2014/04/22 01:45
水を美しく撮りたいので観始めた"水の魔術師"タルコフスキーの三作目。初見。モノクロ(一部カラー)。戦争映画の次は、壮大な歴史劇だった。
実在した画家の一代記。オープニングから、川と雨で始まり、ラストも雨の川と馬だった。川の流れは、葦の揺れで表現し、雨の降らし方は美しい。
内容は、"芸術家の使命"がテーマだと思われる。後半の鐘作りの指揮を取る若者に自分を投影していた。まだ若く自信もないのに、はったりでスタッフを怒鳴りつけ鐘を完成させると、地べたに倒れ込んでしまう。そして、鳴り響く鐘の音は、庶民の心に平安をもたらす。
新作を撮る前に、「七人の侍」と「雨月物語」を必ず観るというだけあって、タタール人の襲撃のシーンは、「七人の侍」の夜盗の村襲撃のシーンを彷彿とさせる。
イメージフォーラム1987・3月増刊 No.80 追悼・増補版「タルコフスキー、好きッ!」に、タルコフスキーのこんな文章を見つけました。
水— この地上でもっとも美しいもの「たしかに私の映画のなかには、たくさんの水が出て来ます。水や河や小川が、私に非常に多くのことを語りかけてくるのです。私はこういう水がたいへん好きです。(中略) ロシアでは、イタリアよりもはるかに多く、大量の水を見ることができます。私は水が物として好きなのです。なによりも水は、謎めいた物質です。御存知のように、水はH2Oという単純な分子ひとつで構成されています。しかしこのことでさえたいして重要ではありません。問題は水がとてもダイナミックだしいうことです。水は動きを、深さを、変化や色彩を、反映を伝えます。これは地上でもっとも美しいもののひとつです。水よりも美しいものは、存在しません。水のなかにその姿を映しだすことのなかった現象は、自然のなかにはひとつとして存在しません・・・おそらく、水を示すためにひとつの側面だけを取り出すことは、正しくないでしょう。私には水のない映画など、考えることができません。」
本当に水が好きなようだ。ロシアの大自然で育ったから、自然の中で人間を描くという視点を失わないのだろう。