僕は文章を書くときは必ずiPhoneのメモ帳を使う。
せっかく良いPCがあるのにスタバでカタカタなんてことはあまりしない。
電車に乗ればみんながみんなスマホを弄っているのかと思えば、
ふと降りた駅のホームでは老人がゲラゲラと笑っていたりする。
「避難者は自己責任で」なんて言ってしまう復興担当大臣がいる。
でも別に政治的な感想はない。
正直なところ、
原発から半径**km立入禁止なんて漫画の世界みたいで
面白おかしくて笑ってしまう。
あれから6年が経って手当が打ち切られるとかなんとか。
まああまり自分とは関係のない話なのだけれども。
*
夢の中で、そんな立入禁止区域のような、誰もいない広大な草っ原の上で僕は寝転がっている。綺麗な星空を前に、プラネタリウムにいるような感覚にさせられる。手を伸ばせば星の一つや掴めそうだったあの頃とはもう違う。
逆にプラネタリウムに行くと、世界は、星々は、宇宙は、綺麗なものなのだと教えられる。「壁が光ってるだけじゃん」とか心の中で思ってしまう。世界や宇宙と僕の距離感が大体わかってくる、わかってきたような感覚になる。
夢から醒めて、顔を上げると夢で見た星空と同じように、目の前にスカイツリーが聳え立っている。
タイペイに行くと、まず台北101が目につく。
僕は"台北101が目につく"タイペイしか知らない。
きっと、僕の友達もそう。
台北101の展望台に登ると市内、或いは山に囲まれた台北の盆地が一望できる。スカイツリーに登ると、限りなく広い平野が一望できる。海も見える。
景色を、土地を俯瞰しながら、この景色は多分変わらないだろう、なんて思ってみたりする。
でも実際、台北101よりブルジュハリファの方が高くなってしまったし、スカイツリーから東京タワーをわざわざ眺めなくても良い。
*
ふと顔を上げると、桜が咲いている。
老人が酒を飲みながらゲラゲラと笑っている平日の昼間に、僕は草っ原で寝転がりながらこんな散文を書いている。
何かを伝えようとしているわけではない。誰にも伝わらないけど、呼吸をすることと同じようにただカタカタとiPhoneのメモ帳に文字を打っている、だけである。
監督 増田 捺冶
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