なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか(山下柚実 光文社)
こういう、読んだ後にジーン熱くなるタイプのビジネス書が好きです。
この本。
めちゃめちゃ問いに詰まってるよ、って。
熱いっす。
って何度も思った。
「価値とは何か?」と問いたいすべての人に贈りたい1冊です。僕がこの本を手に取ったのは、「近大マグロ」誕生までのプロジェクトXのVTRを見たからです。
近大の教育方針。(公式webより)
本学は、未来志向の「実学教育と人格の陶冶」を建学の精神とし、「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人の育成」を教育理念として掲げてきました。この「建学の精神」と「教育理念」は、知識基盤社会へ転換しようとする21世紀の日本において、いっそう必要とされる理念であると自負します。本学が、総合大学として各学部の特色を生かしながら、共に手を携えて目指そうとしているのは、「実学教育」と「人格の陶冶」の融合です。真の「実学」とは、必ずしも直接的な有用性を志向するだけではなく、その事柄の意味を学び取ることを含みます。現実に立脚しつつも、歴史的展望をもち、地に足をつけて、しなやかな批判精神やチャレンジ精神を発揮できる、創造性豊かな人格の陶冶を志向するものです。「自主独往の気概に満ち」、生涯にわたって自己の向上に励み、社会を支える高い志をもつことが「人に愛され、信頼され、尊敬される」ことにつながります。このような学生を社会に送り出すことが、これからの時代に、本学が目指す社会的使命であります。
「実学」ってそういうことだったんだ。
「松下村塾」で吉田松陰先生が伝えたかった
「実学」もまさにこのことだろうと思った。
その次に出てくるのは、女子トイレの数やパウダールームの設置、オープンキャンパスでの在校生の対応など
「お客は誰か?」
近大らしさ、それは、受験生を「お客さま」と位置づけて、「相手の立場を優先する」こと。最高学府に「入れてあげる」という目線からではなく、「よくいらっしゃいました」と心から歓迎すること。
であると山下さんは言う。
何よりもそれを象徴するのが入学式の現場だと。
~~~ここから引用
「入学式は、新入生たちに全力で大学生活に取り組む決意をしてもらう、最大のチャンスなんです。その大切な瞬間を、私たちの思いを真心込めて伝えていく大切な時間にしたいんです。」
「不本意新入生」と大学がどう向き合うのかは、入学してくる学生に意欲や勇気を持ってもらう教育問題であると同時に、大学の経営問題でもあるのだ。
入学式という一瞬の時間によって、「不本意新入生」の意識をいかに転換し、近大に入学して良かったと思える大学生に変えていくことができるのか。
「よくぞ近大に入学してくれました」という感謝の思いを伝えることができれば、新入生は新たなるモチベーションを獲得し、大学はその結果として安定した授業料収入を確保できる。
「一人の天才より百人の中堅という分厚い中間層を育てていくことが、実学教育を掲げる私たちの重要な役割なのです。」
~~~ここまで引用
「不本意新入生」
偏差値という序列の中で、少なくない高校生が、
「不本意入学」を強いられる。
つまり、第一志望ではない大学への進学だ。
そんな新入生をどう迎えるか。
その1点から近大は入学式をド派手に行っている。
そしてラストに出てくる「三つの目標」。
これ、書いちゃうとネタバレになってしまうのだけど。
プロジェクトX風に書くと、こんな感じ。
2012年12月、近大を離れることになった世耕弘成は、
全職員を一堂に集め、近大が未来に輝く近代であるための
「三つの目標」を掲げた。
1 10年以内に「関関同立」に追いつき、追い越す
2 偏差値や大学のランクで測れない、次元の違う独自性を持った大学になる
3 世の中の役に立つ大学になる
これが、職員一同に浸透しているのだという。
すごい。
とただ、思った。
みんなが乗る船の行き先を知っている、ということ。
それって、伝わってるよって思った。
6年連続志願者数日本一(併願率とかはおいといて)のヒミツ。
それを単に「広報うまくやってるからなあ、近大は」と思っていた自分が恥ずかしくなった。
そんなことじゃない。
18歳はそんなことに騙されない。
近大が送り出すオープンキャンパスなどのひとつひとつのコンテンツや広報一つ一つに、「お客は誰か?」という問いと仮説を感じるのだろうと思う。
そして何より、職員ひとりひとり、学生ひとりひとりが、「近大」という船の行き先を知り、そこへ到達するために自らはどんな貢献ができるのか?を考え、その一手を打っているのだろうと思った。
参りました、近大。
さわやかな風をありがとう。
さて、あなたが乗っている船の行き先はどこですか?