おかげさまで、岡山大学大学院教育学研究科に、修士論文「日本の公立ハンセン病療養所の園歌―抑圧と解放のはざまで生まれた音楽―」を提出することができました。感謝の気持ちでいっぱいです。たくさんのお祈りと応援をありがとうございます。
コロナ禍で、フィールド調査をはじめ、じゅうぶんにできなかった部分もありますが、コロナ禍においてこそ深められた思索もある気がしています。いちばん学んだことは、「知の海」の無限の広さと深さ、そして尊さです。漕ぎ出した小舟は、どこまで行けるでしょうか。ひとつの旅が終わり、もはや次なる旅が始まろうとしています。終わりゆくハンセン病療養所に生きた人たちの「声」をのこし、伝えるべく、歌手活動をしながら、これからも研究をつづけていきたいと願っています。
論文書きの合間に、大島青松園の東條高さんのレコーディングが叶いました。2月上旬に、小さなアルバム〈この道〉が完成します。出会いは1971年。東條さんは40歳、私は0歳でした。2003年には、賛美歌アルバム〈生かされて〉をごいっしょにつくりました。今回も私が全編ピアノとコーラスをつとめています。90歳と49歳のハーモニーです。東條さんの美しい、力強いうた声に耳を傾けながら、うたうこと、生きることの意味を改めて思いめぐらす機会となりました。私自身、何度もくり返し聞きたくなる作品になりました。コモエスタ通販で取り扱う予定です。よろしければ、買い求めください。5曲入り1,000円(税別)です。コモエスタの公式サイト
もうひとつ報告があります。長島愛生園の機関誌『愛生』開園90周年記念号に「長島愛生園の歌」を寄稿しました。園歌をはじめ、挽歌、青年団の歌、歓迎の歌、長島音頭、開拓の歌などの楽譜も改訂しました。これまでの楽譜を検証し、あきらかな誤記を改め、表記を統一し、実際に入所者の方にうたってもらった歌唱をもとに、できるだけ再現可能な楽譜にしました。たしかに存在するという記録がありながら、楽譜も歌詞もなかった《愛生園少年団歌》は、戦後まもなく少年時代に入所した中尾伸治さん、石田雅男さんの歌唱を採譜し、初めて楽譜化しました。これも研究の延長上にできたことで、光栄に思います。『愛生』については、長島愛生園にお問い合わせください。電話0869-25-0321
クラウドファンディングで支援してくださったみなさんには、春になりましたら、リターンをお送りします。お待ちください。2月9日にオンラインで修士論文発表会があります。もうひとがんばりです。
先が見えない状況がつづき、不安もありますが、希望を失わずに、一日一日をていねいに過ごしていきたいです。どうかお元気でおすごしください!
2021年1月21日 沢知恵