魔法つかいKOJIさんに「魔法つかい」という職業へのこだわりの理由と、講座の詳細に迫ってみました。Q1 現在のお仕事やこれまでの活動の内容を教えてください。デビュー当時はイベントやパーティで魔法を披露するパフォーマーとしての仕事がメインでした。いわゆるマジシャン業です。その後徐々に『魔法』というコンセプトを中心に幅広く活動するようになっていきました。マジシャンというよりも「魔法つかいの男の子がパーティに参加していたら」という設定で、観客の中に溶け込んだ状態からその場でショーを見せるスタイルをつくりあげていきました。娘が生まれてからはショーの仕事並行として、『魔法つかい』が生み出すコミュニケーション術や、それを親子関係に応用する技術に関するワークショップや講演、企業セミナー、執筆などの仕事が増えてきました。また、仕事とは別に、お金を介さない価値交換プロジェクト『魔法通貨』や、魔法を通して日本中に友達のネットワークを広げる旅『魔法紀行』を続け、プライベートも仕事も魔法を中心に回っています。Q2 子ども時代はどんなことに熱中していましたか?5歳の時に「魔法つかいになりたい!」と思う原体験があったのですが、どうしたらなれるのかわかりませんでした。その後なんとなく「みんながビックリするくらいすごいことができればどんなジャンルでも魔法つかいって呼ばれるのではないか?」と思い、色々なことにチャレンジしました。親の勧めで始めたピアノや水泳はあまり気乗りしませんでしたが、自分の意志で始めた空手は途中ブランクもありましたが小4から大学生まで続けました。音楽も志ざしましたが、才能の無さを実感してあきらめました。バスケもハンドボールもいまいち上達せずにあきらめました。そしてついにマジックに出会い、「あ!これが一番魔法つかいに近い仕事だ!」と閃いたのは高校1年生の時。親からは常に「飽きっぽくてなんでも途中で辞めちゃうから、そんなんじゃ何も上手くいかないよ!」と言われてきたのですが、マジックだけは違いました。今思えば、いくら飽きっぽいと言われようとも色々なことにチャレンジしたからこそ出会えたのだなぁと思っています。五歳の頃(アメリカにて)Q3.どうして魔法つかいになったんですか? 4歳か5歳のころアメリカに住んでいた時のことです。夕方、屋外でディズニー映画の『ファンタジア』を見るイベントが催されていました。いろいろな人種、宗教、国籍の人が集まっていたせいか、人々がそれらのグループごとに固まっていくつもの壁ができていました。険悪な雰囲気ではないけれど、なんとなく他のグループと必要以上に近づかないように、子どもがあまり離れないように気を配っていました。大人になった今考えると当たり前のことなのですが、当時は子どもながらにその状況に違和感と不快感を感じていたのです。そして、他の子どもたちもように感じてると思いました。大人たちが創り出している見えない壁。そんな存在がとにかく嫌だった記憶があるのです。しかし、それが解消されるできごとが起こりました。映画の中でミッキーが魔法をつかうシーンが映し出されると、いたるところで子どもたちが「魔法つかいごっこ」を始めました。言葉はわかりませんでしたが、全身から溢れる子どもたち特有の言語で一目瞭然。「ぼくが魔法をかけたら君は勝手に踊りだしちゃうんだよ!」「ぼくが魔法をかけたら。。。」魔法に興奮した子どもたちの魔法ごっこに壁はありませんでした。次第に子どもたちの笑顔が広がっていきました。その様子を見ていた大人たちは、「どうやら今日は大丈夫そうね」と安心したのか、会場の中にあった無数の壁が溶けるように消えていったのです。「魔法を見ると、大人も子どももみんなひとつになっちゃうんだ、スゴい!」その時そう思ったのが今の自分のルーツです。それが人生で初めて「魔法」を体感した瞬間です。それをきっかけに「魔法つかいになりたい!」と思うようになりました。その想いは、マジックとは関係なく、「一瞬でみんなの心の壁を溶かしてしまう魔法」を使えるようになりたいという願望でした。ですから、最終的にマジックという芸能を選びましたが、目的はマジックを見せることではなく「みんなの心の壁を溶かして、偏見のないただの人にしてしまう魔法」こそが、ぼくの使いたい魔法です。そういう意味を込めて、「魔法つかい」にこだわっています。Q4 こどもや学校の先生向けに魔法を伝授する活動もされていますね。魔法にはどんな力があるのでしょうか?魔法の直前には、みんなの視線や注意が一点に集中します。そして魔法が起こるとみんなの頭の中が「!」と「?」に占拠されます。人種や宗教、肩書き、性別、年齢などのあらゆる壁が溶けてしまい、みんなが「ただの人」としてその空間を共有する瞬間です。その瞬間というのは、みんなの心が裸になるので相手の心に直接アクセスしやすい状態になります。ビックリさせておしまいではただのマジックですが、その瞬間を利用して相手と理想的なコミュニケーションをとることも可能なのです。まるで魔法のように。Q5 「こどもスタートアップ塾」で開催いただく講座「どこにもない仕事をつくる魔法 ~なぜマジシャンではなく、魔法つかいなのか」ではどんな内容になりますか?