このたびの合宿では日本中 あちこちから送り届けて頂いた 海幸・山幸を頂きながら創作を進めています。 　　　　　　 地元の方たちも日ごとに 新鮮なお野菜を分けてくれます。 葱・アスパラ・荏胡麻は畑ごと採り放題。 　　　　　　 時にはメンバーがお散歩がてら茸や ミズ・ワサビ・ムカゴなどを採ってきたり ひと籠たっぷりと栗を拾ってきたりします。 　　　　　　　　 日ごと みんなの お氣に入りは標準日本食。 玄米ご飯・納豆・お味噌汁・しゅわさかさん。 そして熟成本みりんに浸したピリ辛の糠漬け！ 　　　　　　　 大根・ごぼう・茄子・かぼちゃ・蔓むらさき アスパラ・人参・瓜・夕顔・シメジなど よっつの甕でたっぷりと ぬか漬けを育てます。 　　　　　　　　　　　　　　　 トルコ・イタリア・フィリピンなど 「おいしい国」からやってきた出演者たちが 健やかな食材で創ってくれる多彩な料理も大好評。 　　　　　　 海外メンバーはみんな日本へ来てから 贅肉がたいぶ落ちて気分も晴れやかになり 食のおかげで体調が整ってきているそうです。 　　　　　　　　　　　 夕餉時にはみんなで大きなひとつの輪になります。 お酒を呑むときは、大きなひとつの杯で廻し呑み。 ふたりの運転係さんには涙を呑んでもらいます。 　　　　　　　 時には、することがあまりに多すぎて 食事をする時間さえないメンバーもいます。 温泉地にいてもお風呂に入る時間がなかったり……。

海外からの出演者たちは 皆それぞれにダンスの達人です。 日ごろから何かといえば踊りだす人もいます。 　　　　　　 『東風ふくなか、ちいさな星』には いわゆるダンスっぽいダンスのほかにも ささやかなプチ・ダンスがちりばめられています。 　　　　　　 誰でもゆる～くできるようなダンス。 身ぶりに近いような たやすいダンス。 日ごろから誰でもしているような動き。 　　　　　　 どちらかといえば身ぶりに近い動きも含め このたび舞台に登場するダンスはどれも 出演者たちの想いとはっきりひと繋がりです。 　　　　　　　　 このダンスはどこから生まれてくるのか？ このダンスを生みだした原動力は何なのか。 どうしてこんな動きになっちゃっているのか。 　　　　　　　　　 どんなにささやかな身振りであっても その身振りを生み出した溢れる想いがあるんです。 大切な想いをひとつに分かちあうためにダンスです。

合宿では色んな言葉が飛び交います。 英語のほかフランス語やポルトガル語・ イタリア語・スペイン語がよく聞こえてきます。 　　　　　　　　 ほかにも日常的にドイツ語や フロマン語・トルコ語などが登場してきます。 舞台では、さらにたくさんの言葉が登場します。 　　　　　　　　 海外からの出演者たちが舞台で話す言葉は すべてこの舞台のために それぞれが書きおろした母国の言葉です。 　　　　　　　　 ブルキナファソ出身のボヤマダさんは 西洋語のほかに５つのアフリカ語を話せます。 舞台では主にビリフォール語を話します。 　　　　　　　　 フィリピンから来たアンジェロさんには 舞台で公用語のタガログ語ではなく 出身地のイロカノ語を話してもらっています 　　　　　　　　　 日本の出演者たちも地元の言葉を話します。 阿波弁、関西弁、上越阿賀の國言葉も登場します。 東北弁では澤入集落の言葉が登場します。 　　　　　　　　 今回の舞台で特に珍しい言葉はラテン語。 語り手のジョニーさんは子供の頃から思春期にかけて お母さんにラテン語を教わっていました。 　　　　　　　　 現在すでに語り手のいなくなってしまった この美しい古語を話すときジョニーさんは 温かく懐かしい不思議な風格を滲ませます。 　　　　　　　　　 なに言ってるのか全然わからないよー　 と客席で思って頂いてまったく大丈夫、 意味がわからなくても すぐ氣にならなくなります。 　　　　　　　　 実は ある場面で皆がそれぞれ何を言っているのか ほかの出演者たちも、演出係も、 はっきりとは知らないままだったりするんです。 　　　　　　　　　　 誰かが大切なことを話しているとき 何を言っているのかわからなくても 言葉を超えて胸の想いは伝わってくる。 　　　　　　　 頭でわからなくても通じる心があります。 言葉を超えて大切な想いを分かちあう舞台。 ひとつに通じあう心を大切にして参ります。

