展覧会キュレーターの小倉ヒラクです。
渋谷ヒカリエ ”Fermentation Tourism Nippon” 開催まであと3日となりました。そして同時にこのクラウドファンディングも終了まであと3日!と大詰めなのでここでなぜこのプロジェクトをやっているのか改めてお伝えします。
▶海外で感じた発酵の熱
↑ハンガリーでの味噌づくりワークショップ↑
僕ここ数年、海外の活動が増えてきています。
ハンガリーでの国際プロバイオティクス学会への招待をきっかけに、海外でワークショップや講演をしたり、共同研究をする機会が増えていきました。
他にも中国や台湾、オーストラリア等からも「日本の発酵について教えてほしいんだけど」というオファーを受け取りました。
要はだな。今海外で日本の発酵文化への関心が高まっているんです。
理由はこれ!とは確実には言えないんだけど、和食ブームが一巡して海外の食の専門家たちが「よりディープな食文化を知りたい…!」となった時に、どうもその核には発酵という存在があるらしいぞ、ということになっている感じなんですね。
▶プレゼンしたら、反応がスゴいことに
写真は六本木ヒルズアカデミーでの国際フォーラム"Innovative City Forum 2018"。タイのドゥアンチャイ・ロータナワニットさんとの楽しいセッションでした。記事はこちら
日本に住む人にはおなじみの麹を使った醸造文化。これ例えばヨーロッパ行くと全然なじみのないもの。甘みや酸味が融合した不思議な味わいや特徴的な旨味、そして脂や動物性タンパクを使わずにリッチさを作り出す発酵調味料の技法。僕たちにとっての「当たり前」が海外に行くとミステリアスに見える。
「ヒラク君なんでなんで?教えて〜!!」
というリクエストに、僕の著書『発酵文化人類学』の内容をリミックスして、単なる料理法だけではなくて生物学や歴史、文化的背景から紐解いて話をするとビックリするぐらい大盛況。
色んな土地で色んな国の人とコミュニケーションしてみて、
「日本の発酵文化って、スゴい可能性が眠っているのかもしれない…」
という実感があったんですね。
▶展覧会を海外の人に見てほしい!
さてそんなタイミングで準備が始まった渋谷ヒカリエの展覧会"Fermentation Tourism Nippon"展。構想段階の時点で海外の友人たちに「こんなことやるんだけど…」と話したら「ええ〜それは海外の人も見られるようにしなよ!」という反応。
実際英語でプレスリリースを出したら、その友人たちがSNSで展覧会のことをお知らせしてくれました。
今回の展覧会は、日本酒や醤油など海外でも知られているものだけではなく、日本にいる人の大半が知らないようなローカル発酵文化をたくさん取り扱います。これは実は海外の人たちの「よりディープに日本の食文化を知りたい!」というニーズに合致しているのではないか…?
よし。これはもう日英バイリンガルにして、海外の人にも見てもらうしかない…!
と決意し、腕利きの翻訳ディレクターの柳澤円さんにお願いして翻訳プロジェクトがスタート。詳しくはこのクラウドファンディングページの詳細を見てもらいたいのですが、膨大な展覧会の情報を日英併記に。さらに日英バイリンガルのカタログも制作します。
これはつまり、日本の発酵文化を体系化し、さらにそれを海外の人向けにもアーカイブする、というチャレンジなのです。
▶翻訳してみて気づいた課題あれこれ
そして47都道府県の発酵文化の概説と作り方をひたすら翻訳しまくる作業をはじめてみると、出てくる出てくる色んな課題が!
翻訳チームの円さん
「醤油は Shoyu にしますか、Soy sauce にしますか? 」
「漬物は Zuke に統一しますか?それとも Pickles にしますか?」
「麹菌は Koji-moldでいいですか?海外の愛好家は Koji-Kin って呼んでますけど?」
などなど、文明開化で海外の文化が入ってきた時に日本人が直面したような「さてこれどうしたもんか?」的な正解のない問いが山のように。
展覧会直前にしてようやく翻訳の目処がついたのですが、これはもしかしたら「日本の発酵を英語化する」という意味で、一つの記念すべきマイルストーンになるのではないかしら。円さん、ありがとう〜
▶意義を感じた人は、どうぞご支援を!
ということで。当初プランに入っていなかった翻訳作業をやり遂げるために「展覧会を海外発信する」というクラウドファンディングを立ち上げたのでした。
このプロジェクトへの支援金は、翻訳作業とバイリンガルのカタログの制作に使われます。達成したらトントン。達成しなかったら自腹!意義を感じた方はどうぞご支援くださいませ〜。
そしてちょっと予告。
今年の6月には、パリ〜東欧〜スペインを巡る僕の著書『発酵文化人類学』の講演会ツアーが始まります。その時に、このプロジェクトでできたカタログと展示資料を持ってヨーロッパまわってきまーす(ちなみに今年は僕の本の中国語版も出る予定なので、アジアにも行ってきまーす)。
海外に…日本の発酵文化に深入りしたい人、たくさんいるよ…!