薬剤に対する反応が成人と異なる
⑦生体防御力が低下しており,疾患が治りにくい
⑧患者の予後が医療のみならず社会的環境に大きく影響される
高齢者に多い疾患と疾病
フレイル(虚弱),サルコペニア,ロコモティブシンドローム,老年症候群,消化器がん,血液疾患,関節リウマチ,認知症,骨粗鬆症,変形性膝関節症,変形性股関症,大腿骨頸部骨折,変形性脊椎症,後縦靭帯骨化症,脊柱管狭窄症,筋萎縮性側索硬化症(ALS),褥瘡,疥癬,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病,脊髄小脳変性症,シャイ・ドレーガー症候群,早老症(ウェルナー症候群等),多系統委縮症,糖尿病と合併症,脂質異常症,心疾患,脳血管疾患,閉塞性動脈硬化症,慢性閉塞性肺疾患(COPD),虚血性心疾患,高血圧,慢性腎不全・CKD,前立腺肥大症,摂食・嚥下障害,喘息,嚥下性肺疾患,肺炎(嚥下性肺疾患以外),感染症,帯状疱疹,白内障,緑内障,消化器疾患,歯・口腔疾患,内分泌・代謝疾患,婦人科疾患,皮膚疾患,眼疾患,耳鼻科疾患,泌尿器疾患,精神疾患.
長期臥床・非活動による廃用症候群
高齢者の健康に関わる四要因と疾患体系
動く
筋骨格系,心血管系,呼吸器系,神経系
食べる
消化器系,呼吸器系,内分泌代謝系,泌尿器系,神経系
交わる
神経系,筋骨格系,心血管系,呼吸器系, 泌尿器系
寝る
泌尿器系,神経系,呼吸器系,皮膚系
日本における鍼灸の機能的多様性
鍼灸は「医療」として,疾病の治療に用いられる.
鍼灸は「慰安」(癒し)として,ストレス管理に用いられる.
鍼灸の独自性は,「医療」であり,「慰安」(癒し)であること.
鍼灸の付加価値は,“Cure” から“Care” まで対応できること.