「楽しむ側から、世の中に魔法をかける側になる」ような内容を考えています。まず最初に15分ほど、僕の魔法のショーを体験していただきます。次にQ3で答えたように、なぜマジシャンではなく魔法つかいと名乗るかについて説明します。ここで「自分らしいってなに?」を考えるきっかけをつくります。ただ目立つだけではなく、どうすれば自分らしく目立つことができるのか?を考えて「自分らしさ」を見つけてほしいと思っています。そして最終的にこどもたちが魔法をかける側になり、みんなに喜んでもらうための動画を制作します。そこで考えたことを元に、たくさんの人に喜んでもらえるの会社を、子どもたちと一緒に作ってみたいと思います。
「こどもスタートアップ塾ではどんなWEBサイトがつくれるんですか?」という質問をいただきました。まだ作っていないものを説明するのがとても難しいのですが、Blue‐puddleさんの事例を見ていただくのが一番良いかと思います。ここにあるように、一般的な会社のホームページにある内容は作ります。それから事業の内容はイラストなり、動画なり、商品サンプルなり何かしらで表現することになります。きっとどの子も初体験!初めて聞く言葉もたくさん。そして知らなくてもアウトプットを求められます(笑)そしてもうひとつ大事にしたいのはこどものつくったものをデジタル技術で圧倒的に美しく見せること。すると今まで見えてなかった価値が見えてきませんか?これはWEBサイトがホンモノ感たっぷりにデザインされないと見えない価値であり、結果として大人とこどもの距離を縮めてくれると信じています。もっと詳しく見たいよ~という方はBlue‐puddleのHPからチェックしてみてね。
「こどもスタートアップ塾」のジェネレーターを担っていただく 市川力さん。長年こどもたちの学びの場を作って来た市川さんの考える「学び」って何だろう?に迫ってみました。Q1 これまでのお仕事や活動の内容を教えてください。大学・大学院時代には、認知科学という学問に出会い、人の知識がいかにつくられるかに深い関心を持ち、研究しました。1990年、先輩に誘われて、日本人駐在員の子どもを対象とする学習塾を設立するためにアメリカに渡り、それから13年間、日本語と英語をともに習得するのに苦労する日本人の子どもたちの学びを支える仕事をしました。帰国して一年後の2004年、偶然の出会いから、東京コミュニティスクール(東京都中野区)という小学生対象の全日制オルタナティブスクール(いわゆるフリースクール)の立ち上げに関わり、校長となりました。といっても、校長室にでんと座っているのではなく、子どもたちからは「おっちゃん」と呼ばれ、日々、子どもたちとともに探究する学びに明け暮れました。と同時に、大人と子どもが一緒になって学ぶあり方を研究してきました。2017年3月に校長を退任し、現在は、「探研移動小学校」という屋号で、決まった場を持たず、いつでも、どこでも、大人と子どもが一緒になって探究する「野」の学び場が作れるということを提唱し、実践を始めました。その活動の一環として、NHK for School のウェブコンテンツ『メタモル探偵団』ならびに NHK Eテレ高校講座『総合的な探究の時間』 に「おっちゃん」として出演しながら監修もしています。東京コミュニティスクール時代。子ども達の表情に注目! ***Q2 こどもの頃はどんなことに興味がありましたか?絵を描くこととお話を作ることが両方好きで、わけのわからない空想絵本シリーズを作っていました。それを群馬に住む祖母に定期的に送って読んでもらったのを覚えています。育った場所は八王子で、自然の野山がたくさん残っていながら、そこがどんどん宅地開発され、破壊されてゆく時期でしたので、友達と一緒に立ち入り禁止の場所に入り、日々探検という名の「抵抗運動(笑)」をしていました。自分たちが秘密任務を負っていて、敵に見つからないようにスパイ工作活動をしているというしょうもない遊びに熱中していたのです。11歳。八王子の野山で探検に明け暮れる、イタズラ坊主全開の頃。 ***Q3 現在やっている探研移動小学校とはどんなものですか?「探研」とは、自分が思いついたことを素直に「探索」し「研究」していくこと。「移動」とは、いつでも、どこでもそんな学びはできるということ。「小」学校とは、「小」人数のグループで、「小=ささいなこと」からスタートし、「小=ゆっくり」でも、しつこく追究し続ける。そんな学びを行うという意味です。大人と子どもが一緒になって、好奇心の赴くまま、面白がり、表現し続けることが、大人にとっても、子どもにとっても深い学びを引き起こします。いつでも、どこでも、誰とでも、ともにたくらむ学びに没頭するのが探研移動小学校です。Q4 こどもたちを取り巻く社会がこんな風になったらいいのに、と思うことはありますか?あればその内容を教えていただけませんか?子どもたちが本来持つ感受性を生かす社会になったらいいですね。