合宿のなかではメンバーそれぞれに役割があります。 お料理を指揮する人、地元の方との交友を担う人、 洗濯担当、掃除担当、ブログ担当、綾紙担当。 　　　　　　　　　 皆でしている唯一のことは、ひとつの舞台を創ること。 演出係は日ごとにプランを立てて場面を作り直し、 作品全体をヴァージョンアップさせていきます。 　　　　　　　　　　　 日の出るころに起きてそれぞれに創作の準備。 集団での創作時間は朝の9時から17時まで10時間。 時間外にもお互い個人的に打ち合わせをします。　 　　　　　　　　　　　 こんなことを日ごとに続けていても 過労で寝込む人が出てこないのは日ごろから 皆で楽しんでいる昔ながらの心身術のおかげ。 　　　　　　　　　　　　 あちこちから頂いた体によい山幸のおかげです。 地元の方たちの暖かい応援おもてなしのおかげです。 素晴らしい源泉かけながし天然温泉のおかげです。 　　　　　　　　 地元の方たちは朝ごと昼ごとに 野菜やお料理を差し入れてくれます。 熊鍋の宴を催してくれたこともあります。 　　　　　　　　 西和賀町の素晴らしい景色のなか 世界と日本の多くの方たちに支えられて 嵐みたいな創作が順調に進んでいます。 　　　　　　　　 世界と日本のあちこちでこの 奇跡の創作を見守ってくださっている方がた、 本当にありがとうございます。 　　　　　　　 どんな国のどんな世代の方にも いきいき・しみじみ楽しんで頂けるような 素晴らしい舞台が生まれつつあります。 　　　　　　　　 もうすぐ東京へ出発して劇場で支度に入ります。 どうかお誘いあわせてお楽しみに この稀有な出来事を体験しにいらしてくだい。

ただいま山里の素晴らしい景色のなかで 地元の方たちからお家と公民館を提供してもらって 9ヵ国のメンバーによる嵐みたいな創作を進めています。 　　　　　　　　　 朝から晩まで創作現場の公民館で過ごして 晩から朝はふたつの民家にわかれ メンバーみんな一緒に相部屋の暮らしです。 　　　　　　　　　 結婚してすぐ日本へやってきた出演者カップルは お借りした敷地にテントを張って 夜だけそこに泊まったりしています。 　　　　　　　　　 創作のなかだけでなく、お家に帰ってからも、 みんな笑いあったり 抱き合って泣いたり 時には真面目に ぶつかりあうこともあります。          　　　 こんなに氣心の通じる大家族みたいな暮らし みんなで美味しく幸を分かち合う暮らしは 人生でこのたび初めてというメンバーばかりです。 　　　　　　　 この創作合宿で日ごとにどんなことが起きているか 忘れがたいことを書きとめ始めたらたちまち 一冊くらいの本ができてしまいそうな感じです。 　　　　　　　 文字どおり全員で寝食を惜しんで 日ごとに朝から晩まで創作を続けている今 そうした記録をとっておくことはできません。 　　　　　　　　 合宿中にメンバーたちが体験した珠玉の出来事は 出来事にまつわる それぞれの想いともども 劇場での舞台のなかに盛り込まれていくことでしょう。 　　　　　　　 空前絶後の国際的な座組から生まれてきた出来事。 創作の日々そのものが奇跡のようだった舞台現象。 どうかお楽しみに、劇場で直に体験してみてください。