決起酒会が終わってから日を追うごとにコロナウイルスは猛威をふるい、緊急事態宣言が発令され、世の中に漂う自粛ムード。
五十嵐はレストラン土とシェフの営業を停止し、土屋は企画していたイベントを全て中止し、油井は取引先のレストラン営業自粛に伴い、野菜の出荷先が無くなってしまった。それでも、自分たちがやるべきことは変わらないと信じ、どうしたら町に貢献できるか、ZOOMを使って議論を重ね続けた。
お互いが苦しい時であるにも関わらず、アイディアと笑いは尽きなかった。
話し合いの末、『1人でも多くの人に美味しいものを届けるためのBIO惣菜』『無人でBIO野菜や商品を販売するための土屋商店拡張』『生産者にスポットライトを当てるためのキッチンカー』の3つを実現しようということになった。
そうは言っても、全て実現するのには、時間とお金がかかってしまう。そのため、一番スピーディーに実現できるものとして、お惣菜作りからスタートすることに決めた。
では、そのお惣菜をどこで作るか、場所の確保がまだできていなかった。
「コロナ禍の影響も考えて、衛生面に細心の注意を払いたいですし、清掃が徹底できる場所ってありますかね?shuさんのキッチンを毎日お借りする訳にもいきませんし...」と五十嵐。
「あっ、そうだ、もしかしたら和田の加工場が使えるかもしれない。大木さんに聞いてみよう。」と土屋。
そして翌日、五十嵐は大木さんに和田の加工場を使わせて頂くことはできないかを相談すると、「五十嵐なら良いんじゃねぇか?俺が商工会に話しておいてやるよ」と言って、藤野商工会に話を通してくださり、五十嵐も直接お願いしに行く運びとなった。商工会で五十嵐は、自分の地域への思いを語った。大木さんからのご支援もあって、スムーズに和田の加工場をお借りすることが決まった。毎日欠かすことなく商品を作ることが必須で、商売として利益を多く取れる訳でもないお惣菜を選んだのには、五十嵐ならではのこだわりと中長期的なビジョンからだった。この件についてはまた別の機会で触れることにする。
加工場が決まったところで、次に売り先をどうするかということについて話し合いを進め、藤野の台所『スーパーまつば』に、お惣菜を卸させていただくのはどうかという話が挙がってきた。「まつばさんに、相談に行ってみます。」と五十嵐。
後日、五十嵐は、試作品のお惣菜を片手にまつばに向かった。
「はじめまして。土とシェフの五十嵐創です。元々、世田谷の広味坊という中華料理のお店で20年以上シェフとしてやってきました。2年前、藤野に移住してきまして、農家兼料理人をやっているんですが、そんな自分だからこそ、今、町のためにできることの一つとして、お惣菜を作って1人でも多くの人に食べて頂きたいと考えているんです。
土屋さんが管理されてるビオコーナーとは別に、お惣菜を置くための新たなスペースをいただくことはできないでしょうか?
スペースを僕のために空けていただくということは、お店にとってリスクがあることは重々承知しております。ですので、商工会から和田の加工場をお借りし、毎日欠かさずに納品させて頂くような体制も整えてます。もし、毎日納品させていただくことも含めて可能でしたら、よろしくお願いします。」
それを聞いて、店長の森久保さんは言った
「お店のリスクとか、そう言ったことを理解してくれてるんだね。五十嵐さんの想いは理解できた。とりあえず、試しにやってごらん」と。スーパーはスケールメリット商売であり、スペースを空ける事はリスキーである。それも関わらず、店長は快諾してくださったのだ。嬉しいお知らせは、僕たちのもとにもすぐに届いた。「まつばさんからOKもらえた!」
全ての段取りがついたところで、和田の加工場に足りなかった資材や機材を先行投資で数十万の借金をして取り揃えた。今回のクラウドファンディングで集まったお金の一部で補填させていただく費用だ。徹底して清掃も進めた。GWに差し掛かろうとする4月末、バラバラだった歯車が少しずつ噛み合い始め、いよいよ構想していたプロジェクトが始動し始めた。
【メディア掲載情報】
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農業で東京のレストランの生ゴミをゼロに!?
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