それは、変化することを「不安」ととらえずに「面白がる」感性を持つことで成し遂げられるでしょう。そんな感性を支えるのが好奇心。いつまでも好奇心を全開にして生きてゆく人たちが集まる社会にしてゆきたいですよね。そのためには、ゆったり、大らかな気持ちが社会にあふれていないといけません。高校生となった卒業生と山梨のお寺で今考えていることやこれからのたくらみを自由に語り合う「すごすプロジェクト」の一コマQ5 「こどもスタートアップ塾」で開催いただく講座「学校かもしれない ~学校を解体せよ」というタイトルは、元校長先生だった市川さんのどんな思いが込められているのか、気になる人も多いと思います。どんな講座にしたいか詳しく教えてください。学校とは、本来、学びが起きる場所すべてを指すと私は考えています。なので、そもそも学校を文部科学省から認められた学びの場のみに限定するということ自体にずっと違和感がありました。もっと言うと、学校には教室があるとか、先生が教えるとか、学校の当たり前と思われていることを一つひとつ、本当にそうかな?とゼロベースで考えることが大事。それを私は「スクールフリー」と言ってきました。つまり、いわゆる「学校」に伴う常識にとらわれないということです。今普通に学校と呼ばれている場所も学校かもしれないが、別にそこに縛られる必要はない。むしろ、すべての学びや教育を既存の学校に押しつけてしまっていることが、問題なのです。だから、安易に誰かのせいにするのではなく、どうしたらもっと面白くて、生き生きした学びの場をつくってゆけるか、自ら担い手になる覚悟で考える必要があるのです。学校批判、他者任せとは正反対。子どもたちとともに、どんな学びを、どんな風にすると面白そうか、できる、できないとか、いい、悪いとかに縛られず、まずは存分にファンタジーの羽を広げて、大胆な学びの場を構想したいと思っています。
プロジェクトスタートから1ヶ月。ただいま折り返し地点にきました。この間いろんな質問をいただいたので、何回かに分けて質問への回答をアップしていきますね。「こどもスタートアップ塾の目的はこどもが会社を作ることなの?」という核心に迫る質問を何人かからいただきました。そんなに深く読み込んでくれる方もいるとは、すごく嬉しいです。「こどもスタートアップ塾」の最終目標は「こどもが主体性をもって参加できる社会の実現」です。なんのこっちゃ?だと思いますので、ここは大御所NY州立大教授のロジャー・ハートが提唱する「参画のはしご」つかって説明します。「参画のはしご」とは、こどもが何らかの活動をするときの参画の度合いを8段階にわけて説明しています。低い方から説明すると1.操り参画 2.お飾り参画 3.形式的参画 あたりまでは、「こどもがいるとなんかいいことしてる感出るからこどもを参加させよう」という大人のいやらしい意識が働いていて、本当の意味でこどもたちは参画できていない状態です。今の日本に一番多いパターンで、「うちのイベントにこどもDIY部の子に参加してもらえないか」というオファーもありますが、正直このレベルには関わり合いたくないです。次の段階で4.与えられた役割の内容を認識した上での参画5.大人主導で子どもの意見提供ある参画6.大人主導で意思決定に子どもも参画この中盤辺りは、学校とか地域の中で「このままじゃいけない、何か変えていかなきゃ!」と思っている意識の高い大人が頑張っていて、今増えている領域。最高峰は⒎ こども主導の活動8.こども主導の活動に大人も巻き込むこの辺りは日本ではまだ神領域です。最終目標の「こどもが主体性をもって参加できる社会の実現」=「こども主導の活動に大人を巻き込む」が普通になればいいのに、と思っているわけです。ちなみに「こどものまちをつくろう」は「⒎ こども主導の活動」になります。ただ私たちのやり方はパンクでロックで、日本に早すぎた。何度かやっていくうちに、理解してくれる人はまだ少ないという現実を知ったわけです。なので少し参画のはしごを一段降りて「6.大人主導で意思決定に子どもも参画」を実現するのがこの「こどもスタートアップ塾」です。(なぜ起業なのか?は話がややこしくなるので割愛します)「6.大人主導で意思決定に子どもも参画」ではあるんですが、部分的に「7.こども主導の活動」になりうるところがある。それが「WEBページを作るデジタルツールの活用」です。デジタルネイティブであるこどもたちは、動画もプログラミングもあっという間にできるようになります。大人の場合はそうもいきません。つまりデジタルツールで大人を超えて参画のはしごを半歩上がることができるわけです。そのためにデジタルツールはこども向けにカスタマイズされ、圧倒的に美しくデザインされる必要があります。なぜなら大人が「こりゃかなわない」というレベルに到達することが重要。こどもをお飾り参画させて、なんかやった気になっている大人たちに、見方を変えてもらおうじゃないですか。大人にできないことをできる「一人の人間」として、認めてもらおうじゃないですか。社会や学校が変わらないと、苦しむのは親だからね、ほんと。※参考文献:萌文社「子どもの参画」ロジャーハート