「お帰りなさい 首を長~くして待ってたよ」
福島市から南相馬市へ続く国道399号線、飯舘村に入ると〝脱力系〟フレーズの看板が出迎える。
看板に設置された線量計は0.27μSv/h、事故前の10倍の値を示す。
「82歳の両親だけを帰らせることはできない」と福島市の借上げ住宅から1 家4人で帰村した浦住正喜さん(55)。
20代の娘と息子は村には帰らない。
「米作りの再開なんてとんでもない!、世界に汚染が知られた村の米を誰が欲しがりますか」
事故前でも年金がなければ農業で生計を立てるのは苦しかった。
「(1年後の)損害賠償の打ち切りで、被害者は貧困層になり、生活保護ですよ」
避難生活を続けたくても、金銭面の問題で村に戻らざるを得ない人が出る。
村に戻り営農を再開しても、作物は売れずに収入は途絶える。
被害者たちが、加害者である国に養ってもらうことになりかねない。
映画「サマショール」の中でも、村の草刈りをする男性が
「収入なくては町では生活できない。
賠償が打ち切られれば村に戻るしかない」
と生活の不安を口にする。
「山に戻ってイノシシの顔でも見えるしかねえな」
男性は苦笑いして草刈機のエンジンをかけた。
野田雅也(共同監督)